人手不足を解消するだけじゃない!外国人スタッフがもたらす職場活性化と国際交流のメリット

人手不足を解消するだけじゃない!外国人スタッフがもたらす職場活性化と国際交流のメリット 介護/医療x外国人材
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構造的危機に直面する外国人材 介護 採用の現状

慢性的な人手不足と外国人材への期待度

日本の介護業界は、急速な高齢化と労働力人口の減少に直面しており、多くの事業所が深刻な人手不足に陥っています。この逼迫した状況を緩和する即戦力として、外国人材採用は不可欠な戦略となっています。

全国7,726の介護施設を対象とした調査では、44.9%(824施設)がすでに外国人介護人材を受け入れていることが明らかになっています。さらに、受け入れている施設のうち、57.4%の施設が「今後も受け入れを増やしたい」と考えており、外国人材への期待の高さが明確に示されています。

在留資格別に見ると、特定技能制度は、人材不足解消のための「就労」を目的とする制度であり、受け入れ施設による利用率が64.8%と最も高くなっています。そして、今後の外国人介護人材の方針として、「増やしたい」「やや増やしたい」と回答した施設のうち、74.0%が特定技能を希望しており、外国人材が介護業界の人手不足解消に効果があるという認識が強く示されています。

外国人労働者の増加と介護現場の多国籍化

日本の人口構造の変化と企業の人手不足を背景に、日本で働く外国人労働者数は増加の一途を辿り、2023年10月末時点で約205万人と過去最高を更新しました。特に介護分野での特定技能外国人在留者数は近年、増加傾向にあります。

介護分野で働く外国人材は令和4年時点で約5.5万人に上ります。現場の多国籍化は急速に進んでおり、病院や老健施設を運営する平川病院の事例では、中国、ベトナム、インドネシア、ミャンマーなど、40名近い外国人材が多岐にわたる国籍で活躍しています。研精会においても、450名の介護職員のうち100名超(20%以上)が外国人スタッフであり、現場は彼らなしでは成立しない状況にあるとされています。

特定技能への制度シフトと即戦力採用の加速

かつて外国人材の受け入れに広く利用されていた技能実習制度は、「国際貢献」を建前としながら、実態として日本の人手不足を補う役割を担っていましたが、人権侵害リスクなどの深刻な課題が指摘されていました。技能実習を「減らしたい」「やや減らしたい」と回答した施設が41.7%に上っているという調査結果も、その制度的な課題を反映していると考えられます。

この反省と実態の乖離を是正するため、2019年には外国人労働者を雇用契約に基づく労働者として受け入れる仕組みである特定技能制度が創設されました。特定技能は即戦力となる外国人の受け入れを目的とし、平川病院でも、採用方針を特定技能へほぼ一本化しつつあります。

また、特定技能は介護現場のニーズに合致しており、身体介護やこれに付随する支援業務(レクリエーションの実施、機能訓練の補助等)など、幅広い業務に従事でき、単独での夜勤や服薬介助も可能であるため、即戦力として期待されています。さらに、2025年4月からは特定技能外国人による訪問介護サービスへの従事も解禁となる見込みであり、活用の幅はさらに拡大します。

人手不足解消を超えた職場活性化と国際交流の具体的なメリット

日本人職員に「いい影響が出ている」という現場の声

外国人材の採用は、単なる人手不足の解消という量的なメリットに留まらず、職場環境に質的なメリットをもたらします。

特定技能人材の受け入れを「増やしたい」理由として、「介護人材が不足している」(81.7%)、「将来に備えて採用する」(58.9%)といった人材確保の理由に続いて、「日本人職員にいい影響が出ているため」が12.6%の施設で挙げられています。これは、外国人材が組織にもたらす目に見えないメリットが現場で認識されていることを示しています。

具体的な例として、介護施設での勤務経験を持つ外国人材は接遇面で非常に優れていると評価されており、平川病院の職員は、彼らの言葉遣いの面などで「当院の職員が見習うべき点も多々あり、良い刺激となっている」と述べています。多国籍な人材が加わることで、職場全体に新しい視点と活力がもたらされ、時には日本人職員の働き方を見直すきっかけともなりえます。

国際交流の促進と利用者の満足度向上

外国人材の受け入れは、国際交流の観点からも重要な意義を持ちます。外国人労働者が日本での就労経験を通じて高度な介護スキルを習得し、帰国後に母国で活かすことは、日本による間接的な国際貢献となります。

