特定技能「物流倉庫」とは?受入れできる事業者・要件と開始時期を解説

特定技能
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特定技能の「物流倉庫」分野は、2026年1月23日の閣議決定で特定技能の対象分野に加わりました。

ただし2026年9月時点では、特定技能1号評価試験の開始時期と分野別協議会の設置がいずれも調整中で、特定技能での受入れはまだ始まっていません。育成就労での受入れは2027年4月1日から始まります。本記事では、国土交通省の案内ページと物流倉庫分野の分野別運用方針をもとに、受け入れられる事業者の条件、任せられる業務、求められる試験と日本語水準、そして受入れ開始までに企業が準備しておくことを整理します。

この記事でわかること

  • 物流倉庫分野の追加の経緯と、2026年9月時点の進捗
  • 受入れができる4つの事業者類型と、派遣での受入れができない理由
  • 外国人材に任せられる業務と、フォークリフト・配送業務の扱い
  • 特定技能1号・育成就労で求められる試験と日本語の水準
  • 倉庫管理システムの利活用など、受入れ企業に課される上乗せ基準

特定技能「物流倉庫」分野とは何か?

物流倉庫分野は、倉庫内で行われる貨物の入出庫・保管などの作業に、特定技能1号と育成就労の外国人材を受け入れる分野です。2026年1月23日の閣議決定で特定産業分野と育成就労産業分野の両方に追加され、所管は国土交通省です。2026年9月時点で特定技能2号の受入れは予定されていません。

追加の背景と受入れ見込数

分野別運用方針によると、EC市場の拡大などで保管需要が増え、普通倉庫の従業員1人あたりの所管面積は2019年度の633㎡から2023年度の674㎡へ約6%広がりました。2028年度には5万5,100人程度の人手不足が見込まれ、倉庫管理システムなどによる省力化と女性・高齢者の雇用を進めてもなお不足する分を、外国人材で補う設計です。

区分 受入れ見込数 対象期間
分野全体 1万8,300人 2026〜2028年度の3年間
特定技能1号 1万1,400人(受入れの上限として運用) 2026〜2028年度の3年間
育成就労 6,900人(受入れの上限として運用) 2027〜2028年度の2年間

出典:物流倉庫分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針(令和8年1月23日閣議決定)

見込数は受入れの上限として運用され、超えることが見込まれる場合は在留資格認定証明書の交付が一時停止されます。2026年4月には外食業分野で実際に停止措置がとられており、枠には限りがある前提で計画を立てる必要があります。

2026年9月時点の進捗

時期 内容
2026年1月23日 分野別運用方針の閣議決定(物流倉庫分野の追加)
2026年2月末 育成就労評価試験(初級)・特定技能1号評価試験の試行試験を終了
2026年6月26日 特定技能・育成就労それぞれの上乗せ基準告示を公布(国土交通省告示第787号・第788号)
調整中 特定技能1号評価試験の開始時期、試験実施要領、分野別協議会の設置と加入受付
2027年4月1日 育成就労制度の運用開始

出典:国土交通省「物流倉庫分野における特定技能外国人・育成就労外国人の受入れについて」(2026年9月時点の記載)

特定技能1号で受け入れるには評価試験の合格者が必要なため、試験の開始時期が実際の受入れ開始時期を左右します。国土交通省は決定しだい同ページで知らせるとしています。

物流倉庫分野で外国人材を受け入れられる事業者は?

物流倉庫分野で外国人材を受け入れられるのは、倉庫業の登録を受けた倉庫業者か、一般・特定貨物自動車運送事業の許可を受けた事業者など、分野別運用方針が定める4つの類型に当てはまる事業者に限られます。雇用形態は直接雇用に限られ、人材派遣による受入れはできません。

受入れができる4つの事業者類型

類型 事業者の条件
A 倉庫業の登録を受けた倉庫業者で、倉庫作業を自ら行う者
B 倉庫業者から業務委託を受け、その倉庫業者の営業倉庫で倉庫作業を行う者
C-(1) 一般・特定貨物自動車運送事業の許可を受け、自ら占有する倉庫で倉庫作業を自ら行う者
C-(2) 一般・特定貨物自動車運送事業の許可を受け、その事業に関連して他人の需要に応じ有償で倉庫作業を行う者

自家用倉庫だけを持つメーカーや小売業者は、倉庫業の登録や貨物自動車運送事業の許可がなければ、この類型に当てはまりません。自社の工場や店舗の倉庫作業に外国人材を配置したい場合は、製造業や飲食料品製造業など、本業の分野で受け入れられないかを先に検討してください。

派遣での受入れは不可

分野別運用方針は、特定技能外国人・育成就労外国人ともに雇用形態を「直接雇用に限る」と定めています。人材派遣会社が物流倉庫分野の特定技能外国人を雇って倉庫に派遣する形はとれません。倉庫作業の請負会社が受け入れる場合は、類型Bとして倉庫業者から業務委託を受け、自社で雇用する必要があります。

業務委託先には協議書の取り交わし

類型Bの事業者が特定技能外国人を受け入れる場合は、委託元の倉庫業者との間で、外国人材の雇用の継続性に両者が共同で責任を持つ内容の協議書を作成し、取り交わす必要があります。委託契約が終わった途端に外国人材が職を失う事態を防ぐための条件です。委託元との協議には時間がかかるため、早めに相談を始めておくと安心です。

外国人材に任せられる業務はどこまでか?

