建設業特有の外国人材受け入れ
建設業界は今、かつてない転換期を迎えています。「2024年問題」による時間外労働の上限規制適用、熟練職人の高齢化、そして若年層の入職者減少。これらの構造的な人手不足を解消する切り札として、外国人材への期待は高まる一方です。
実際に、建設現場で外国籍の職人を見かけることは日常の風景となりました。しかし、単に「人手」として採用するだけでは、現場の混乱や早期離職、最悪の場合は労働災害といった重大なリスクを招きかねません。多くの企業が採用には成功しても、その後の「育成」と「定着」という高い壁に直面しています。
本記事では、建設業特有の事情を踏まえた外国人材受け入れの課題と、それを乗り越えるための具体的な解決策を深掘りします。採用担当者や登録支援機関の実務担当者が知っておくべき、現場の安全を守り、組織を強くするための戦略的アプローチを解説します。
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建設現場における外国人材活用の現状と構造的変化
建設業界における外国人労働者の受け入れは、数合わせの労働力確保から、将来の中核人材育成へとその意味合いを変化させています。
人手不足の深刻化と必須戦力化する外国人材
建設業の就業者数はピーク時から大幅に減少し、高齢化率は全産業の中でも際立って高くなっています。国土交通省等のデータが示すように、今後大量のベテラン層が引退を迎える中で、国内の人材だけで現場を維持することは物理的に困難な状況です。 こうした中、外国人労働者数は過去最高を更新し続けており、建設業はその受け入れの主要な舞台の一つとなっています。かつては「技能実習生」として、期間が来れば帰国する一時的な存在と見なされがちでしたが、2019年に創設された特定技能制度により、即戦力として、また長期的にキャリアを形成できる人材としての位置づけが確立されつつあります。もはや彼らは「補助員」ではなく、施工管理や現場のリーダーを任されうる「必須戦力」となっているのです。
建設業特有の在留資格制度と受入要件
建設業で外国人を雇用する場合、他業種とは異なる厳格なルールが存在します。特に「特定技能1号」で外国人を受け入れる場合、以下の3つの独自要件を満たす必要があります。
- 建設業許可の取得: 適切な事業運営が行われていることの証明。
- 建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録: 事業者および外国人技能者本人の登録が必須であり、技能レベルの見える化が図られています。
- 建設技能人材機構(JAC)への加入: 業界全体での適正な受け入れと共生を推進するための枠組みへの参加。
これらの要件は、建設業における外国人材の質を担保し、不当な待遇を防ぐための防波堤となっています。しかし、これらの手続きの煩雑さが、特に中小規模の建設会社にとって導入のハードルとなっている側面も否めません。
建設業が直面する固有の課題とリスク要因
外国人材の受け入れには多くのメリットがある一方で、建設現場という特殊な環境ゆえに発生する深刻な課題があります。
命に関わる安全管理と言語コミュニケーションの壁
建設現場における最大の課題は、労働災害のリスク管理です。高所作業や重機の操作など、一歩間違えれば重大事故につながる環境において、コミュニケーションの不全は致命的です。 「見て覚えろ」という従来の職人気質の指導法や、日本語特有の「あうんの呼吸」は、文化背景の異なる外国人材には通用しません。例えば、「危ない!」ととっさに叫んでも、その意味が瞬時に伝わらなければ回避行動が遅れます。また、日本語能力が不十分なために、安全衛生教育の内容を十分に理解しないまま現場に出てしまい、禁止事項を行ってしまうケースも散見されます。 内閣府の調査でも、企業の多くが「日本語能力」や「日本人社員とのコミュニケーション」を最大の課題として挙げており、これが現場の安全性を脅かす要因となっています。
重層下請構造におけるコンプライアンス管理の難しさ
