深刻化するドライバー不足と特定技能制度の役割
2024年問題と外国人材活用への期待
現在の日本において、物流や交通インフラの維持は極めて困難な局面を迎えています。いわゆる「2024年問題」による労働時間の制限と、少子高齢化に伴う深刻な人手不足が重なり、運送業界の有効求人倍率は他業種を圧倒する高水準で推移しています。日本の外国人労働者数は2024年10月末時点で230万人を超えており、事業継続のために外国人材が欠かせない戦力となっているのは明白です。
こうした状況を打破するために、2024年3月に新たな特定産業分野として追加されたのが「自動車運送業」です。この制度により、これまで就労ビザの取得が困難だったトラック、バス、タクシーの運転手として、外国人材を「即戦力」で雇用することが可能になりました。
特定技能の制度活用ロードマップに関しては、以下の記事をご確認ください。
【最新版】特定技能のすべてを網羅する完全ロードマップ|採用から定着・キャリア形成まで
最近では以下のような大きなプレスリリースも出ています。

特定技能制度の構造:1号と2号の違い
特定技能制度には、最長5年の在留が認められる「1号」と、熟練した技能を持ち、在留期間の更新に上限がない「2号」の2段階が存在します。
- 特定技能1号: 日本語試験と技能試験の合格が必要で、家族の帯同は認められていません。受け入れ企業には、10項目の法的支援義務が課せられます。
- 特定技能2号: 1号よりも高度な「熟練した技能」が求められますが、更新制限がなく、要件を満たせば配偶者や子供を呼び寄せることが可能です。
運送業界において長期的な戦力を確保するためには、1号から2号へのステップアップという明確なキャリアパスを提示し、定着を促す戦略が不可欠です。
外国人ドライバー雇用における最大の関門:日本の運転免許取得
特定技能の在留資格を得るだけでは、公道で商用車を運転することはできません。外国人ドライバーを雇う際、企業が最も注意すべきは「日本の運転免許への切り替え(外免切替)」または「新規取得」の手続きです。
2025年以降の厳格化された外免切替手続き
2025年10月に施行された道路交通法施行規則の改正により、外国免許から日本免許への切り替え手続きは大幅に厳密化されました。以前は比較的容易だった取得が、現在は「真に日本で生活する外国人」に対象を絞る形へと転換されています。
主な変更点と注意点は以下の通りです:
- 住民票の義務化: 短期滞在(観光)資格では原則として切替ができなくなり、中長期在留資格が必須となりました。
- 知識確認試験の難化: 以前は10問中7問で合格できましたが、現在は**50問中45問(90%以上)**の正解が必要です。
- 実技試験の厳格化: 安全確認や日本特有の交通マナーが細かくチェックされ、合格率は約30%前後まで急落しています。
免許取得までの猶予期間「特定活動55号」の活用
ドライバーとして採用した外国人が、来日してすぐに特定技能1号の活動を始めることは困難です。そのため、日本で免許を取得するための準備期間として「特定活動55号」という在留資格が設けられています。
- トラック: 最長6ヶ月
- バス・タクシー: 最長1年
この期間内に免許を取得し、新任運転者研修を修了することで、初めて特定技能1号への変更が可能となります。ただし、この在留期間の更新はできないため、計画的なスケジュール管理が企業の成否を分けます。
特定技能1号に課される「10項目の支援義務」と実務ポイント
特定技能1号の外国人を雇用する企業には、本人が日本での生活や就労にスムーズに順応できるよう、法的に定められた「1号特定技能外国人支援計画」の実施が義務付けられています。
契約前に必須となる「事前ガイダンス」
事前ガイダンスは、雇用契約締結後から在留資格申請までの間に必ず実施しなければならない支援です。対面またはビデオ通話により、本人が理解できる言語で3時間以上の情報提供を行う必要があります。
説明すべき義務的事項には、仕事内容や報酬の詳細はもちろん、保証金や違約金徴収の禁止、さらには会社が負担すべき支援費用の説明などが含まれます。特にドライバー職の場合、免許取得までの流れや、万が一取得できなかった場合の対応についても、この段階で十分に理解を促しておくことがトラブル防止に繋がります。
入国から就労開始後の包括的サポート
義務的支援には、空港への送迎、適切な住居の確保、銀行口座の開設支援、役所での公的手続きへの同行などが含まれます。また、日本の交通ルールやゴミ出しのマナーなどを教える「生活オリエンテーション」も不可欠です。
さらに、3ヶ月に1回以上の「定期的な面談」を実施し、仕事や生活上の悩みを聞き取ることが、定着支援において極めて重要な役割を果たします。
高い離職率を防ぎ「定着」を確実にするための戦略
外国人労働者の離職率は、過去の報告で45%前後というデータもあり、採用コストを無駄にしないための対策が急務です。定着率を高めるためには、単なる法的義務の遂行を超えた「選ばれる企業」としての努力が求められます。