物流倉庫分野の外国人材が従事できるのは、物流倉庫の倉庫内で行われる貨物の入出庫、保管その他の各種倉庫作業です。入出庫貨物の受渡し・検品、貨物の移動、保管庫への格納、ピッキング、流通加工などが主な業務で、トラックによる配送は含まれません。

従事できる主な業務と関連業務

国土交通省は、主な業務として入出庫貨物の受渡し・検品、貨物の移動、保管庫への格納、ピッキング、流通加工を挙げています。あわせて、事務所への連絡や報告、作業場所の整理整頓や清掃、台風の接近に備えた貨物の移動や雨水の侵入防止、安全衛生の会議や教育訓練への参加といった関連業務に、付随的に従事することも認められています。

フォークリフトの運転に必要な資格

貨物の移動にフォークリフトを使う場合は、在留資格とは別に、労働安全衛生法にもとづく資格が必要です。最大荷重1トン以上のフォークリフトは技能講習の修了、1トン未満は特別教育の受講が条件で、日本人と同じ要件が外国人材にも適用されます。講習は日本語で行われるのが一般的なため、多言語の教材を用意している教習機関を探すか、受講前に専門用語を学ぶ時間を確保してください。

配送ドライバー業務は対象外

トラックでの配送は物流倉庫分野の業務に含まれません。外国人材に運転業務を任せる場合は、特定技能「自動車運送業」分野での受入れと、日本の運転免許の取得が必要です。詳しくは特定技能「自動車運送業」外国人ドライバーの採用から定着支援までで解説しています。

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外国人材に求められる試験と日本語の水準は?

物流倉庫分野の特定技能1号では、物流倉庫分野特定技能1号評価試験への合格と、「日本語教育の参照枠」のA2.2相当以上の日本語能力が求められます。育成就労では、就労開始前にA1相当以上の日本語試験への合格か、相当する日本語講習の受講が必要です。

段階 技能 日本語
特定技能1号の取得時 物流倉庫分野特定技能1号評価試験 A2.2相当以上(国交省の案内ではJLPT N4等)
育成就労の就労開始前 ― A1相当以上(JLPT N5等)の合格、または相当する講習の受講
育成就労の開始後1年 物流倉庫分野育成就労評価試験(初級) A1相当以上
育成就労での本人意向の転籍 物流倉庫分野育成就労評価試験(初級) A2.1相当以上(転籍制限期間は1年)
育成就労の修了時 物流倉庫分野特定技能1号評価試験 A2.2相当以上

出典:物流倉庫分野の分野別運用方針、国土交通省の案内ページ

育成就労から特定技能1号へ移る時点で求められる日本語はA2.2相当で、就労開始時のA1相当から3年で2段階引き上げる必要があります。A1〜A2の日本語試験として使われるJFT-Basicの対策はJFT-Basic対策の要は「いろどり」|JLPTとの違いで、移行の要件は育成就労から特定技能への移行条件で解説しています。

受入れ企業に課される上乗せ基準とは?

物流倉庫分野の受入れ企業には、入庫・在庫・出庫の管理機能を持つ倉庫管理システムなどを利活用し、その状況を協議会に報告することが求められます。あわせて、分野別協議会への加入、協議会と国土交通省の調査・指導への協力、外国人材の求めに応じた実務経験証明書の交付も条件です。

倉庫管理システムの利活用と報告

物流倉庫分野に特有の条件が、システムの利活用です。受入れ企業は、入庫管理・在庫管理・出庫管理の機能を持つシステムかそれに準ずるシステムを利活用し、さらにそのシステムと連携して省力化や労働安全衛生の向上を図れる機器・システムの利活用を続けることが求められます。利活用の状況は、協議会への入会からおおむね1年を目途に報告し、確認を受けます。紙の台帳や表計算ソフトだけで在庫を管理している企業は、システム導入の検討から始める必要があります。

協議会への加入と実務経験証明書

特定技能の受入れ企業は、物流倉庫分野の協議会の構成員となり、協議会で決まった事項に関する措置を講じます。1号特定技能外国人支援計画の実施を登録支援機関に全部委託する場合は、その登録支援機関も協議会の構成員でなければなりません。また、外国人材から求められたときは、雇用契約にもとづく実務経験を証明する書面を交付します。協議会は2026年9月時点で設置に向けた調整中のため、加入要件と受付開始時期は国土交通省の発表を待つ段階です。

受入れ開始までに企業は何を準備すべきか?

