地方企業が外国人材を採用・育成しても、都市へ転職されてしまう——この流れを完全に止める方法はありません。しかし、在籍期間を延ばし、次の採用につながる好循環をつくることは十分に可能です。
この記事でわかること
- 外国人材が地方から都市へ流出する実態と数字
- 2027年施行の育成就労制度が地方企業に与える影響
- 「流出を防ぐ」から「在籍期間を延ばす」への発想転換
- 今すぐ取り組める具体的な定着支援施策
- 定着支援が「人間関係への投資」である理由
なぜ外国人材は地方を離れ都市へ向かうのか?
日経新聞の報道によれば、技能実習から特定技能1号へ移行した144,402人のうち、47,432人(32.8%)が県境を越えて転出しています。3人に1人が別の都道府県へ移動している計算です。
青森・島根など8県においては、技能実習を終えた外国人材の半数以上が他の都道府県へ移動しており、地方の人手不足に深刻な影響を与えています。流入超過の上位は東京都(27.4%)、愛知県(10.4%)、大阪府(6.8%)です。上位3都府県だけで全体の約半数を吸収しています。
宮崎県でも2024年10月時点の外国人労働者数は8,515人(前年比1,419人増・過去最高)に達していますが、専門家は「給与の高い都市部への流出」を懸念しています。実際に宮崎県で就労したインドネシア人実習生が「最初は宮崎についてわからず、東京のイメージしかない」と語るように、そもそも地方への就労自体が想定外であるケースも少なくありません。
外国人材が都市を目指す主な理由は、以下の3つです。
賃金格差:都市部は時給・月給水準が高く、母国への送金額を最大化しやすい環境にあります。送金は外国人材が日本で就労する最大の動機の一つであり、賃金差への感度は非常に高いです。
同郷コミュニティの充実:出身国のコミュニティや母国語の情報が都市部に集中しており、生活の安心感が根本的に異なります。「知り合いが近くにいる」という事実は、孤独になりやすい外国人材にとって、賃金と同等かそれ以上の重みを持つことがあります。
産業・キャリアの多様性:都市では職種の選択肢が広く、スキルアップの機会も豊富です。技能実習や特定技能で得たスキルをより高く評価してくれる職場が都市に集まりやすい構造が、流出を加速させています。
これらの「引力」は、地方の単一企業がいかに努力しても、完全に打ち消すことはできません。それが現実です。だからこそ、「防ぐ」から「延ばす」へ、戦略の軸を変えることが重要です。
育成就労制度の施行で地方企業の何が変わるのか?
2027年4月、技能実習制度は廃止され、新たに「育成就労制度」が施行されます。この制度の最大の変更点が転籍の自由化です。
現行の技能実習制度では転職が原則禁止されていましたが、育成就労制度ではおおむね1〜2年の就労と日本語能力・技能の習得を条件に、同職種内での転籍が認められます。「地方で育ててから都市で稼ぐ」という人材流出の構造が、制度的に後押しされる形になるのです。
制度の目的そのものも変わります。技能実習制度の建前は「国際貢献」でしたが、育成就労制度は「人手確保」を明示的な目的として掲げています。これにより外国人材の権利意識が高まり、劣悪な処遇や定着支援が不十分な職場からは、より積極的に転籍が起きやすくなると考えられます。
国は都市集中への対策として、育成就労の転職者の割合を6分の1以下に制限する措置を設けています。また、優良かつ過疎地域などの指定区域に所在する企業には受け入れ人数枠の特例措置も盛り込まれています。しかし根本的な流出構造が変わるわけではありません。
2027年の施行まで時間的な猶予はあります。しかし、制度移行に合わせて対応策を講じ始めるのでは遅すぎます。今から定着支援の仕組みを整えておくことが、制度変更後の競争力に直結します。育成就労から特定技能への移行条件も確認しながら、受け入れ体制の全体像を見直しておくことをおすすめします。
「流出を防ぐ」から「在籍期間を延ばす」へ発想を変えることが重要ではないか?