公正な評価基準とキャリアパスの明示
外国人が離職する主な理由には、給与に対する不満や希望するキャリアを形成しづらいことが挙げられます。これを防ぐには、日本人と同等以上の報酬を保証するだけでなく、能力に応じた明確な評価基準を設けることが重要です。
特に「特定技能1号から2号へ」の移行ルートを具体的に示すことは、強力なモチベーション維持に繋がります。2号になれば家族帯同が可能になり、在留期間の上限もなくなるため、将来的に永住権を取得する道も開かれます。
コミュニケーションと異文化理解の促進
職場の孤立は離職の最短ルートです。日本人社員向けの「異文化理解研修」を実施し、国籍や文化の違いを受け入れるダイバーシティマネジメントを推進しましょう。
ドライバー業務においては、道路標識や無線連絡などで高度な日本語能力が求められます。特にバスやタクシーではJLPTのN3レベル以上が必要となるため、入社後も継続的な日本語学習の機会を提供することが、安全運行と定着の両面に寄与します。
2026年度以降の「在留手数料大幅値上げ」への備え
特定技能外国人を継続的に雇用する上で、無視できないのが行政コストの変化です。政府は、2026年度から2027年度にかけて、在留資格の更新や変更に伴う手数料を数倍から十数倍へと引き上げる方針を固めています。
手数料改定が経営に与えるインパクト
現在の更新手数料は6,000円ですが、改定後は3万円から4万円前後になる見通しです。さらに永住許可申請は1万円から10万円以上へと跳ね上がる可能性があります。
もし50人の外国人ドライバーを雇用している企業が全員分の更新料を負担する場合、年間の追加負担は約200万円に達します。このコスト増を「福利厚生費」や「採用コスト」の一部としてあらかじめ予算化しておく必要があります。
更新回数を減らす「カテゴリー区分」の向上
コスト削減の鍵は、更新回数を減らし、最長である「5年」の在留期間を確保することです。
入管の企業カテゴリー1または2に属する企業は、5年の在留期間が認められやすい傾向にあります。中小企業であっても、「えるぼし認定」や「くるみん認定」などの国の認定を取得することで、カテゴリー1として扱われる優遇措置を受けられるケースがあります。これはコスト削減だけでなく、企業の労務管理の質を証明することにもなり、人材募集における大きな強みとなります。
外部専門家や登録支援機関の賢い活用方法
特定技能1号の支援は非常に煩雑であり、自社だけで全てを完結させるのは容易ではありません。
登録支援機関へ委託すべきケース
以下の条件に当てはまる企業は、自社で支援を行うことができず、登録支援機関に全ての業務を委託する必要があります:
- 過去2年間に外国人(就労資格者)の受け入れ実績がない場合
- 社内に適切な支援体制(多言語対応や支援担当者の選任など)が整っていない場合
実績がある企業であっても、ドライバー特有の免許取得手続きや、2025年以降の厳格化された試験対策を確実に行うためには、専門家によるサポートを受けることが現実的です。
採用ルートの比較と選定
外国人ドライバーを採用するルートは主に3つあります:
- 技能実習からの移行: すでに日本で働いている技能実習2号修了者を特定技能へ変更する。日本語試験などが免除されるメリットがあります。
- 留学生からの変更: 国内の留学生が試験に合格して変更するパターン。日本語能力が高い層を確保しやすいです。
- 海外からの新規呼び寄せ: 現地の送り出し機関を通じて面接を行い、呼び寄せる。若い労働力を確保できますが、入国までの手続きに時間がかかります。
結論:外国人ドライバー活用を成功させるために
外国人ドライバーの採用は、単なる人手不足の穴埋めではなく、企業の持続的な成長を支えるための「戦略的投資」です。
成功のための5つのポイント:
- 免許取得の徹底サポート: 2025年以降の難化した外免切替試験に対応するため、多言語教材の提供や教習所での実技練習を予算化すること。
- 包括的な定着支援: 事前ガイダンスから定期的な面談まで、法的な支援義務を誠実に履行し、孤独にさせない体制を作ること。
- キャリアパスの提示: 特定技能2号への昇格や永住権取得を目標に掲げ、長期的なライフプランを描ける環境を整えること。
- コスト増への先行投資: 将来の在留手数料値上げを見越し、認定制度の活用などで企業カテゴリーを上げ、効率的な在留管理を行うこと。
- 専門機関との連携: 複雑化する法規制や手続きを確実に行うため、実績のある登録支援機関や行政書士をパートナーに選ぶこと。
外国人材が安全に、そして誇りを持ってハンドルを握り続けられる環境を構築することこそが、日本の物流の未来を守る唯一の道となります。
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