組織内部においても、異なる文化背景を持つ人々がともに働くことで、相互理解が深まり、日本人スタッフのグローバルな視点が養われるというメリットがあります。

さらに、外国人介護士との異文化交流は、利用者への新たなケアアプローチを生み出す可能性を秘めています。多国籍な料理や文化交流イベントは施設全体の雰囲気を和やかにし、外国人介護士との交流は、利用者の日常生活に新鮮な刺激をもたらし、単調になりがちな施設生活に変化と活力を与えることが期待されます。

多様性(ダイバーシティ)によるチームワークの強化とケアの進化

外国人材がリーダーシップを発揮することで、職場に多様性(ダイバーシティ)を受け入れる組織文化が醸成されます。この「違い」を「強み」として捉える視点は、チーム全体の柔軟性を高める効果をもたらします。

多国籍な人材の加わりは、新しいアイデアや業務改善を期待できる要因となります。例えば、外国人材の文化的背景を活かした独自のケアアプローチが導入されることで、利用者の満足度の向上が期待できます。また、日本人スタッフと外国人スタッフの橋渡し役として、外国人材がコミュニケーション改善に貢献する役割を担うことも可能です。

さらに、外国人材の昇進は、施設の国際化にも貢献し、海外からの視察受け入れや国際交流プログラムの実施など、新たな事業展開の機会を生む可能性もあります。特に今後増加が予想される在日外国人の高齢者に対して、文化的に適切なケアを提供できる体制を構築する上でも、多様性に富んだチームは不可欠です。

成功事例から学ぶキャリアパスと多様性を受け入れる採用戦略

長期定着とキャリアパス実現のための段階的支援

外国人材を単なる「人手」として扱うのではなく、将来のリーダーや管理者として育成することが、持続可能な施設運営の鍵となります。

多くの施設が、外国人介護人材の定着に向けた支援策としてキャリアパスを整備し、49.8%の施設が昇進機会を提供しています。成功している施設では、介護職員初任者研修から始まり、実務者研修、そして介護福祉士国家資格へと、ステップアップできる段階的な資格取得支援システムを構築しています。

外国人材にとって、日本の国家資格合格は極めて困難な挑戦ですが、資格取得後は基本給の向上だけでなく、主任やリーダー職への昇進機会を提供することで、長期的なモチベーションの維持につながります。実際に、介護福祉士資格の取得後に帰国せずに定着してもらうための取り組みとして、57.9%の施設が「日本人同等の待遇(給与面・キャリアパス等)」を重視しています。

外国人材が活躍するための公平な評価基準と登用

介護施設における外国人材のキャリア停滞を招く原因の一つに、「日本人スタッフの補助」や「実務担当者」として固定化された役割分担があります。これを打破するためには、ユニットリーダーへの積極的な登用を検討すべきです。入職3年目程度でリーダー職に就けるような明確なキャリアパスを設定することで、外国人材は目標を持って働くことができます。

評価基準の設定も重要です。日本語能力だけでなく、実際のケアの質、チームワークなど、評価項目を明確にすることが求められます。外国人材向けの評価シートを作成し、文化的な違いを考慮した公平な評価を行うことで、昇進に対する不公平感を取り除き、モチベーションを維持させることが可能です。

コミュニケーション課題を乗り越える採用後の相互理解促進

外国人介護人材に関する悩み事として、最も多いのは日本語の習熟度の低さ(51.1%)であり、次いで文化の違い(宗教・習慣)(39.6%)が挙げられています。これらの課題は、職場内のトラブルの原因となることもあります(受け入れ施設の28.9%で何らかのトラブルが発生しており、職員等社内トラブルが30.3%を占める)。

これらのコミュニケーションや文化の壁を乗り越えるためには、受け入れ側の日本人スタッフによる理解促進が不可欠です。

  1. 異文化理解の研修: 異なる文化背景を持つ外国人材の昇進に対し、日本人スタッフの理解を得るため、研修を実施し、多様性の価値を共有します。
  2. 相互理解を深める機会: 外国人材と日本人スタッフがペアを組んで業務を行う機会を増やし、お互いの強みを認め合う関係性を築くことが、組織全体の成長につながります。
  3. 宗教・習慣への配慮: どんな環境が働きやすいかは国によって異なるため、一人ひとりの声に耳を傾けながらルールを決めていくことが重要です。例えば、1日に何度かお祈りをする必要がある宗教の外国人材のために、該当する時間帯に持ち場を離れることができるよう、みんなで協力している事例もあります。