ここで重要な視点の転換があります。
外国人材の都市移動を「阻止」しようとするのは、制度的にも、個人の選択の自由という観点からも、現実的ではありません。しかし、在籍期間を延ばすことは可能です。定着支援の充実により、外国人材が「もう少しここで働き続けたい」と思える環境を整えることが、地方企業に求められる本質的な戦略です。
在籍期間が延びると、次のような好循環が生まれます。
- 育成コストの回収が進み、採用投資の費用対効果が改善する
- 熟練スタッフとして現場の中核を担うようになる
- 次に入ってくる外国人材のリーダー・先輩役を自然に果たすようになる
- 「この会社で働いてよかった」という口コミが出身国・コミュニティに広がる
特に重要なのが、3番目のリーダー機能です。定着支援が機能している企業では、先輩外国人スタッフが新しい外国人材の受け入れや生活サポートを担うようになります。これは企業の受け入れ体制を強化するだけでなく、外国人材同士のコミュニティ形成にも寄与し、職場全体の雰囲気改善にもつながります。
また、「2〜3年で去っていく人材」ではなく「5年・10年と在籍してくれる人材」が生まれれば、その人材が担う役割の深さも変わります。管理職候補・技能指導員・通訳サポートなど、日本人スタッフでは代替しにくい機能を外国人材が担えるようになり、組織としての競争力が根本から変わります。
どのような定着支援が効果的なのか?
定着支援は「コストがかかる」というイメージを持たれがちですが、コストへの投資であると同時に、人間関係への投資です。外国人スタッフ1名が離職した場合のコストは、採用費・教育費の再負担を合算すると平均80万〜150万円にも上るとされています。定着支援への投資は、その損失を防ぐ合理的な経営判断でもあります。
生活基盤の整備から始める
外国人材が地方で安心して生活できる基盤を整えることが、定着の出発点です。入居可能な住居の紹介、銀行口座・携帯電話の手続きサポート、地域のゴミ出しルールや公共交通機関の案内など、「生活の立ち上げ」を丁寧にサポートすることが重要です。
特に地方では、外国人材が自力で生活インフラを整えることが難しいケースがほとんどです。コンビニや公共交通機関が少なく、生活情報へのアクセスが限られる環境では、企業が生活面のサポート役を担うことが実質的な条件になります。
宮崎県えびの市の農園事例では、経営者が「お子さんと同じつもりで、対等に付き合うことが大切」と語っており、生活面のサポートが信頼関係の基盤となっていることがわかります。制度や給与だけでなく、「人として向き合う」姿勢が定着率に直結しています。
日本語学習への投資が定着率を高める
育成就労制度では日本語学習が義務化されますが、それ以前から日本語教育に投資している企業は定着率が高い傾向にあります。業務に直結した日本語を学ぶことで、コミュニケーションエラーが減り、外国人材が自信を持って業務に取り組めるようになります。
日本語力の向上は業務効率の改善にとどまりません。職場での人間関係が豊かになり、孤立感が解消されることで、在籍継続のモチベーションにつながります。また、日本語でのコミュニケーションが深まることで、外国人材が「自分はこの職場に必要とされている」という実感を持ちやすくなります。
日本語学習管理の仕組みを社内で整備することは、中長期的な定着率向上の鍵です。学習の進捗を可視化し、企業が積極的に関与する姿勢を示すことが、外国人材への「投資しています」というメッセージになります。
キャリア対話で「ここで頑張る理由」をつくる
外国人材が「将来のビジョン」を企業の中で描けるかどうかは、定着に大きく影響します。定期的な1on1面談を通じて、キャリアの希望・不満・生活上の困りごとを把握し、「この企業で頑張り続ける理由」を一緒につくることが大切です。
外国人社員のキャリアパス設計でも指摘しているとおり、外国人材は「評価の透明性」を強く求める傾向があります。昇給・昇格の基準を明確にし、努力が正当に評価される仕組みを整えることが、長期定着につながります。
「なんとなく頑張れば評価される」という暗黙のルールは、日本人スタッフには通じても、文化背景が異なる外国人材には伝わりにくいものです。何をどれだけ達成すれば次のステップに進めるのか、具体的な基準を言語化して共有することが、信頼と継続意欲の土台になります。
