2026年1月23日、政府は「特定技能制度及び育成就労制度の分野別運用方針」を閣議決定しました。これにより工業製品製造業分野では、特定技能外国人を受け入れられる業務区分が10区分から17区分へ、事業所の産業分類が49分類から76分類へと大幅に拡大します(出典:経済産業省製造産業局「工業製品製造業分野の特定技能制度について」2026年3月)。改正告示は2026年5月に公布、6月に施行される見込みです。
これまで対象外だった業種の製造業にとって、今回の変更は「自社が新たに外国人材を受け入れられるようになる」転機になり得ます。一方で、受入れ可否の判断は「業務区分」と「産業分類」の両方を満たす必要があるなど、仕組みを正しく理解しないと申請でつまずきます。本記事では、経済産業省の最新資料をもとに、変更点の全体像と、企業が施行前に準備すべきことを実務目線で整理します。
この記事でわかること
- 2026年1月閣議決定で工業製品製造業分野の受入れ対象がどう拡大したか(業務区分・産業分類)
- 新たに追加された7つの業務区分と、対象に加わった主な業種
- 受入れ可否を決める「業務区分×産業分類」ダブルチェックの考え方
- 製造分野特定技能評価試験の運営変更と、証明書類の切り替え
- 2026年5月・6月のスケジュールに向けて企業が今すべき準備
特定技能「工業製品製造業分野」とは何か?
特定技能は、人手不足が深刻な産業分野で即戦力となる外国人材を受け入れるための在留資格です。工業製品製造業分野には「特定技能1号」と「特定技能2号」の2段階があり、求められる人材像と条件が異なります。
| 区分 | 求められる人材像 | 在留期間 | 家族帯同 |
|---|---|---|---|
| 特定技能1号 | 相当程度の知識・技能・経験を要する業務に従事できる人材 | 通算上限5年(原則) | 不可 |
| 特定技能2号 | 自らの判断で高度に専門的・技術的な業務を遂行できる人材(班長・職長クラス) | 上限なし(更新あり) | 可 |
キャリアパスとしては、技能実習(単能工として実習)を経て特定技能1号(多能工として複数の技能を習得)へ、さらに特定技能2号(熟練工として複数作業者のリーダー、いずれは製造現場のマネジメント層や工場長)へと進む流れが想定されています。技能実習2号を良好に修了した人材は、特定技能1号評価試験と日本語試験が免除される点も、採用実務では重要なポイントです。制度全体の流れをまず押さえたい方は、特定技能制度の全体像をまとめた完全ロードマップもあわせてご覧ください。
特定技能1号・2号の取得要件
工業製品製造業分野で就労するための要件は、1号と2号で次のように定められています。
- 特定技能1号:①製造分野特定技能1号評価試験と日本語試験(国際交流基金日本語基礎テストA2.2相当以上、または日本語能力試験N4以上)に合格する、または②業務区分に対応する技能実習2号を良好に修了する(この場合は技能・日本語の両試験が免除)
- 特定技能2号:日本国内に拠点を持つ企業の製造現場で3年以上の実務経験を証明したうえで、①製造分野特定技能2号評価試験とビジネス・キャリア検定3級(生産管理プランニングまたは生産管理オペレーション)に合格する、または②技能検定1級に合格する
新たに対象となる業種の企業にとっては、日本語試験(N4/JFT-A2.2相当)が最初のハードルになります。試験ルートの詳細は技能評価試験・日本語試験の対策ガイドで解説しています。
自社は対象になる?「業務区分」と「産業分類」のダブルチェック
工業製品製造業分野の最大の特徴は、次の2つの条件を両方同時に満たす必要がある点です。どちらか一方だけでは受入れはできません。
- ① 外国人の業務が、受入れ対象の「業務区分」に該当しているか
- ② 外国人が働く事業所が、受入れ可能な「日本標準産業分類」に該当しているか
たとえば作業内容が「機械金属加工」区分に当てはまっても、その事業所の産業分類(業種)が対象リストに入っていなければ受入れ対象外です。逆に、事業所の産業分類が対象でも、外国人が従事する業務が対象区分になければ受け入れられません。この「業務区分と産業分類が重なる部分だけが受入れ可能」という構造を理解することが、自社が対象かどうかを判断する出発点になります。
