2026年6月14日、外国人材の在留管理に関わる大きな制度変更が始まります。在留カードとマイナンバーカードを一体化した「特定在留カード」の運用開始です。この変更により、これまで多くの企業が当然のように行ってきた「カードを目視して在留期間を確認する」という方法が、事実上使えなくなります。特定技能や育成就労など、外国人材の採用・活用に力を入れている企業ほど実務への影響は大きく、2026年6月を前に準備を始めることが不可欠です。
この記事でわかること
- 「特定在留カード」とは何か、2026年6月に何が始まるのか
- 在留期間の「目視確認」ができなくなる理由と企業が取るべき対応
- 採用時・在籍中・更新時の確認フローをどう見直すか
- 外国人スタッフへの制度周知・手続きサポートのポイント
- 特定技能・育成就労外国人を雇用する企業が特に注意すべきこと
- 今すぐ着手すべき具体的な準備チェックリスト
「特定在留カード」とは何か?2026年6月に何が始まる?
特定在留カードとは、在留カード(または特別永住者証明書)にマイナンバーカードの機能を付加した、新しい統合型のカードです。出入国在留管理庁は2026年6月14日より交付申請の受付を開始し、地方出入国在留管理局では翌開庁日の6月15日(月)から窓口申請が可能になります。
なぜ在留カードとマイナンバーカードを統合するのか
これまで日本に中長期滞在する外国人は、在留カードとマイナンバーカードの2枚を別々に保有・管理する必要がありました。在留期間の更新手続きは出入国在留管理局で行い、マイナンバー関連の手続きは市区町村窓口で別途行う必要があったため、外国人本人にとって大きな負担でした。特定在留カードはこの2枚を1枚に統合することで、在留許可の更新と同時にマイナンバー関連の手続きも完了できるようにし、外国人の利便性向上と行政手続きのワンストップ化を実現する目的があるようです。
対象は住民基本台帳に記録されている中長期在留者または特別永住者です。企業が雇用する外国人材の大半——特定技能、技人国、育成就労、留学後の就労ビザなど——が対象に含まれます。自社の外国人スタッフが対象かどうかを把握し、制度変更に備えた管理フローを整備しておくことが求められます。
申請は「任意」——それでも混在期間への備えが必要な理由
特定在留カードへの切り替えは強制ではなく、任意です。今持っている在留カードは有効期限が切れるまで引き続き使用できます。そのため当面の間、「特定在留カードを持つ外国人」と「従来の在留カードを持つ外国人」が職場内に混在することになります。
この混在期間が企業にとって最も対応の難しい時期にあることが考えられます。従来のカードは目視確認で、特定在留カードはアプリで読み取る、という2種類の確認方法を状況に応じて使い分ける必要があります。なお、オンライン申請を選択した場合は特定在留カードの交付申請が受け付けられないため、窓口申請が前提となる点も覚えておきましょう。
なぜ「目視だけでの在留期間確認」ができなくなるのか?
特定在留カードの導入で企業実務が最も大きく変わるのが、在留期間の確認方法です。従来の在留カードには表面(券面)に在留資格・在留期間・在留期限が明記されており、カードを目視するだけで確認できました。しかし特定在留カードでは、こうした情報がICチップ内に格納される形式に変わります。
読み取りシステムの導入が事実上必須になる
ICチップ内の情報を確認するには、出入国在留管理庁が提供する「在留カード等読取アプリケーション」(スマートフォン対応)の利用が必要です。企業が在留資格の有効性を適切に確認するためには、このアプリまたは同等の業務用読み取りシステムを整備することが求められます。
不法就労防止の観点から、目視確認だけでは在留資格の確認義務を十分に果たしたとみなされないリスクが高まります。採用時・定期確認時・更新確認時のいずれのタイミングでも、特定在留カードを持つ外国人に対してはアプリによる読み取りを確認フローに組み込む必要があります。システムの選定・導入・研修には時間がかかるため、今から準備を始めることをお勧めします。
「部分失効」という新たなリスクに備える
特定在留カードには、従来の在留カードにはなかった「部分失効」という概念が生まれます。在留資格の有効期限がまだ先であっても、マイナンバーカードとしての有効期限が切れた場合、カードの一部機能が停止します。たとえば10年有効の永住資格を持つ外国人でも、マイナンバーカード部分の更新を怠ると機能が失効します。
「在留期限はまだ先なのに、なぜ手続きが必要なのか」と外国人スタッフが戸惑うケースが想定されます。企業として、在留資格の期限とマイナンバーカード機能の有効期限という2種類の期限を個別に管理し、それぞれの更新時期が近づいたら事前に本人に周知する仕組みが不可欠です。
企業の在留資格確認フローはどう変わる?