職場内コミュニティで孤立を防ぐ
孤立は離職の最大の予兆です。外国人材が職場内で孤立しないよう、懇親会・ランチ交流・チームビルディングなどの場を積極的に設けることが重要です。外国人材だけの集まりではなく、日本人スタッフとの自然な交流が生まれる場を意図的に設計することがポイントです。
SNS調査では「日本社会の排他的な論調が長期就労の意欲を削いでいる」という事実も明らかになっています。外国人材に対する無意識な偏見や差別的な言動が、長期就労意欲を削いでいるのです。職場内での人間関係の質が定着率に直結しているという認識を、日本人スタッフ全体で持つことが重要です。
社内コミュニティの構築では、孤立を防ぐ職場設計の具体的なポイントを解説しています。外国人材が「この職場に居場所がある」と感じられる環境づくりが、定着の根幹です。
メンタルフォローで早期離職を防ぐ
地方で生活する外国人材は、精神的な孤独を抱えやすい状況にあります。家族や友人と離れた環境で、言語も文化も異なる職場に入り、生活面での不安も抱える——このストレスが蓄積すると、突然の離職につながることがあります。
定期的な面談に加え、「いつでも相談できる窓口」を設けることが有効です。担当者が外国人材のメンタル状態を把握し、早期に介入できる体制が、突然の離職を未然に防ぎます。OJTと日本語教育の融合の観点からも、業務と生活の両面でフォローアップする仕組みが、定着率の向上に貢献します。
「地方で働いた経験」をプラスにするために企業ができることとは?
最終的に外国人材が都市へ移動したとしても、「この会社・この地域で働いてよかった」と思ってもらえるかどうかが重要です。
ポジティブな離職体験は、次の採用に活きます。出身国コミュニティへの口コミ、帰国後のリファラルネットワーク、そして「あの企業は良い職場だった」という評判が、次の外国人材の採用を後押しします。外国人材の採用チャネルとして、既存スタッフからの紹介が最も定着率が高いとされているのも、こうした背景があるためです。
一方、劣悪な環境で外国人材を消耗させた場合、その評判はSNSを通じて瞬く間に広がります。出身国のコミュニティにリアルタイムで情報が共有される現代では、一人の悪い体験が数十人分の採用機会損失につながりかねません。
「この地方の企業で働いた期間が、自分の人生のプラスになった」——そう感じてもらえるかどうかは、企業の定着支援の質に直結しています。資格取得の支援、スキルアップの機会提供、日本語能力の向上支援など、「この企業にいたからこそ成長できた」という実績をつくることが、長期在籍と良好な離職体験の両方をもたらします。
定着支援は、現在在籍する外国人材のためだけでなく、未来の採用を守る長期投資でもあります。外国人材の定着支援完全ガイドも参考に、採用から定着・離職までの全体像を整理しておくことをおすすめします。
まとめ:定着支援は「人間関係への投資」である
外国人材が地方から都市へ移動することを完全に防ぐ手立てはありません。しかし、在籍期間を延ばし、その時間を企業にとっても外国人材にとっても豊かなものにすることは、確実にできます。
定着支援が充実している企業では、在籍年数が長くなり、次に入ってくる外国人材のリーダーとして機能するスタッフが育ちます。そのリーダーが職場文化をつくり、採用力を高め、組織を強くしていきます。たとえ数年後に都市へ転職したとしても、「あの会社は良かった」という評判が採用ブランドを守り続けます。
定着支援はコストへの投資だけでなく、人間関係構築への投資です。生活基盤のサポート・日本語教育・キャリア対話・職場内コミュニティの形成——これらの積み重ねが、外国人材に「もう少しここにいたい」と感じさせる職場をつくります。
2027年の育成就労制度施行を前に、今こそ定着支援の仕組みを整える時期です。制度変更への対応と定着支援の両輪で、外国人材採用の戦略を見直してみてください。特定技能の完全ロードマップもあわせて確認し、採用から定着までの全体設計を今から始めましょう。
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