建設業特有の元請・下請という重層的な構造も、外国人材管理を難しくしています。現場には複数の会社の作業員が混在しており、指揮命令系統が複雑になりがちです。 自社で直接雇用している外国人材であれば管理もしやすいですが、協力会社の外国人材が現場に入る場合、その在留資格や技能レベルが適切かどうかを現場監督が即座に判断するのは困難です。もし、不法就労状態の外国人を現場で働かせてしまった場合、雇用主だけでなく、現場を管理する元請企業も「不法就労助長罪」を問われるリスクがあります。また、現場ごとのルールの違いや、日本人職人との人間関係の摩擦が、外国人材にとって大きなストレスとなることもあります。
キャリアパスの不透明さと早期離職の連鎖
せっかく育成した人材が短期間で離職してしまう「定着」の課題も深刻です。外国人労働者の離職率は一部で約45%に達するとも言われ、採用コストが無駄になるリスクがあります。建設業は「きつい・汚い・危険」というイメージを持たれやすく、さらに賃金水準が低い場合、より条件の良い他産業や都市部へ人材が流出してしまいます。 特に、技能実習生から特定技能への移行や、その先のキャリアビジョン(職長への昇進など)が明確に示されていない場合、外国人材は「この会社にいても将来がない」と判断し、帰国や転職を選びます。彼らの多くは、母国の家族を養うため、あるいは自身のスキルアップのために強いハングリー精神を持って来日しています。その意欲に応える明確な評価制度や将来像を提示できない企業は、採用コストばかりがかさみ、技術の蓄積ができないという悪循環に陥ります。
問題の根底にある意識と構造的な原因
表面化する課題の背後には、受け入れ企業側の意識や準備不足という根本的な原因が潜んでいます。
「安価な労働力」という古い認識からの脱却遅れ
一部の企業には、いまだに外国人材を「日本人よりも安価に雇える調整弁」と捉える意識が残っています。最低賃金ギリギリでの雇用や、日本人社員との不合理な待遇格差は、モチベーションの低下を招くだけでなく、法令違反のリスクを高めます。 現代の外国人材は、SNSなどを通じて他社の待遇や日本の労働環境に関する情報を豊富に持っています。不当な扱いはすぐに広まり、企業の評判を落とすだけでなく、新たな人材確保を困難にします。外国人を「コスト」ではなく、付加価値を生み出す「投資対象」として捉え直す意識改革が求められています。
受け入れ体制と異文化理解の欠如
現場の日本人社員に対する教育不足も大きな要因です。「言葉が通じないから使えない」「文化が違うからトラブルになる」といった現場の不満は、多くの場合、受け入れ側の準備不足に起因します。 宗教的な習慣(お祈りの時間や食事制限)への配慮や、わかりやすい日本語(やさしい日本語)での指示など、歩み寄る姿勢がなければ信頼関係は築けません。現場の職長や日本人スタッフが異文化マネジメントのスキルを持たないまま外国人材を部下に持つことは、双方にとって不幸な結果を招きます。
課題解決に向けた具体的施策と定着支援の仕組み
これらの課題を克服し、外国人材を企業の成長エンジンに変えるためには、多角的なアプローチが必要です。
安全教育のDX化と「視覚化」による事故防止
言葉の壁を越えて安全を確保するためには、デジタルツールの活用が極めて有効です。
- 動画マニュアルの導入: 作業手順や安全確認の動作を動画で撮影し、多言語の字幕や音声を付与します。「カミナシ 教育」や「iTutor」、「Pocket Work Mate」といったツールを活用すれば、翻訳の手間をかけずに直感的に理解できる教材を作成できます。
- ピクトグラムとやさしい日本語: 現場の掲示物には、文字だけでなくイラスト(ピクトグラム)を多用し、専門用語を避けた「やさしい日本語」で表記します。「墜落注意」ではなく「おちる ちゅうい」と書くといった工夫が、事故防止に直結します。
- 翻訳アプリの活用: 現場での突発的な指示や確認には、音声翻訳アプリを積極的に利用し、曖昧な理解のまま作業を進めさせないルールを徹底します。
建設キャリアアップシステム(CCUS)を活用した公正な評価
建設業にはCCUSという強力なツールがあります。これを単なる登録義務としてではなく、キャリアパスの提示に活用しましょう。