なお、業務区分に定められた業務のほか、「その業務に従事する日本人が通常従事する関連業務」(原材料・部品の調達、搬送、クレーン・フォークリフト運転、清掃・保守管理など)に付随的に従事することは認められています。
JAIMへの加入義務と名簿提出
受入れを希望する事業所は、事業所ごとに一般社団法人工業製品製造技能人材機構(JAIM)への加入申請を行う必要があります。JAIMは2025年6月25日に経済産業大臣の登録を受けた民間団体で、受入れ事業所の管理・支援や特定技能評価試験の運営を担っています。加入後は、在留諸申請の際に自社の事業所名が記載された名簿を地方出入国在留管理官署に提出します(名簿はJAIMのホームページで公表)。受入機関や登録支援機関の選定に不安がある場合は、受入機関・登録支援機関の選び方も参考にしてください。
2026年1月閣議決定による変更点は何か?
今回の変更は、生産性向上や国内人材確保の取組を行ってもなお人手不足が深刻化している産業を対象に、受入れ範囲を広げるものです。業務区分・産業分類の拡大規模は次のとおりです。
| これまで | 変更後 | |
|---|---|---|
| 業務区分(特定技能1号) | 10区分 | 17区分(+7区分) |
| 業務区分(特定技能2号) | 3区分 | 3区分(±0・従事業務の見直しのみ) |
| 産業分類(特定技能1号) | 49分類 | 76分類(+27分類) |
| 産業分類(特定技能2号) | 19分類 | 46分類(+27分類) |
業務区分:新たに7区分が追加
特定技能1号で従事できる業務区分が10区分から17区分に拡大します。新規に追加された7区分は次のとおりです。
| 業務区分 | 従事する業務の例 |
|---|---|
| 電線・ケーブル製造 | 電線・ケーブル製造 |
| プレハブ住宅製品製造 | 大工工事、タイル張り、金属プレス、建築塗装、コンクリート製品製造 ほか |
| 家具製造 | 家具手加工、家具組立て、マットレス製造、家具シート縫製 ほか |
| 定形・不定形耐火物製造 | 定形耐火物製造、不定形耐火物製造 |
| 生コンクリート製造 | 生コンクリート製造 |
| ゴム製品製造 | 成形加工、押出し加工、混練り圧延加工、複合積層加工 |
| かばん製造 | かばん製造 |
さらに、既存10区分のうち6区分(機械金属加工、電気電子機器組立て、金属表面処理、陶磁器製品製造、紡織製品製造、縫製)では、「従事する業務」の範囲そのものが拡大しています。たとえば機械金属加工区分には、電子機器組立て、プラスチック成形材料製造、アルミニウム圧延・押出製品製造などが新たに加わりました。
産業分類:対象となる業種が大きく拡大
1号を受け入れ可能な産業分類は49から76分類へ、2号は19から46分類へと、それぞれ27分類ずつ拡大します。新たに対象に加わった主な業種は次のとおりです。
- 生コンクリート製造業、耐火れんが・不定形耐火物製造業
- ゴム製品製造業
- 鋼材関連(製鋼・製鋼圧延業、鋼管製造業、磨棒鋼製造業、引抜鋼管製造業 など)
- 電線・ケーブル製造業
- 木製建築材関連(造作材製造業、建築用木製組立材料製造業 など)
- 自動車・同附属品製造業、航空機・同附属品製造業
- 家具製造業、鉄骨系プレハブ住宅製造業
- かばん製造業、こん包業
自社の業種が対象に含まれるかどうかは、日本標準産業分類のコードで正確に判定する必要があります。これまでの49分類に該当しなかった事業所でも、拡大後の76分類には該当する可能性があるため、人事・総務部門であらかじめ自社の産業分類コードを特定しておくことをおすすめします。
注意:新規追加分は「告示施行後」に受入れ可能になる
見落とされやすいのが、「区分・分類が増えた=今すぐ受入れ可能」ではないという点です。新規追加の業務区分・従事業務・産業分類については、経済産業省の改正告示が施行され、対応する特定技能評価試験が実施された段階で初めて、地方出入国在留管理官署への在留諸申請が可能になります(対応する技能実習2号を良好に修了した者については、告示が施行された段階から対象になる見込み)。準備は今から進めつつ、実際の申請は施行スケジュールに合わせる、という理解が必要です。
製造分野特定技能評価試験はどう変わるのか?
