倉庫管理(物流倉庫)
2027年度より、特定技能制度の対象分野に「倉庫管理(物流倉庫)」が新たに追加される見通しとなりました。EC市場の拡大に伴う業務量増加と、有効求人倍率が高止まりする物流業界の人手不足を解消するため、ピッキングや梱包、フォークリフト運転などの現場業務において、即戦力となる外国人材を長期的に雇用できる環境が整います。
なぜ今、物流倉庫分野が特定技能に追加されるのか?
EC市場の爆発的拡大と労働力不足のダブルパンチを解消するため
物流倉庫分野が特定技能に追加される最大の理由は、インターネット通販(EC)の普及による物流量の激増に対し、国内の労働力供給が追いつかず、サプライチェーンが崩壊する危機にあるためです。
その背景には、構造的な需給ギャップがあります。EC市場の拡大により、小口配送や迅速な出荷作業のニーズは年々高まっています。しかし、倉庫内作業は「きつい・単純作業」というイメージが根強く、若年層の採用が困難な状況が続いています。物流業界全体の有効求人倍率は全産業平均を大きく上回る水準で推移しており、特に地方の物流拠点では人員確保が事業継続のボトルネックとなっています。これまでは留学生のアルバイトや技能実習生(他職種からの転用など)に頼らざるを得ない側面がありましたが、正面から「倉庫管理」のプロとして外国人を雇用できる枠組みが必要不可欠と判断されたのです。
自社の現状とリスクを把握するために、以下のフローで分析を行ってください。
- 自社倉庫における過去3年間の出荷増加率と、従業員数の増減率を比較する。
- 現場スタッフの年齢構成をリスト化し、5年後、10年後の定年退職による自然減を算出する。
- 繁忙期(セール時期や年末年始)に不足した人員数と、それによって発生した残業コストや配送遅延の件数を洗い出す。
- 現在雇用している外国人アルバイト(留学生など)の中で、卒業後も継続雇用を希望する人材がいるかヒアリングを行う。
注意点として、単に「人が足りないから外国人を雇う」という安易な考えでは失敗してしまいます。特定技能人材は日本人と同等以上の処遇が求められるため、コスト増に見合う生産性向上計画がセットでなければ、経営を圧迫するリスクがあることを認識してください。
現場の生産性を高める「即戦力」としての期待
特定技能制度の導入は、単なる頭数合わせではなく、一定のスキルを持った即戦力を確保し、現場の生産性を底上げするために行われます。
この制度では、採用段階で日本語能力試験(N4以上)と、倉庫業務に関する技能評価試験の合格が要件となります。つまり、日本語での基本的な指示理解ができ、ピッキングや安全管理の基礎知識を持った人材のみが入社することになります。従来の未経験アルバイトへの教育コストと比較して、立ち上がりのスピードが圧倒的に早く、即戦力として計算できる点が大きなメリットです。また、最長5年(将来的にはそれ以上)の雇用が可能になるため、ノウハウの蓄積と業務の標準化が進みやすくなります。
導入効果を最大化するためのシミュレーション手順は以下の通りです。
- 新人アルバイトが独り立ちするまでにかかる平均的な教育時間と指導担当者の人件費を算出する。
- 特定技能人材を採用した場合の教育期間短縮効果(例:3ヶ月→1ヶ月)を試算する。
- フォークリフト免許など、入社後に取得させるべき資格と、その取得支援にかかる費用を予算化する。
- 既存の日本人スタッフに対し、外国人材受け入れによる業務負担軽減のメリットを説明する資料を作成する。
注意しなければならないのは、いくら試験に合格していても、現場ごとの独自ルールや「阿吽の呼吸」までは理解していない点です。即戦力という言葉に過度な期待をせず、自社特有のルールを教えるための丁寧なオンボーディング期間は必ず設ける必要があります。
特定技能「倉庫管理」で従事できる具体的な業務とは?