- 技能レベルの可視化: CCUSのカードの色(レベル)が上がれば給与も上がるといった明確な基準を設けます。
- 特定技能2号への道筋: 熟練した技能を持てば、家族帯同が可能で在留期間の制限がない「特定技能2号」へ移行できることを示し、そのために必要な資格取得を会社が全面的にバックアップします。
- 同一労働同一賃金: 日本人と同じ仕事をするならば、同じ賃金を支払う原則を徹底します。公正な待遇こそが、最強の定着支援策です。
登録支援機関や専門サービスの戦略的活用
自社だけで法的手続きや生活支援を行うのが難しい場合、外部の専門機関をパートナーとして活用することが成功の鍵です。特定技能外国人の支援計画作成や実施は専門的な知識を要するため、登録支援機関への委託が一般的です。
- スタッフ満足: 業界最安水準の費用体系(紹介料や月額支援委託料)を提示しており、コストを抑えたい中小企業に適したサービスを提供しています。
- STAY WORKER (株式会社USEN WORKING): ビザ申請や労務管理のコンプライアンスに強みがあり、正社員雇用を前提とした手厚いサポートが期待できます。
- バックエンド (BACKEND): 行政書士が在籍しており、複雑な申請手続きのオンライン化や代行をスムーズに行います。コンプライアンス重視の企業に向いています。
- キャリアリンクファクトリー: 製造業等で培った大量採用と定着支援のノウハウを持ち、送迎や寮の管理など生活面も含めた包括的な支援が可能です。
- ジンジブ: 高卒採用のノウハウを活かしつつ、建設業界での若手外国人材の採用と定着に向けた情報発信や支援を提供しています。
- ミツケル にほんのしごと (株式会社京進): 特定技能ビザを中心に、多言語対応スタッフによるきめ細かなマッチングと就業支援を行っています。
これらの機関は、単なる事務代行だけでなく、外国人材と企業の間の通訳やメンターとしての役割も果たします。特に、生活面でのトラブル(ゴミ出し、騒音、住居契約など)や、日本人社員には相談しにくい悩みの解決において、第三者の立場からの介入は非常に効果的です。
組織全体でのダイバーシティ推進とメンター制度
現場レベルでの孤立を防ぐためには、日本人社員への教育も欠かせません。
- 異文化理解研修: 日本人スタッフに対し、相手国の文化や習慣を学ぶ研修を実施します。「なぜ彼らはそうするのか」を理解することで、ストレスや摩擦が大幅に軽減されます。
- メンター制度: 業務指導役とは別に、生活や人間関係の相談に乗るメンター(相談役)を配置します。年齢の近い日本人社員や、先輩の外国人社員を任命することで、心理的安全性を確保します。
- 地域社会との交流: 企業のイベントに地域住民を招いたり、地域の清掃活動に参加したりすることで、外国人社員が地域コミュニティの一員として受け入れられるようサポートします。
まとめ:共生と成長に向けたパートナーシップの構築
建設業における外国人材の活用は、もはや避けては通れない道です。しかし、そこにある課題を直視せず、旧態依然とした雇用慣行を続けていれば、現場の安全は脅かされ、人材は流出してしまいます。
重要なのは、外国人材を「一時的な労働力の補填」ではなく、「共に未来を建設するパートナー」として迎え入れる意識転換です。 安全を守るための徹底したコミュニケーションの工夫、技能と意欲に報いる公正なキャリアパス、そして生活者としての彼らを支える支援体制。これら「教育」「評価」「支援」の三位一体の取り組みこそが、外国人材の定着率を高め、ひいては企業の施工能力と競争力を底上げすることにつながります。
精密機械を導入する際に丁寧なメンテナンス計画を立てるように、外国人材という貴重な「人的資本」を活かすためには、組織全体での戦略的な環境整備が不可欠です。外部の専門サービスの力も借りながら、国籍を問わず誰もが安全に、そして意欲的に働ける現場を作り上げることが、これからの建設企業の存続と発展を決定づけるでしょう。
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