深刻化する介護人材不足と多国籍チーム雇用の戦略的必要性
介護業界の外国人材受け入れ現状と平川病院の挑戦
日本の介護業界は、高齢化の進展に伴う需要の増加と、労働人口の減少により、深刻な人材不足という構造的な問題に直面しています。内閣府の将来推計によると、高齢者1人を支える生産年齢人口の数は2070年にはわずか1.3人にまで低下する見込みであり、外国人材の雇用は事業継続のための必須戦略となっています。
全国の介護施設の44.9%(有効回答1837施設中824施設)が既に外国人介護人材を受け入れており、受け入れた施設のうち57.4%が今後も受け入れを増やしたいと考えていることから、外国人材への期待の高さがうかがえます。外国人材は、介護業界の人材不足解消に効果があると考えられています。
こうした背景のもと、東京都八王子市で病院、老健施設、診療所などを運営する医療法人社団光生会「平川病院」では、多国籍チームのマネジメントをいち早く実現しています。同院では、栄養科も含めて40名弱の外国人材が在籍しており、その国籍は中国、ベトナム、インドネシア、ミャンマー、ネパール(栄養科)と多岐にわたります。
平川病院は2018年ごろに中国人看護師の採用から外国人材の受け入れを始め、2019年ごろからは技能実習生の受け入れを開始しました。現在は、制度の移行期にあることから、特定技能での採用にほぼ一本化しています。
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40名近い外国人材が担う病院・老健施設の看護補助業務
平川病院では、外国人材が日本の介護現場で重要な役割を果たしています。特に、長年にわたり日本人看護補助者の採用が困難な状況が続いているため、現在では看護補助業務は外国人材に頼らざるを得ない状況となっています。
外国人材の主な業務内容は、看護補助者として、医療行為のない清潔ケア、移動介助、入浴介助、食事介助など、基本的な介護業務を担当しています。病院という特性上、医療行為や投薬に関する業務は一切行わせていません。また、栄養科では、特定技能の外食試験合格者を厨房業務全般(調理・盛り付け・仕込み・食器洗浄など)に雇用しています。
外国人スタッフの中には、介護福祉士資格が16名、看護師資格が3名おり、ベトナムの方々は、以前の経過措置で学校を卒業し介護福祉士の資格を取得した方がいます。さらに、日本語能力的にはN2レベルで、4年目で介護福祉士国家試験に合格した方も在籍しています。
外国人介護人材の雇用においては、永続的な雇用やリーダー育成の観点から、介護福祉士資格(在留資格「介護」への移行条件)の取得が非常に重要ですが、平川病院では、資格取得者を組織の中核として育成する基盤が既に存在していることがわかります。
国籍の壁を越える「平川病院式」コミュニケーションと育成術
翻訳機器に頼らない「ゆっくり、簡単な日本語」の徹底
多国籍チームをまとめる上で、平川病院が直面した最大の課題の一つは言語の壁でした。外国人介護人材の受け入れに関する悩み事として、日本語の習熟度が低いことを挙げる施設が51.1%と最も多く、平川病院でも、言語がうまく通じないことによる現場の負荷を当初は感じていました。
同院では、翻訳機器の導入を全病棟で進めたものの、精度が不十分であったため、最終的には「結局スタッフ同士で大事なことはゆっくり、簡単な日本語でコミュニケーションを取るようにした」と述べています。特に、夜勤から日勤への申し送り事項など、重要な日本語を日本人同士のスピード感で話すと、外国人材はついてこれないため、受け入れ側が配慮していく必要性があると感じています。
また、国籍によって日本語習得のスピードに差があることが指摘されています。ベトナムの方々は発音の違いから日本語の習得に苦労される印象がある一方、インドネシアの方々は日本語の理解力が高く、習得のスピードが比較的早いと感じています。
異文化摩擦を防ぐための指導内容の調整とトラブル対応
多国籍な職場環境では、文化や価値観の違いによる摩擦が懸念されますが、平川病院では、国籍間でのトラブルはほとんど見られないという貴重な知見が得られています。
しかし、指導内容の解釈の違いや、日本人スタッフと外国人スタッフの間での認識の違いについては、日本人同士でも同様ですが、やはり発生するため、都度調整が必要な場面があるとしています。同院では、トラブルが発生した場合、迅速に当事者と話し合いの場を持ち、解決していくようにしています。
一般的に、外国人介護人材の受け入れでトラブルが生じた施設は28.9%あり、その内訳は職員等社内トラブルが30.3%、近隣住民とのトラブルが19.7%が上位となっています。また、外国人介護人材に関する悩み事として、文化の違い(宗教・習慣)を挙げる施設は39.6%います。