特定在留カードの普及に伴い、採用・在籍中・更新の3つの局面でそれぞれ企業の確認フローを見直す必要があります。制度の移行期には従来カードと特定在留カードが混在するため、両方のケースに対応できる体制を早めに整えましょう。
採用・入社時の本人確認フロー
採用面接や内定後の書類確認の場で、特定在留カードを持参した候補者がいる場合、従来の目視確認だけでは在留期間を把握できません。スマートフォンや専用端末を活用した読み取り確認に切り替える必要があります。担当者が当日困らないよう、事前に端末の準備とオペレーション研修を済ませておきましょう。
カードの読み取りに際しては、従業員の同意取得と確認記録の保管を社内ルールとして定めることも重要です。本人確認書類としての取り扱い方針も、マイナンバー情報の管理規程と整合させて更新する必要があります。特に特定在留カードはマイナンバーカードを兼ねているため、従来の在留カードコピー保管とは異なる個人情報管理の視点が求められます。
在籍中の定期確認と記録の整備
雇用中の外国人スタッフについても、定期的な在留資格・在留期間の確認が求められます。これまでコピーを取るだけで対応していた企業も、今後は読み取りシステムとの組み合わせが必要です。特定在留カードと従来の在留カードが混在する移行期間中は、確認方法のルールを明文化して担当者全員が同じ手順を踏めるようにしましょう。
確認の記録は、不法就労防止義務を果たした証拠にもなります。確認日時・確認者・確認方法を残す統一書式を整備し、定期確認のたびに記録が積み上がる仕組みを作ることをお勧めします。この記録体制は、法務省や労働基準監督署からの問い合わせがあった際にも役立ちます。
有効期限管理のデジタル化が急務
特定在留カードでは、在留資格の期限とマイナンバーカード機能の有効期限という2種類の期限を管理する必要があります。エクセルなど手動管理では見落としのリスクが高まるため、期限が近づいたらアラートが出るシステムへの移行を検討することをお勧めします。外国人スタッフが複数いる企業では特に、個別の期限管理が抜け漏れると企業の法令遵守義務に直接影響します。管理システムの選定・導入にも一定の準備時間が必要なため、今から情報収集を始めておくことが重要です。
外国人スタッフへの周知・サポートはどうすればよい?
特定在留カードの申請は任意ですが、制度そのものへの理解促進と手続きのサポートは企業として積極的に行うことが望ましいです。特に日本語能力が限られた外国人スタッフにとって、新しい行政手続きは大きな不安要素になります。適切な情報提供とサポートが、信頼関係の維持と職場定着率の向上に直結します。
多言語での制度説明と書類サポート
「特定在留カード」という概念自体が新しく、日本語に不慣れな外国人スタッフには制度の理解が難しい場合があります。英語・中国語・ベトナム語・インドネシア語など、スタッフの母国語に合わせた制度説明を準備することが効果的です。出入国在留管理庁の公式サイトには今後多言語の案内資料が公開される予定ですが、それを待たずに社内で噛み砕いた説明資料を用意することをお勧めします。申請書類の記入方法についても、担当者が一緒に確認する機会を設けることで、スタッフの不安を大きく軽減できます。
申請手続きへの同行・スケジュール配慮
特定在留カードの交付申請は地方出入国在留管理局の窓口で行うため、業務時間中の外出が必要になります。外国人スタッフが申請に行けるよう、勤務スケジュールの調整や有給取得のサポートを行いましょう。窓口での手続きについても、日本語でのやり取りに不安がある場合は、日本語が得意な同僚や担当者が同行できる体制を整えることをお勧めします。
特定技能外国人を受け入れる企業には法令上の支援義務がありますが、それ以外の在留資格の外国人に対しても、こうした自発的なサポートが職場への帰属意識を高め、離職率の低下につながります。
特定技能・育成就労外国人を雇用する企業が特に注意すべき点は?