ピッキングから在庫管理まで、倉庫内の一連の作業が対象
特定技能「倉庫管理」で外国人が従事できる業務は、物品の入庫から出庫に至るまでの倉庫内作業全般が対象となる見込みです。これまで「単純労働」とみなされ就労ビザが下りなかった業務が合法的に行えるようになります。
具体的には、指示書に基づいた商品のピッキング、検品、梱包、ラベル貼り、仕分け作業などが含まれます。また、倉庫管理システム(WMS)の操作や、在庫の棚卸し、入出庫データの入力といった管理補助業務も対象となります。これにより、繁忙期の波動に合わせた柔軟な人員配置が可能となり、日本人スタッフをより高度な管理業務や改善活動に集中させることができるようになります。
自社の業務を特定技能人材に任せるための切り分けフローは以下の通りです。
- 倉庫内の全業務プロセスを書き出し、「定型業務」と「判断業務」に分類する。
- 定型業務の中で、特定技能人材に任せたい作業(例:ピッキング、梱包、検品)をリストアップする。
- それぞれの作業に必要な日本語レベル(読み書き、会話)と、専門スキル(端末操作、重量物取扱)を定義する。
- 日本人スタッフのみで行うべき業務(顧客対応、クレーム処理、複雑なイレギュラー対応など)を明確にする。
注意点として、配送ドライバー業務はこの「倉庫管理」区分の対象外です。トラックの運転業務を行わせたい場合は、別途「自動車運送業」分野の特定技能資格と日本の運転免許が必要になります。業務範囲の混同は不法就労となるため、厳密な線引きが必要です。
フォークリフト運転など技能を要する業務への対応
単なる手作業だけでなく、フォークリフトを用いた運搬や積み下ろし作業も、特定技能の業務範囲に含まれる予定です。
物流倉庫においてフォークリフトオペレーターの不足は深刻です。特定技能人材がフォークリフト免許を取得し、オペレーターとして活躍することで、作業効率は劇的に向上します。外国人材の中には、母国で重機操作の経験がある人も多く、日本の安全基準に合わせた講習を受けさせることで、貴重な戦力となります。
フォークリフト業務に従事させるための手順は以下の通りです。
- 採用予定者の中に、フォークリフト運転技能講習の修了者がいるか、または入社後に取得意欲があるかを確認する。
- 日本語での学科試験に不安がある場合、多言語対応している教習所をリストアップする。
- 資格取得にかかる費用(数万円程度)や講習期間中の給与扱いについて、社内規定を整備する。
- 現場での実技指導担当者(メンター)を決め、安全運転の独自ルールを教えるカリキュラムを作成する。
注意点として、フォークリフト事故は重大災害に直結します。「免許を持っているから大丈夫」と過信せず、採用直後は必ず実技チェックを行い、日本特有の指差し確認や安全確認動作が定着するまでは単独作業をさせない管理体制が必須です。
2027年の制度開始に向けて企業が準備すべきロードマップとは?
2026年中の社内体制整備と支援機関の選定が勝負
2027年4月の制度開始と同時に採用をスタートさせるためには、逆算して2025年から2026年にかけて準備を進める必要があります。直前になって動いても、優秀な人材や支援機関は他社に押さえられてしまいます。
制度のスケジュールは、2025年末に閣議決定、2026年に関連省令の改正と試験制度の整備、そして2027年に受け入れ開始という流れが予想されます。特に重要なのは、受け入れ企業に課される「支援体制」の構築です。特定技能1号の外国人には、入国前のガイダンス、生活オリエンテーション、公的手続きの同行など、10項目の義務的支援が必要です。これらを自社で行うか、登録支援機関に委託するかを早期に決定し、予算化しておく必要があります。
準備のための年間スケジュール案は以下の通りです。
- 2025年後半:特定技能制度の基本理解、社内プロジェクトチームの立ち上げ、採用予定人数の策定。
- 2026年前半:登録支援機関の情報収集と選定、概算見積もりの取得、住居エリアの調査(通勤手段の確認)。
- 2026年後半:業務マニュアルの整備(多言語化)、日本人社員への研修(異文化理解)、求人票の作成。
- 2027年初頭:現地または国内での面接実施、雇用契約の締結、在留資格申請の準備。
注意点として、2026年度からは在留資格関連の手数料が大幅に値上げされる見通しです(更新手数料が数千円から3〜4万円へ)。このコスト増も織り込んだ上で、採用予算を組む必要があります。ギリギリの資金計画では、制度変更に対応できなくなる恐れがあります。
多言語マニュアルと安全教育の徹底的な準備
現場での混乱や労働災害を防ぐためには、言葉の壁を超えて正しく作業を伝えるためのツール作りが欠かせません。
倉庫内作業は、重量物の落下やフォークリフトとの接触など、一歩間違えば命に関わる危険があります。日本語が苦手なスタッフでも直感的に理解できる「見てわかるマニュアル」の整備は、安全配慮義務の観点からも必須です。また、業務の標準化を進めることは、外国人材だけでなく、日本人新人スタッフの教育効率化にも寄与します。
マニュアル作成と安全教育の具体的手順は以下の通りです。
- 既存の作業マニュアルから、文字情報を極力減らし、写真やイラスト主体に作り変える。
- 「止まれ」「危険」「確認」などの重要単語は、採用予定者の母国語(ベトナム語、インドネシア語など)を併記する。
- 正しい作業手順と、やってはいけない危険な作業を比較した短い動画(1分程度)をスマートフォンで撮影し、QRコードで閲覧できるようにする。
- 「指差し呼称」や「5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)」の意味と重要性を、入社時のオリエンテーションで徹底的に教育するプログラムを作る。
注意点として、翻訳アプリだけに頼ると専門用語やニュアンスが誤って伝わることがあります。安全に関わる重要な部分は、必ずネイティブスピーカーや専門知識を持つ通訳によるダブルチェックを行ってください。
採用コストと2026年以降の法改正リスクへの対策は?
