特定技能「航空」は、空港グランドハンドリング業務と航空機整備業務の2区分で外国人材を受け入れられる在留資格です。2026年に入って制度が大きく動きました。1月23日改正の分野別運用方針で受入れ見込数が4,400人から4,900人へ引き上げられ、8月1日からは空港グランドハンドリングの対象業務に旅客ハンドリング・機内食等の運搬・航空燃料取扱の3業務が追加されています。試験の学習用テキストも改訂版に差し替わり、旧情報のまま採用計画を組んでいる企業は、要件と教材の両方を確認し直す必要があります。
この記事でわかること
- 2026年8月に追加された3業務を含む、特定技能「航空」の対象業務の全体像
- 受入れ見込数4,900人と充足率52.6%から読み取れる、採用枠の残り状況
- 協議会加入のタイミングなど、受け入れ企業に課される6つの条件
- 航空分野だけに認められている「在籍型出向」の使い方と制限
- 技能評価試験・日本語要件の最新基準と、採用〜定着までの実務フロー
特定技能制度そのものの基礎知識は特定技能のすべてを網羅する完全ロードマップで解説しています。本記事は航空分野に絞り、2026年時点の一次情報にもとづいて制度・要件・試験・採用実務を整理します。
特定技能「航空」とはどのような制度か
空港グランドハンドリング業務の対象範囲【2026年8月に3業務追加】
空港グランドハンドリングは、航空機が到着してから出発するまでの地上支援作業全般を担う区分です。2026年1月23日改正の分野別運用方針では、従事できる業務が次の7つと明記されました(出典:法務省ほか「航空分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」令和8年1月23日改正)。
- 航空機地上走行支援業務(マーシャリング、けん引など)
- 手荷物・貨物取扱業務
- 手荷物・貨物の航空機搭降載業務
- 航空機内外の清掃整備業務
- 旅客ハンドリング業務(2026年8月1日から試験対象)
- 機内食等の運搬・搭降載業務(同上)
- 航空燃料取扱業務(同上)
後半の3業務は従来の運用にはなかった追加分で、8月1日以降の試験から出題範囲に加わりました。1号は「社内資格等を有する指導者やチームリーダーの指導・監督の下で行う」ことが前提です。なお、事務作業や整理整頓・除雪など、日本人従業員が通常あわせて行う関連業務に付随的に従事することは認められています。
航空機整備業務の対象範囲
航空機整備は、運航整備・機体整備・装備品・原動機整備などにおける機体・装備品・部品の整備業務が対象です。受け入れられるのは、航空法にもとづく国土交通大臣の認定を受けた航空機整備等に係る事業場を有する事業者、またはその事業者から業務委託を受けた事業者に限られます。整備は安全性に直結するため、技能水準の確認がグランドハンドリング以上に厳格で、試験区分も学科・実技ともに別建てです。
特定技能1号と2号の違い
1号と2号では在留期間だけでなく、求められる技能水準・日本語水準・実務経験がいずれも異なります。特に航空機整備の2号は、評価試験ではなく航空従事者技能証明(一等・二等航空整備士、航空工場整備士など)の取得が技能水準として設定されている点が他分野と大きく違います。
| 項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
|---|---|---|
| 在留期間 | 通算5年が上限 | 更新上限なし |
| 家族帯同 | 不可 | 配偶者・子の帯同が可能 |
| 技能水準(GH) | 1号評価試験に合格 | 2号評価試験に合格 |
| 技能水準(整備) | 1号評価試験に合格 | 航空従事者技能証明の取得 |
| 実務経験 | 不要 | GH:指導しながら作業した経験/整備:専門的な知識・技量を要する作業の経験 |
| 日本語水準 | 「日本語教育の参照枠」A2.2相当以上 | 同B1相当以上 |
| 支援計画 | 必要 | 不要 |
2号の日本語水準がB1相当(おおむねJLPT N3〜N2に相当する運用力)まで引き上げられている点は見落とされがちです。長期雇用を前提とするなら、1号採用の段階から2号を見据えた育成計画を組んでおくと後の手続きが滞りません。2号移行の考え方は特定技能2号のキャリアパスと企業側のメリットでも整理しています。
受入れ枠はあとどれくらい残っているか
受入れ見込数は4,400人から4,900人へ引き上げ