同院の事例から、多国籍チームのマネジメントでは、国籍間の対立よりも、業務上の認識のズレを早期に解決する指導・調整の仕組みが重要であることがわかります。
経験者採用と育成コスト最小化戦略
平川病院は現在、特定技能での採用にシフトしていますが、これは介護経験者の採用に力を入れることで、育成コストを最小化する戦略とも言えます。
同院がジンザイベースから採用したインドネシア人材は、元々介護の実務経験をお持ちで基本的な支援技術が身についていたため、そこまで育成に苦労はしなかったと述べています。主に病院特有のルールや業務フローの指導に重点を置いています。
介護施設での勤務経験がある外国人材は接遇面で非常に優れているため、むしろ日本人職員の言葉遣いなど、見習うべき点も多々あると評価しており、病棟スタッフへの良い刺激となっている側面があります。
外国人材の採用には、渡航費や各種手続き、登録支援機関への委託費用など、日本人スタッフの雇用よりも費用負担が大きいという課題が一般的に指摘されています。現地での日本語学習費用として60万円程度かかるケースもあるため、平川病院のように、国内在住の経験者や、日本語力の高い人材をリファラル採用などで確保することは、コスト効率の面でも理にかなっています。
長期雇用と定着を実現する待遇・キャリアパス戦略
賃金・夜勤に関する日本人職員との価値観の違いへの対応
外国人介護人材の定着に向けては、57.9%の施設が「日本人と同等の待遇(給与面・キャリアパス等)」を重視しており、これは法令上の義務でもあります。
平川病院では、十分な人材確保ができているため、外国人スタッフの夜勤回数を4~5回程度に抑えられています。しかし、外国人スタッフからはむしろ夜勤を増やして欲しいという要望もあるほどです。これは、特定技能などの外国人材が収入を増やすために長時間労働を希望する声がある、または夜勤手当による手取り収入の増加を重視するという価値観の違いを示しています。
同院では、法令遵守を徹底し長時間労働はさせない方針ですが、夜勤については、日本語能力とスキルを見極めた上で段階的に導入しています。具体的には、日本語能力がN2程度になった方から夜勤を任せる形をとり、現在では多くの外国人スタッフが夜勤をこなせるようになっています。これは、外国人材の賃金への期待と法令遵守を両立させるための具体的なマネジメント方法の一つと言えます。
柔軟な休暇制度と国籍別サポートによる定着率向上
外国人介護人材の離職原因として、「人間関係」や「給与不満」に加えて、将来・キャリアへの不安が挙げられています。特に地方出身の外国人材は、同国人コミュニティの少なさからストレスを感じるケースがあるため、生活面や精神面でのサポートが定着に不可欠です。
平川病院では、外国人材の定着について、特に地方出身の方々のストレスへの配慮として、休暇取得について柔軟な対応を心がけています。以前は2週間だった帰国休暇を、現在では3週間、場合によっては1ヶ月程度まで認めているという事例があります。
また、日本語能力がなかなか上達しないスタッフに対しては、同じ国籍の先輩がいる病棟へ配属するように調整することで、乗り越えています。先輩スタッフには、「多少母国語が混じってもいいから、サポートしてあげて」と協力体制を構築しており、言語と精神面の両方からサポートすることで、外国人材の孤立を防ぐ対策を行っています。これは、多くの施設が実施している職員同士のコミュニティの支援(60.9%)の一環とも言えます。
資格取得者(介護福祉士)を中核人材とするキャリア形成
平川病院には、既に介護福祉士資格を持つ外国人スタッフが16名在籍しています。資格取得は、在留資格「介護」への移行により、在留期間の更新制限がなくなり、家族の帯同も可能となるため、外国人材にとって日本での永続的な雇用の大きな目標です。
施設側は、介護福祉士資格の取得者に対し、基本給の向上だけでなく、リーダー職への昇進機会を提供することが、長期的なモチベーションの維持につながるとされています。平川病院でも、評価の高い人材には役職をつけるという取り組みを実施しており、外国人スタッフを将来のリーダーや管理者として育成する視点が、施設運営の鍵となっています。
資格取得支援については、多くの施設が給与処遇やキャリアパスの確立(49.8%)、日本語、介護導入研修の実施(60.4%)、介護福祉士国家試験対策の支援(42.6%)を実施しており、同院でもN2レベルへの育成に重点を置いていることが、夜勤導入の条件からも確認できます。
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