特定技能や育成就労制度を活用して外国人を雇用している企業は、在留資格管理に関して法令上の義務が課されています。特定在留カードの導入により、これらの義務の履行方法にも変化が生じます。制度対応を後回しにせず、早めに準備を進めることが求められます。
特定技能所属機関としての支援義務と在留管理の関係
特定技能外国人を受け入れる企業(特定技能所属機関)は、1号支援計画に基づく支援義務を負っており、定期的な面談・生活支援・在留諸手続きへの情報提供と補助が求められます。特定在留カードの導入後は、この在留管理義務の履行においてICチップ読み取りシステムの活用が事実上必要になります。支援計画の中に、特定在留カードへの移行サポートを明示的に組み込んでおくことをお勧めします。特定技能制度全体の枠組みについては、特定技能完全ロードマップでも詳しく解説しています。
育成就労から特定技能への移行時、手続きが重なるリスク
2027年からの本格施行が予定される育成就労制度では、修了後に特定技能1号への移行が可能になります。この移行の際に在留資格変更申請と特定在留カードの交付申請が重なるケースが生じる可能性があります。手続きが複数同時進行することで、必要書類の準備・窓口の混雑・審査期間の長期化などが重なり、スタッフの就労継続に支障をきたすリスクがあります。
企業として移行時の手続きフローを事前に整理しておくことが重要です。移行要件の詳細については、育成就労から特定技能への移行条件もあわせてご覧ください。
日本語サポートが在留管理の円滑化に直結する
特定在留カードに関する申請書類・窓口対応・制度説明はすべて日本語です。日本語能力が十分でない外国人スタッフにとって、新たな行政手続きへの対応は大きな負担です。企業として日本語学習を継続的に支援する環境を整えることは、在留管理の円滑化にとどまらず、職場コミュニケーションの改善・業務効率の向上・離職率の低下にも貢献します。
特定技能の試験対策・生活オリエンテーション・ビジネス敬語まで一体的に学べる日本語学習環境を整えることは、制度変更への対応力を高めながら、外国人材の戦力化を同時に進める効果的な方法のひとつです。
いま何から準備すればよいか?企業向けチェックリスト
特定在留カードの運用開始まで、残り少ない時間しかありません。以下のチェックリストを参考に、優先度の高い準備から順番に着手してください。まずは「読み取りシステムの選定・導入」と「社内フローの見直し」から始めることをお勧めします。
システム・ツール整備
- 在留カード等読取アプリケーションの導入・検証:出入国在留管理庁が提供するスマートフォン用アプリを事前にインストールし、採用担当者が操作方法を習熟しておく。在留カードの種類(従来型・特定在留カード)に関わらず読み取りができることを確認する
- 有効期限管理システムの整備:在留資格の期限とマイナンバーカード機能の有効期限を個別に管理できるシステムまたは管理台帳を準備する。期限が近づいた際のアラート機能があるものが望ましい
- マイナンバー情報管理規程の更新:特定在留カードはマイナンバーカードを兼ねるため、既存の特定個人情報取扱規程と整合させる。コピーの取り方・保管方法・廃棄手続きの確認が必要
社内ルール・フロー整備
- 採用時・定期確認時の新確認フロー策定:特定在留カードと従来在留カードの混在期間を想定した確認手順を明文化し、全担当者に周知する
- 確認記録の書式整備:確認日時・確認者・確認方法を記録する書式を統一し、定期確認のたびに記録が積み上がる仕組みをつくる
- 担当者へのオペレーション研修:人事・労務担当者が新システムの操作方法と新確認フローを十分に習熟できる研修機会を設ける
スタッフ対応・支援体制
- 外国人スタッフへの多言語周知:制度の概要・申請の任意性・会社のサポート方針を、スタッフの母国語で分かりやすく伝える説明資料を準備する
- 申請サポート体制の構築:窓口申請への同行支援・書類準備の補助ができる担当者または社内通訳を確保する
- 特定技能外国人の1号支援計画の更新:新制度への対応内容を支援計画書に反映し、支援記録との整合性を確認する
まとめ
在留カードとマイナンバーカードを統合した「特定在留カード」は、2026年6月14日から運用が始まります。外国人本人の利便性は高まる一方で、企業の人事・労務部門には「目視確認からICチップ読み取りへの移行」「2種類の有効期限の個別管理」という新たな対応が求められます。
特定技能・育成就労など外国人雇用が増える中で、在留管理の整備は法令遵守だけでなく、外国人スタッフへの信頼関係構築にも直結します。制度変更を機に、読み取りシステムの導入・管理フローのデジタル化・日本語サポート体制の充実を一体的に進めることが、持続的な外国人材活用への近道です。
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