航空分野の受入れ見込数は、令和6年度から令和10年度までの5年間で4,900人です。当初示されていた4,400人から、2026年1月の運用方針改正で引き上げられました。国土交通省の試算では、令和10年度に航空分野で必要となる就業者は5万1,500人、うち1万5,300人程度が不足すると見込まれています。生産性向上で2,400人程度、労働条件改善などによる国内人材確保で8,000人程度を補ってもなお、4,900人が不足するという計算です。
充足率52.6%——枠は半分近く埋まっている
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 受入れ見込数(令和6年度〜令和10年度) | 4,900人 |
| 在留者数(令和8年3月末速報値) | 2,577人 |
| 充足率 | 52.6% |
| 令和10年度に必要な就業者数 | 5万1,500人 |
| 航空分野の主な職種の有効求人倍率(令和6年度) | 3.95倍 |
令和8年3月末時点の在留者数は2,577人、充足率52.6%と、すでに枠の半分を超えています。ここで注意したいのが分野別運用方針に定められた在留資格認定証明書の交付停止措置です。受入れ見込数を超えることが見込まれる場合、国土交通大臣は法務大臣に一時的な交付停止を求めることになっています。海外からの呼び寄せは認定証明書の交付が前提のため、枠が埋まった時点で新規採用が止まるリスクがあります。数年がかりの採用計画を持つ企業ほど、前倒しで動く価値があります。
なぜ航空分野で外国人材が必要とされているのか
背景にあるのは訪日需要の回復に人員が追いついていないことです。令和4年から令和6年にかけて航空旅客数が約1.5倍に増えた一方、就業者数の増加は約1.2倍にとどまりました。政府は2030年に訪日外国人旅行者6,000万人を目標に掲げており、整備士の高齢化による大量退職も重なります。業界側も手をこまねいてはおらず、令和6年の空港グランドハンドリングの給与水準は前年比約15%上昇、航空機整備の初任給も約5%上昇しました。それでも有効求人倍率は3.95倍(令和6年度)と高止まりしています。外国人材の受け入れは「国内対策を尽くしてもなお足りない」という位置づけであることは、社内稟議の説明材料としても押さえておきたい論点です。
受け入れ企業にはどのような要件が求められるか
分野別運用方針は、航空分野の特定技能所属機関に対して次の6条件を課しています。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| ①事業者要件 | 空港管理規則にもとづく営業の承認等を受けた事業者・航空運送事業者、または航空法にもとづく認定事業場を有する事業者もしくはその受託事業者であること |
| ②協議会加入 | 航空分野特定技能協議会の構成員になること |
| ③協議会への協力 | 協議会に対し必要な協力を行うこと |
| ④調査・指導への協力 | 国土交通省またはその委託先が行う調査・指導に協力すること |
| ⑤委託先の要件確認 | 登録支援機関に支援計画の実施を委託する場合、②〜④を満たす機関に委託すること |
| ⑥実務経験証明書の交付 | 特定技能外国人から求めがあれば実務経験を証明する書面を交付すること |
協議会への加入は「在留申請の前」までに済ませる
実務でつまずきやすいのが協議会加入のタイミングです。かつては「受け入れ後4か月以内」でしたが、令和6年6月15日以降は在留諸申請時に協議会構成員であることの証明書類の提出が求められ、在留申請より前に加入を完了しておく必要があります。古い解説を参照して「入国後に手続きすればよい」と考えていると、申請そのものが進みません。会費は不要ですが事務局(国土交通省航空局)の審査に日数を要するため、内定を出す前後には着手しておくのが安全です。登録支援機関に支援を委託する場合は委託先も加入が必要です(参考:登録支援機関の要件が2027年に厳格化|企業が確認すべき7つの変更点)。
航空分野だけに認められた「在籍型出向」という選択肢
特定技能の雇用形態は直接雇用が原則で、派遣は認められません。航空分野も同様ですが、航空分野の2事業者を特定技能所属機関とする在籍型出向が認められている点が特徴です。関連企業間で業務を委託し、出向によって技能教育を行ってきた業界の実態を踏まえた措置で、グループ内の整備会社で一定期間の実務研修を積ませるといった運用が可能になります。