また、外国人材に日本での生活上のマナーやルール(交通ルール(54.9%)、買い物の仕方(42.7%)、病院等受診方法(42.5%)など)を丁寧に伝え、必要に応じて同行するといった生活支援も、トラブル防止に効果的です。

持続的な共生を実現するための課題解決と未来への展望

定着に直結する住居・生活支援と待遇改善

外国人材の長期定着を実現するためには、仕事環境だけでなく、生活全般にわたる手厚いサポートが不可欠です。外国人介護人材の受け入れ支援策として、施設が最も多く実施しているのは住居支援(84.7%)であり、次いで生活支援・相談(78.0%)が続いています。具体的には、住宅の提供や法人による保証人、職員より優遇した家賃補助などが含まれます。

定着率向上に向けた取り組みとして、57.9%の施設が「日本人と同等の待遇(給与面・キャリアパス等)」を重視しており、53.5%の施設が「日本の環境で生活できるような配慮(住まい等)」を重視しています。外国人介護士には日本人職員と同等以上の給与・福利厚生を提供することが、労働条件に関する不満や離職を防ぐ上で必須の要件となります。

しかし、住居の確保については、地域社会との共生という側面で課題もあります。自由記述の悩み事として、「地域の理解不足(外国人にアパートを貸さないなど)」が挙げられており、自治体と連携した住環境整備や、公営住宅の利用といった施策の必要性も指摘されています。

制度改革とM&Aによる戦略的受け入れ体制の構築

外国人材 介護 採用の未来を見据え、企業は制度の複雑さやコスト、そしてリスクに対処するための戦略を持つ必要があります。

【制度面の要望と緩和】 特定技能の在留期間(最長5年)は長期的な採用・育成を阻む要因となっており、施設からは国や自治体に対し、「特定技能の5年後の帰国義務の緩和・延長」といった制度改革の要望が寄せられています。

一方で、制度緩和は進展しており、2025年4月(特定技能は同年4月中予定)からは訪問介護サービスへの従事が解禁されます。これにより、特定技能外国人の活躍の場が大きく広がりますが、受け入れ事業所には、外国人への研修、責任者等による同行訓練、ハラスメント防止措置、ICTの活用を含む不測の事態への対応環境整備が義務付けられます。

【戦略的な採用手段としてのM&A】 外国人介護人材の受け入れ体制を短期間で構築・強化したい企業にとって、M&Aは有効な手段です。すでに外国人介護士の受け入れ体制や、採用・育成のノウハウを持つ企業と連携することで、スムーズな導入が可能となります。また、人材確保や新技術導入を目的としたM&Aの需要が高まる中、外国人介護士の活用ノウハウを持つ企業は、M&Aの対象として注目を集めると予想されます。

外国人材 介護 採用の未来:IT・国際交流・共生モデルの確立

外国人材採用競争が激化し、円安や日本の給与水準が上がらないことで日本で働く魅力が低下する中、企業は「選ばれる職場づくり」を推進する必要があります。

1. 育成とキャリア支援の強化: 外国人材が日本でのキャリアアップを目指す上で、日本語学習は依然として最大の課題です。厚生労働省は、日本語能力試験N3程度合格や特定技能評価試験対策などを目的としたWEBコンテンツ「にほんごをまなぼう」や、多言語対応の学習用テキスト、専門用語集、介護福祉士国家試験一問一答などの公的教材を提供しており、企業はこれらのリソースを積極的に活用し、資格取得支援を具体化すべきです。

2. ICT技術の戦略的導入: 外国人介護職員の受入れ・定着に向けた環境整備として、ICTの活用が推奨されています。IT技術を導入することで業務効率化を図り、外国人スタッフがより専門的な介護業務に集中できる環境を提供することが、生産性向上と定着率の改善につながります。

3. 日本人職員のマインドセット変革: 外国人介護人材の定着には、ともに働く日本人職員の理解が不可欠です。日本人職員向けに、外国人職員と同じ職場で働く上で知っておくべきコミュニケーションの取り方やマインドセットについて解説する研修を実施するなど、組織全体の国際交流意識を高め、多様性を尊重する共生モデルを確立することが、日本の介護医療の未来を切り開く鍵となります。

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