試験制度そのものにも2つの大きな変更があります。既に外国人材を雇用している企業も確認しておきたいポイントです。
- 試験実施機関がJAIMに変更:2026年4月より、これまで経済産業省が運営していた製造分野特定技能評価試験を、JAIMが試験実施機関として運営します(作問、会場手配、合否通知、証明書発行など。1号17区分・2号3区分が対象)。
- 「合格証明書」から「結果通知書」へ:2026年度以降は原則として合格証明書の発行が行われなくなり、在留諸申請では、プロメトリックのマイページから取得する「結果通知書」の提出が認められるようになります。
受験年度によって在留申請に使う証明書類が異なるため、次の表で確認してください。既存人材の在留更新を控えている企業は特に注意が必要です。
| 受験年度 | 提出する証明書類 | 取得方法 |
|---|---|---|
| 2023年度(令和5年度)以前 | 合格証明書 | JAIMから無償発行 |
| 2024・2025年度 | 合格証明書 または 結果通知書 | 合格証明書は2026年度以降発行なし/結果通知書はプロメトリックのマイページ |
| 2026年度(令和8年度)以降 | 結果通知書 | プロメトリックのマイページから取得 |
試験科目・出題形式と合格基準
製造分野特定技能1号評価試験は、CBT(コンピューターを使った試験)方式で、学科試験と実技試験で構成されます。学科試験は〇×式で試験時間は40分、実技試験は実際の作業工程や材料に関する内容を読んで正しい答えを選ぶ選択式で試験時間は40分です。合格基準は学科試験が正答率65%以上、実技試験が正答率60%以上です。試験水準は「技能実習2号修了者が受験する技能検定3級程度」が目安とされ、17区分(機械金属加工、電気電子機器組立て、金属表面処理ほか)ごとに対応業務・出題内容が異なります(出典:一般社団法人工業製品製造技能人材機構〔JAIM〕)。
受験料・申込方法・試験スケジュール
受験料は全試験区分共通で8,000円です。申込・受験はプロメトリックのシステムを通じて行い、CBTのため一定の試験期間内で日程を選んで受験します。たとえば2026年度第2回は、1号試験が2026年7月7日〜7月13日、2号試験が7月12日〜7月18日の期間で実施されました。実施回・会場はJAIMおよびプロメトリックの案内で公表されるため、採用計画に合わせて最新スケジュールを確認してください(出典:JAIM/プロメトリック)。
日本語要件(JFT-Basic・JLPT N4)
技能試験に加えて、日本語能力の証明も必要です。国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)に合格するか、日本語能力試験(JLPT)N4以上を取得している必要があります(技能実習2号を良好に修了している場合は免除)。JFT-BasicはCBT方式の選択式試験で、「文字と語彙」「会話と表現」「聴解」「読解」の4セクション・約50問を60分で解答し、250点満点中200点以上(CEFR A2相当)で特定技能1号の日本語要件を満たします(出典:国際交流基金)。
2号試験に不合格でも在留を続けられる特例
特定技能1号の通算在留期間は原則5年が上限ですが、特定技能2号評価試験等(評価試験、ビジネス・キャリア検定3級、技能検定1級のいずれかのルート)に不合格となった1号外国人のうち、移行に必要な全試験で合格基準点の8割以上を取得しているなど一定の要件を満たす人材は、通算在留期間が特例で6年まで延長されます。企業側にも「引き続き雇用する意思」や「合格に向けた指導・支援体制」が求められます。優秀な人材が2号移行の試験につまずいた場合の救済措置として押さえておきましょう。
✅ 無料チェックリスト
受入れ対象拡大に備えるだけでなく、受入体制は整っていますか?