ただし条件は厳格です。1号の在籍型出向は1年につき通算4か月を超えない期間に限られ、出向期間中の所定内賃金等が出向元と同等以上に維持されること、出向元・出向先が適切に出向を行えることを国土交通省が事前に確認すること、支援の実施主体を事前に明確にしておくことが求められます。「グループ会社だから融通が利く」という運用は条件違反になりかねません。
報酬・法令順守・支援体制の整備
報酬は同等の業務に従事する日本人と同等額以上でなければならず、申請時には報酬に関する説明書の提出が必要です。国籍を理由とした賃金差は認められません。あわせて労働・社会保険・租税関係法令の順守体制、生活オリエンテーションや住居確保支援などの支援体制も前提になります。自社対応が難しければ登録支援機関への委託も可能ですが、日本語教育だけは委託先任せにせず自社の方針として設計しておくことが定着率に直結します。雇用管理全般は2026年6月改正の指針にも影響を受けます(参考:外国人雇用管理指針が改正|2026年6月からの3段階対応策)。
技能評価試験と日本語要件はどうなっているか
2026年8月1日から適用された新試験実施要領のポイント
航空分野の技能評価試験は、国土交通省から委託を受けた公益社団法人日本航空技術協会(JAEA)が実施しています。JAEAは2026年6月23日に新試験実施要領を告知し、令和8年8月1日以降の試験から適用されています。改定は形式的なものではなく、空港グランドハンドリング区分に旅客ハンドリング・機内食等の運搬・搭降載・航空燃料取扱の3業務が加わる実質的な出題範囲の拡大で、1号・2号の両方が対象です。
あわせて学習用テキスト「安全・品質」「空港グランドハンドリング」もrev 2.0が公開されました。旧版で学習している候補者は、追加3業務の範囲が丸ごと抜け落ちます。来日前の試験対策を送り出し機関や登録支援機関に任せている場合は、教材が改訂版に差し替わっているかを名指しで確認してください。不合格が続けば入国時期がずれ込み、配属計画そのものが後ろにずれます。
試験科目・出題形式と合格基準
試験は学科と実技の2部構成です。1号の空港グランドハンドリング区分は学科約45分・実技約30分で、学科は真偽法と選択式、実技は写真やイラストを用いた判断試験です。航空機整備区分は学科時間が長く、締結(ボルト・スクリュー、ナットの回り止め)や機械計測といった基本技術が実技の対象になります。合格基準は学科・実技それぞれ所定の正答率以上で、航空機整備の2号評価試験では65%以上と公表されています。区分・級で基準や時間が異なるため、受験させる区分の最新の実施要領を必ず確認してください。
受験料・申込方法・実施国
受験料は区分ごとに異なり、2026年8月実施の国内試験では空港グランドハンドリング1号が4,000円でした。航空機整備区分はこれより高く、開催回ごとにJAEAの開催情報で公表されるため申込前に確認してください。国内試験はJAEAの受験料納付窓口で支払ったうえで受験登録を行い、国外試験はプロメトリック経由での申込です。国内は東京・成田(千葉)・名古屋・大阪など、海外はスリランカ・ネパール・インドネシアなどで年間計画にもとづき開催されます。申込期間が1週間程度と短く定員も1会場数十名規模のため、受験機会そのものが希少資源だと考えて逆算する必要があります。
日本語要件は「参照枠A2.2相当以上」——JFT-Basicの改定にも注意
技能試験に加えて日本語能力の証明も必須です。1号に求められるのは「日本語教育の参照枠」のA2.2相当以上で、実務上は国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)のA2.2相当以上、または日本語能力試験(JLPT)N4以上の合格で満たします。2号はB1相当以上が必要です。
ここでも2026年8月に変更がありました。JFT-Basicはこれまで「A2に達しているか否か」の合否判定でしたが、8月からスコアリングが改訂され、A1・A2.1・A2.2の3段階を判定できるようになっています。従来のA2は新しいA2.2に相当し、1号の要件を満たすのはA2.2到達者のみ。A2.1は「A1には達したがA2.2に向けて学習途上」を示す段階で、要件を満たしません。スコアレポートの「A2.1」を合格と誤読するリスクがあるため、レベル表記の意味は正確に押さえておいてください。試験対策全般は「技能評価試験」「日本語能力試験」完全対策ガイドで解説しています。
✅ 無料チェックリスト
法改正への対応とあわせて、現場の定着体制は整っていますか?
