現場の言葉の壁を崩す!多国籍スタッフとの円滑な「やさしい日本語」コミュニケーション術

現場の言葉の壁を崩す!多国籍スタッフとの円滑な「やさしい日本語」コミュニケーション術 介護/医療x外国人材
介護/医療x外国人材 やさしい日本語
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介護現場の多国籍化と「言葉の壁」がもたらす深刻な課題

介護人材不足を支える外国人材雇用と増加する多国籍チーム

日本の介護現場は、高齢化の加速と生産年齢人口の減少により、深刻な人材不足という構造的な課題に直面しています。この課題への現実的な対策として、外国人材の雇用は必須戦略となっており、全国の介護施設の44.9%が既に外国人介護人材を受け入れています。さらに、受け入れ施設の57.4%が今後も受け入れを増やしたいと考えていることから、外国人材への期待の高さがうかがえます。

外国人介護人材の活用は、20~30代の若い労働力を確保し、日本人応募者が集まりにくい地方施設での採用を可能にするなど、多くのメリットがあります。特に「特定技能」制度は最も活用されており、受け入れ施設の64.8%が利用しています。

多国籍化が進む現場では、インドネシア、フィリピン、ベトナム、ミャンマーなど、多様な国籍のスタッフが活躍しており、その存在なしには現場が成立しなくなっている施設も存在します。

コミュニケーション不足が引き起こす安全・定着・生産性のリスク

外国人介護人材の増加に伴い、受け入れ施設側からはコミュニケーション不足文化の違いによる課題が指摘されています。

「言葉の壁」は、単なる意思疎通の遅延に留まらず、介護サービスの安全・質、そして外国人材の定着に関わる重大なリスクとなります。

  1. 業務上のミス・安全性の低下: 日本語能力不足は、業務上のミスや誤解につながりやすく、利用者や職員の安全、信頼性に関わる重大リスクとなります。特に医療の専門用語や方言、日本語特有のニュアンスを理解することは難しく、患者の状態を正確に把握するための細やかなコミュニケーションが求められる介護現場では、これが大きな壁となります。
  2. 指導・教育の非効率化: 夜勤から日勤への申し送り事項など、重要な情報を日本人同士のスピード感で話すと、外国人材は内容についていけないことが指摘されています。指導・教育担当の日本人職員の負担が大きいことも、受け入れに対する懸念事項の一つです。
  3. 職員間のトラブルと離職リスク: 多国籍チームにおけるトラブルは、職員等社内トラブルが30.3%と最も高い割合を占めており、コミュニケーションの壁が人間関係のストレスを生み出す一因となっています。外国人介護職員の離職理由として「人間関係」が多く報告されており、日本語満足度の低さや、文化的配慮の欠如が低い職務満足度と離職意向につながる要因であるとされています。

外国人材の採用を検討していない施設にとっても、言語の壁や文化・宗教の違い、受け入れ体制不足は大きな懸念となっています。この「言葉の壁」を崩すため、現場の日本人職員が意識的に平易な日本語を使う「やさしい日本語」によるコミュニケーション術を習得することが、成功の鍵となります。

「やさしい日本語」活用の基本戦略とツール

現場で求められる日本語レベルと育成の必要性

外国人介護人材の雇用を成功させ、定着・キャリアアップを支援するためには、日本語能力の継続的な向上が不可欠です。

特定技能「介護」を取得するためには、日本語能力試験N4相当以上介護日本語評価試験の合格が求められます。しかし、現場で円滑なコミュニケーションを図るためには、これ以上のレベルが期待されています。実際、受け入れ施設の74.6%が日本語能力N3以上の水準を希望しています。

また、将来的に在留資格「介護」(永続的な雇用が可能)へ移行し、主任やリーダーといった組織の中核人材となるためには、日本人と同様に介護福祉士国家試験に合格する必要があり、N2相当の日本語能力が望ましいとされています。国家試験合格には、専門用語の理解や漢字の読み書きなど、日常会話レベルを超える言語的・文化的な壁を乗り越える必要があるため、施設による学習支援が必須です。

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厚生労働省推奨の学習支援コンテンツと多言語教材

施設が外国人介護人材の日本語学習を支援するにあたって、国や公的機関が提供する無料の学習支援ツールを活用することで、コストと指導者の負担を軽減できます。

  1. 日本語自律学習支援WEBコンテンツ「にほんごをまなぼう」: これは、日本語を学び日本の介護現場で働く外国人の方が自律的に学習に取り組むためのWEBコンテンツです。日本語能力試験のN3程度合格特定技能評価試験対策を目的としており、日本語学習や日本の介護に関心のある方であれば誰でも無料で利用できます。
  2. 多言語対応の専門用語集・試験対策教材: 厚生労働省は、介護分野で働く外国人の方が介護現場で使う専門用語を学ぶための教材や、介護福祉士国家試験の合格を目指す方向けの「一問一答」教材を多言語(英語、インドネシア語、ベトナム語、中国語、タガログ語など)で提供しています。
  3. 特定技能評価試験学習用テキスト: 介護分野の在留資格「特定技能」の「介護技能評価試験」「介護日本語評価試験」の合格を目指すための学習用テキストも、多言語で提供されています。