在留資格更新手数料の大幅値上げを予算に組み込む
2026年度以降、在留資格の更新や変更にかかる行政手数料が、現在の数千円から数万円単位へと大幅に引き上げられることが検討されています。これを企業のコストとしてどう処理するか、方針を決めておく必要があります。
政府は「受益者負担」の観点から、在留期間更新許可申請の手数料を現在の6,000円から3万〜4万円程度へ、永住許可申請を10万円以上へと引き上げる方向で調整しています。特定技能1号は1年ごとに更新が必要になるケースも多く、数十人を雇用する場合、年間数百万円規模のコスト増となります。これを本人負担にするか会社負担にするかは、採用競争力に直結する大きな問題です。
コスト対策と運用ルールの策定フローは以下の通りです。
- 採用予定人数×更新頻度×4万円で、将来的な手数料コストを試算する。
- 手数料を「会社全額負担」「一部補助」「本人負担」のいずれにするか、経営判断を行う。推奨は福利厚生としての「会社負担」です。
- 雇用契約書や就業規則に、手数料負担に関する条項を明記する。
- 更新回数を減らすために、優良な受入れ機関(カテゴリー1・2)の認定を目指し、一度の申請で長期(5年など)の在留期間許可を得やすくする体制を整える。
注意点として、この高額な手数料を外国人本人に全額負担させた場合、実質的な手取り給与が減ることになり、より待遇の良い他社へ転職されるリスクが極めて高くなります。離職を防ぐための投資と割り切れるかが、定着の鍵となります。
登録支援機関の賢い選び方とコストコントロール
自社で支援業務を行えない場合、登録支援機関への委託が必要ですが、その費用対効果を厳しく見極める必要があります。
登録支援機関への委託費用は、一般的に外国人1人あたり月額2万円〜3万円程度が相場です。これに加え、初期費用や定期面談の交通費などがかかります。安さだけで選ぶと、形だけの支援になり、トラブル時の対応が遅れたり、法定書類の不備で企業の責任が問われたりするリスクがあります。
登録支援機関を選定する際の手順は以下の通りです。
- 物流・倉庫業界での支援実績があるか、または近接業種(製造業など)での実績が豊富かを確認する。
- 採用予定の国籍に対応したスタッフが在籍し、母国語での24時間相談体制があるかをチェックする。
- 見積もりを取り、支援内容(定期面談の頻度、公的手続きの同行範囲など)と費用の内訳を詳細に比較する。
- 「自社でできる支援(社宅の用意、生活オリエンテーションの一部)」を切り分け、委託範囲を限定することで月額費用を抑えられないか交渉する。
注意点として、登録支援機関はあくまで「支援の代行」であり、受け入れ責任の主体は企業にあります。丸投げにするのではなく、定期的に支援状況の報告を受け、自社でも外国人スタッフとコミュニケーションを取ることが、良好な関係維持には不可欠です。
離職を防ぎ「定着」させるためのマネジメント術とは?
「孤立」を防ぐ社内コミュニティとメンター制度
外国人材が早期離職する最大の原因は、給与への不満以上に「職場での孤立」や「将来への不安」です。彼らが組織の一員として認められ、安心して働ける環境を作ることが、定着率向上の絶対条件です。
倉庫作業は黙々と行う業務が多いため、コミュニケーションが希薄になりがちです。特に外国人は言語の壁もあり、悩みや体調不良を言い出せずに抱え込んでしまう傾向があります。また、日本人スタッフからの「言葉が通じない」という敬遠意識が、見えない壁を作ってしまうこともあります。これを防ぐには、意図的なコミュニティ作りと、相談しやすい環境整備が必要です。
定着支援のための具体的なアクションプランは以下の通りです。
- 日本人社員の中から「メンター(相談役)」を任命し、業務以外の生活相談にも乗れる体制を作る。メンターには手当を支給する。
- 3ヶ月に1回の法的義務である「定期面談」を形骸化させず、本人のキャリア希望や生活の悩みを丁寧に聞き取る場にする。
- 歓迎会やランチ会など、業務時間内外で日本人スタッフと交流できるイベントを定期的に開催する。
- 「やさしい日本語」を使った話し方を日本人スタッフに研修し、歩み寄る姿勢を組織全体で醸成する。
注意点として、特定技能1号の在留期間は通算5年ですが、その後のキャリアパス(特定技能2号への移行や特定活動など)を会社としてどう考えているかを早期に示すことが重要です。「5年で使い捨て」ではなく「長く活躍してほしい」というメッセージを伝えることが、帰属意識を高めます。
まとめ
2027年の特定技能「倉庫管理」分野の追加は、物流業界にとって長年の課題であった人手不足を解消する千載一遇のチャンスです。しかし、制度が始まったからといって、自動的に人が集まるわけではありません。
成功の鍵を握るのは、以下の3点です。
- 早期の準備着手:2025年中に情報収集を終え、2026年には具体的な受け入れ体制(マニュアル、支援機関、住居)を構築すること。
- 安全と安心の確保:多言語マニュアルと徹底した安全教育で事故を防ぎ、メンター制度で心の孤立を防ぐこと。
- コストとキャリアの視点:手数料値上げを見越した予算組みを行い、外国人材を単なる労働力ではなく「将来の現場リーダー」として育成する視点を持つこと。
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