外国人材が定着する職場チェックリスト20
産業分類の確認と並行して、外国人材が定着する受入れ体制の抜け漏れも確認しておきましょう。
施行までに企業は何を準備すべきか?
今後のスケジュールは次のとおりです。新規に対象となる業種の企業にとっては、施行前の2026年5月「事前申請開始」が最初の実務的な山場になります。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2026年5月 | 経済産業省が改正告示を公布/JAIMで新規追加産業分類の事業所の事前申請を開始 |
| 2026年6月 | 改正告示施行(受入れ対象事業所の拡大が正式に有効化) |
施行のタイミングでスムーズに動けるよう、今のうちに準備しておきたいのは次の3点です。
- 自社の産業分類コードが新規追加リストに含まれるか確認する(既存の49分類に該当しなかった場合でも、拡大後の76分類に該当する可能性があります)
- JAIMへの加入要件と手続きを確認する(未加入の場合は事業所ごとの加入申請が必要です)
- 1号特定技能外国人支援計画・雇用契約書のひな形を整備するとともに、採用予定人材の日本語学習(N4/JFT-A2.2相当)の準備を早めに始める
特に日本語要件は、内定から就労開始までのリードタイムを左右します。採用してから慌てるのではなく、受入れ体制づくりと並行して日本語教育の仕組みを整えておくことが、施行後の立ち上がりスピードを大きく変えます。
(参考)育成就労制度との関係はどうなるか?
技能実習制度は令和6年の法改正で発展的に解消され、2027年(令和9年)4月に「育成就労制度」が新設される予定です。工業製品製造業分野では、育成就労外国人が従事できる業務区分は特定技能1号と同じ17区分で、育成就労と特定技能1号の産業分類・業務区分の範囲は統一されています(特定技能1号と2号では対象範囲が異なる点は従来どおり)。技能実習からの切り替えを検討している企業は、この範囲統一で制度間の移行がシンプルになる点を押さえておくとよいでしょう。詳しくは育成就労から特定技能への移行条件で解説しています。
まとめ:受入れ対象拡大を機に、早めの準備を
工業製品製造業分野の特定技能制度は、2026年1月の閣議決定により、業務区分(10→17区分)と産業分類(1号49→76分類、2号19→46分類)の両面で受入れ対象が大きく広がります。ただし受入れ可否は、①外国人の従事する業務が対象の業務区分に入っているか、②事業所の産業分類が対象リストに入っているか、という2条件のダブルチェックで決まります。
これまで対象外だった企業でも、2026年6月の施行後は対象になる可能性があります。自社の産業分類コードの確認、JAIMへの加入準備、そして採用予定人材の日本語教育の仕組みづくりを、施行前から早めに進めておくことをおすすめします。制度対応と定着支援を両輪で整えることが、外国人材を早期に戦力化する近道です。
✅ 無料チェックリスト
制度改正への対応とあわせて、定着体制も確認しましょう。
外国人材が定着する職場チェックリスト20
採用準備だけでなく、就労開始後に外国人材が定着する仕組みも整っていますか?
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ここまで見てきたとおり、特定技能「工業製品製造業」の採用では、技能評価試験と日本語試験の両方をクリアする必要があり、試験合格はスタートラインにすぎません。製造現場では、作業手順書の読解、品質・安全に関する指示の理解、報連相など、N4レベルの日本語だけでは対応が難しい場面が数多くあります。「試験に受かること」と「現場で安全に働き、定着すること」の間を埋める教育設計こそが、受入れ対象拡大を成果につなげる鍵です。
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