外国人材が定着する職場チェックリスト20
2026年8月の業務追加のような制度変更に対応するだけでなく、採用後の定着支援体制も整えておくことが重要です。
採用から定着までどのように進めればよいか
3つの採用ルートと所要期間
| ルート | 主な手続き | 目安期間 | 航空分野での実情 |
|---|---|---|---|
| 海外からの直接採用 | 現地での技能試験・日本語試験合格→雇用契約→在留資格認定証明書交付申請→査証取得→入国 | 6か月以上 | 試験の開催国・開催時期が限られ、逆算が必須 |
| 国内在留者の採用 | 試験合格→雇用契約→在留資格変更許可申請 | 2〜4か月程度 | 留学生や他資格からの切り替えが中心 |
| 技能実習からの移行 | 技能実習2号を良好に修了→在留資格変更許可申請(試験免除) | 2〜4か月程度 | 対象は「航空機地上支援作業」修了者に限られ、母集団は極めて小さい |
3つ目のルートには注意が必要です。技能実習2号を良好に修了した人材は試験が免除されますが、航空分野でこの免除が効くのは技能実習「空港グランドハンドリング」職種のうち「航空機地上支援作業」の修了者に限られます。同じ職種でも航空貨物取扱作業・客室清掃作業からの移行は対象外で、航空機整備に対応する技能実習職種はそもそも存在しません。他分野では移行ルートが採用の主流ですが、航空分野は実績が乏しく事実上は試験ルート中心です。母集団が限られる以上、人材紹介会社や送り出し機関、教育機関との接点を早期につくることが採用成否を分けます(参考:育成就労から特定技能への移行条件とは?新制度の全容と企業の定着戦略)。
新設された「育成・キャリア形成プログラム」への対応
2026年1月改正の運用方針では、国土交通省が関係業界と協働して航空分野の「育成・キャリア形成プログラム」を策定することが明記されました。①講習受講・資格取得、②日本語能力、③マネジメント経験、④フォローアップや意欲向上策の4項目を柱に、受け入れ企業が計画的な育成・評価を行うための指針とするものです。実務的な含意は明快で、採用後の育成が「やったほうがよいこと」から「制度が前提とすること」へ移りつつあるということです。日本語能力が柱として名指しされている以上、入社時のA2.2で止まったままの運用は、2号移行でも行政の調査対応でも説明が苦しくなります。学習到達度を記録し、誰がどこまで伸びたかを示せる状態にしておくことが標準になります。
定着支援で押さえるべきポイント
試験合格時点の日本語力(A2.2=N4程度)は、日常会話の基礎はあっても、ランプエリアの安全確認や整備マニュアルの読解をカバーする水準ではありません。航空分野は制限区域内での作業制約を理解し、特殊な機材・工具を扱うことが前提です。2026年8月に追加された航空燃料取扱業務のように、誤読や聞き違いが直接重大事故につながる業務も含まれます。1号採用者に義務づけられた事前ガイダンス・生活オリエンテーションを形式的に済ませるか実効性のあるものにするかで初期定着が変わります(参考:特定技能1号外国人の定着を確実にする「事前ガイダンス」徹底解説)。
採用後も業務に直結した日本語教育を継続し、学習状況を可視化する仕組みを整えることが、安全確保と定着率向上の両面で欠かせません。この設計思想は業種を問わず共通で、特定技能「自動車運送業」外国人ドライバーの採用から定着支援まで完全ガイドや外国人材の定着支援完全ガイドでも紹介しています。
特定技能「航空」に関するよくある質問
派遣で特定技能「航空」の人材を受け入れられますか
できません。航空分野の雇用形態は直接雇用が前提です。ただし、航空分野の2事業者を特定技能所属機関とする在籍型出向は認められており、1号については1年につき通算4か月を超えない範囲で活用できます。
空港での営業承認や認定事業場を持っていない会社は受け入れできませんか
自社で承認・認定を持っていなくても、それらを有する事業者から業務の委託を受けている事業者であれば受け入れが可能です。委託関係を証明できる状態にしておく必要があります。いずれにも該当しない場合は、まず承認・認定の取得から着手することになります。
協議会への加入に費用はかかりますか
航空分野特定技能協議会の会費は不要です。ただし在留諸申請の前に加入を完了させておく必要があり、審査には日数を要します。無料だからと後回しにすると申請スケジュール全体が遅れます。
2026年8月より前に試験に合格した人材は、追加された3業務に従事できますか
従事できる業務の範囲は分野別運用方針の別表で定められ、2026年1月改正時点で7業務が明記されています。ただし既存人材の従事範囲や必要な社内訓練の扱いは個別事情で判断が分かれるため、配置変更の前に協議会事務局または管轄の地方出入国在留管理局に確認してください。
受入れ見込数の4,900人に達したらどうなりますか
国土交通大臣が法務大臣に対し、在留資格認定証明書の交付を一時的に停止するよう求めることになっています。停止後に再び人材確保の必要が生じれば交付再開が要請されます。海外からの呼び寄せが止まる可能性があるため、令和8年3月末で充足率52.6%という現状を踏まえ、余裕をもった計画が望まれます。
まとめ
特定技能「航空」は、2026年に入って要件も試験も動いた分野です。受入れ見込数は4,900人に引き上げられた一方で充足率はすでに52.6%に達し、枠が埋まれば在留資格認定証明書の交付が止まる構造を抱えています。8月1日からは空港グランドハンドリングに3業務が加わり、学習用テキストも改訂されました。協議会加入は在留申請前まで、日本語要件はA2.2相当以上、在籍型出向には期間・待遇の条件がつきます。旧情報のまま進めて申請が止まる事態を避けるため、まずは自社の採用計画を最新の運用方針・試験実施要領と突き合わせてください。そのうえで、育成・キャリア形成プログラムが示すとおり、採用後の日本語教育をどう仕組み化するかが受け入れ成否を分けます。
✅ 無料チェックリスト
定着支援、本当に機能していますか?
外国人材が定着する職場チェックリスト20
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