物流倉庫分野で外国人材を受け入れる企業は、まず自社が4つの事業者類型と上乗せ基準を満たすかを確認し、次に費用と日本語教育の準備を進めます。試験と協議会の日程が決まってから動き始めると、受入れ枠が埋まる前に採用を間に合わせるのが難しくなります。

受入れ可否のセルフチェック

分野別運用方針の条件を、企業側で確認しやすい順に並べ直すと次のとおりです。1つでも「いいえ」がある場合は、その項目の解消が最初の準備になります。

確認項目 「いいえ」の場合の対応
倉庫業の登録、または一般・特定貨物自動車運送事業の許可を受けているか 類型Bとして登録倉庫業者から業務委託を受けられないか検討する。どれにも当たらなければ本業の分野での受入れを検討する
外国人材を自社で直接雇用できるか 派遣での受入れはできないため、自社雇用に切り替える
類型Bの場合、委託元と協議書を交わせるか 雇用の継続性について委託元の倉庫業者と協議を始める
入庫・在庫・出庫を管理するシステムを使っているか 倉庫管理システムの導入を検討する(報告は協議会入会からおおむね1年)
支援計画を自社で実施するか、協議会に加入する登録支援機関に委託できるか 委託先の候補が協議会に加入する予定かを確認する

1人あたりの年間費用の試算

給与とは別に、受入れ企業が負担することの多い公定の費用を、特定技能1号1人あたりで試算します。登録支援機関への委託費は、出入国在留管理庁の資料で平均月額28,386円です(技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議 第8回 参考資料4)。在留期間1年で更新する場合の手数料は、2026年10月1日施行の改定後で窓口33,000円、オンライン27,000円です。

  • 登録支援機関への委託費:28,386円×12か月=340,632円
  • 在留期間更新の手数料(窓口・1年):33,000円
  • 合計:年間およそ37万円(給与・社会保険料・住居費・渡航費などは含まない)

在留期間が長く許可されれば1年あたりの手数料は下がり、支援を自社で実施すれば委託費はかかりません。手数料改定の全体像は在留資格更新の手数料値上げ|新料金一覧と企業対策で、支援計画の中身は1号特定技能外国人支援計画書の書き方と日本語学習支援で確認できます。

多言語の作業手順書と安全教育

倉庫内では、重量物の落下やフォークリフトとの接触が重大な労働災害につながります。作業手順書は写真やイラストを中心に作り直し、「止まれ」「危険」などの重要語は外国人材の母国語を併記しておくと、日本語が十分でない時期でも安全に働けます。翻訳アプリだけに頼ると専門用語が誤って伝わることがあるため、安全に関わる部分は通訳や母国語話者に確認してもらってください。

日本語教育の早期開始

特定技能1号に必要なA2.2相当は、採用前に満たしている必要があります。育成就労で受け入れる場合も、1年目の転籍要件でA2.1相当、修了時にA2.2相当が求められるため、入社直後から日本語学習の時間と記録の仕組みを用意しておくことが、移行と定着の両方に効いてきます。

物流倉庫の外国人材を定着させるには?

物流倉庫の外国人材を定着させるには、職場での孤立を防ぐ体制と、5年先までのキャリアの見通しを示すことが欠かせません。物流倉庫分野には2026年9月時点で特定技能2号がないため、特定技能1号の通算5年のなかで技能・日本語・役割をどう伸ばすかを企業側から示す必要があります。

孤立を防ぐメンター制度

倉庫作業は一人で黙々と進める時間が長く、外国人材は悩みや体調不良を言い出せないまま抱え込みがちです。日本人社員からメンターを任命して業務外の相談にも乗れる体制を作り、3か月に1回の定期面談を形だけで終わらせず、キャリアの希望や生活の困りごとを聞く場にしてください。日本人スタッフが「やさしい日本語」で話す研修も、職場全体の歩み寄りにつながります。

国交省の育成・キャリア形成プログラム

国土交通省は、業界と協働して物流倉庫分野の「育成・キャリア形成プログラム」を策定するとしています。プログラムは講習受講・資格取得、日本語能力、マネジメント経験の3つを柱とし、育成就労から特定技能1号までを通して外国人材が自分のキャリアを見通せるものになる予定です。公表されたら、自社の評価制度や手当と結びつけて示すと、長く働く動機づけになります。定着支援の全体像は外国人材の定着支援とは?離職を防ぐ施策7選で整理しています。

まとめ:物流倉庫分野は「受入れ条件の確認」から始める

特定技能の物流倉庫分野は2026年1月に追加が決まり、上乗せ基準の告示も6月に公布されましたが、2026年9月時点では特定技能1号評価試験の開始時期と協議会の設置が調整中です。受入れ枠は2028年度末までの3年間で1万1,400人と上限があるため、試験と協議会の日程が決まってから動くのでは間に合わない可能性があります。

いま進めておきたいのは、自社が4つの事業者類型に当てはまるかの確認、直接雇用と倉庫管理システムの準備、そして採用予定者の日本語教育です。同じ閣議決定で追加された資源循環分野とリネンサプライ分野については特定技能「廃棄物処理」(資源循環分野)、特定技能「リネンサプライ」の記事を、特定技能制度の全体像は特定技能のすべてを網羅する完全ロードマップをご覧ください。

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