これらの教材を活用し、日本人スタッフによる勉強会を定期的に開催するなど、専門用語の理解や試験対策をサポートする体制を整えることが、現場の言葉の壁を崩すための基礎となります。

円滑なコミュニケーションを実現するための具体的な技術

現場指導(OJT)における「やさしい日本語」の工夫

言葉の壁を崩すためには、外国人材が頑張って日本語を学ぶだけでなく、受け入れ側である日本人スタッフが配慮し、コミュニケーション方法を変える必要があります。この技術こそが「やさしい日本語」の核心です。

  1. 日本人スタッフの意識改革: 日本人スタッフは「ゆっくり、簡単な日本語でコミュニケーションを取る」などの配慮を心がける必要があります。病院での事例では、高価な翻訳機器を導入しても、結局スタッフ同士で大事なことはゆっくり、簡単な日本語でコミュニケーションを取るようにしたという報告があります。
  2. OJTでの手順と言葉の明確化: 特定技能の訪問介護サービスへの従事が解禁された際(2025年4月より)、特にコミュニケーションに関する要件が設けられました。OJT(オンザジョブトレーニング)においては、外国人介護人材が訪問系サービスの提供を一人で適切に行うことができるように、サービス提供責任者等が同行するなど必要な訓練を行うことが求められています。
  3. チェックシートとフィードバックの活用: OJTでは、サービス内容の手順理解、緊急体制・連携、記録・報告ができているか、そして利用者とコミュニケーションがとれているかなど、達成状況を把握するための目標を設定し、チェックシートを活用することが有効です。これにより、曖昧な指導を避け、具体的で公平な評価とフィードバックが可能となります。
  4. 多言語・視覚ツールの導入: 業務マニュアルを作成する際には、平易な日本語を意識し、図や写真を多用することが、言葉の壁を乗り越える上で重要です。

利用者・家族への配慮とICTを活用した連携

介護サービスでは、利用者やその家族との信頼醸成が不可欠です。外国人材の雇用を円滑に進めるためには、利用者や家族への事前の説明と、緊急時の対応を可能にする体制整備が求められます。

  1. 利用者・家族への丁寧な説明: 外国人介護人材が訪問サービスに従事する場合、利用者やその家族に対し、事前に丁寧な説明を行い、書面を交付して署名を求めることが義務付けられています。この際、外国人介護人材の実務経験や、ICT機器を使用しながら業務を行う場合があることなども説明する必要があります。
  2. ICT活用による不測の事態への備え: 緊急時の対応を適切に行えるようにする観点から、ICTの活用が望ましいとされています。具体的には、緊急時の連絡先や対応フローなどをまとめたマニュアルの作成、そしてサービス提供記録や申し送りについて職員全員で情報共有する仕組みの整備に、コミュニケーションアプリの導入などのICT活用が考えられます。ICTツールの活用は、外国人介護人材及び受入事業者の両者にとってメリットがあり、業務負担の軽減にもつながります。

組織内のトラブル防止と異文化理解促進

言葉の壁が引き起こすコミュニケーション不足は、外国人材の離職理由となる「人間関係のストレス」に直結します。定着率を向上させるためには、組織全体で異文化理解を進めることが不可欠です。

  1. ハラスメント対策と相談窓口の設置: ハラスメント(利用者やその家族からのものを含む)を未然に防止するための対応マニュアルの作成・共有や、ハラスメントが発生した場合の対処方法などのルールの作成・共有が必要です。また、外国人介護人材が安心して相談できる窓口の設置やその周知を行うことも求められます。
  2. 異文化理解研修の実施: 日本人スタッフへの異文化理解の研修を実施し、多様性の価値を共有することで、外国人材の昇進などに対する日本人スタッフの理解を促進します。
  3. 文化・信仰の尊重: 外国人材に定着してもらうためには、相手の国の文化や信仰を尊重し、「働きやすい」環境を作ることが大切です。例えば、1日に何度かお祈りをすることが定められている宗教の外国人を採用する場合、該当する時間帯には持ち場を離れることができるよう、みんなで協力している事例があります。

まとめ:言葉の壁を越えた「共生」が導く介護現場の未来

多国籍スタッフとの円滑なコミュニケーションは、単に業務を回すためのテクニックではなく、外国人材の定着、ひいては介護事業の持続可能性を左右する戦略的な課題です。

「やさしい日本語」によるコミュニケーション術は、言葉の壁を低くし、外国人材が持つ高いスキルや勤勉性を現場で最大限に発揮してもらうための土台となります。施設は、74.6%が希望するN3以上の日本語能力達成に向けた継続的な学習支援を行い、日本人職員は簡潔な言葉遣いと明確なOJTを心がけるべきです。さらに、多言語教材や「にほんごをまなぼう」といった無料の公的支援ツールを最大限活用することが、指導負担の軽減につながります。

外国人介護人材の雇用を成功させる鍵は、日本人職員がコミュニケーションをスムーズに行うテクニックを身に着けること、そして、文化的な違いを考慮した公平な評価と育成体制を構築することにあります。言葉の壁を崩し、多様性を受け入れる組織文化を醸成することで、現場の士気は向上し、外国人材は将来のリーダー候補として活躍することが期待されるでしょう。

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