育成就労制度で、受け入れ企業が登録日本語教員を自社で雇う義務はありません。
ただし、制度が義務づける日本語講習(A1相当講習とA2目標講習、各100時間以上)は、教える主体が限られています。原則は文部科学大臣の認定を受けた認定日本語教育機関の「就労のための課程」で、当分の間の経過措置として登録日本語教員による講習も認められます。資格のない講師の授業や、録画教材を見るだけのeラーニングは、この100時間に数えられません。この記事では、2027年4月1日の施行に向けて、講習の中身と登録日本語教員が必要になる場面を、出入国在留管理庁と文部科学省の公表資料(2026年10月8日確認)をもとに整理します。
- 育成就労で登録日本語教員が必要になる場面と、必要にならない場面
- 100時間の日本語講習(A1相当講習・A2目標講習)の時期・内容・費用負担
- 誰が教えた時間なら100時間に数えられるか(講師・授業形式別の一覧)
- 日本語教師が育成就労の講習で教えるために必要な資格
- 2027年4月の施行までに企業が決めておくこと
育成就労に登録日本語教員は必要か?
育成就労の日本語講習は、認定日本語教育機関の「就労のための課程」で受けさせるのが原則で、登録日本語教員による講習は当分の間の経過措置として認められています。企業が登録日本語教員を直接雇う必要はありませんが、認定日本語教育機関以外に講習を任せる場合は、教える人が登録日本語教員でなければ受講時間として認められません。経過措置の期間について、出入国在留管理庁は「施行後5年間を目途」と説明しています。
出入国在留管理庁の運用要領は、A1相当講習について「文部科学大臣の認定を受けた認定日本語教育機関の『就労のための課程』が基本ですが、当分の間の経過措置として、文部科学大臣の登録を受けた登録日本語教員の資格を持つ者による講習でも可としています」と書いています(育成就労制度運用要領 第4章、令和8年8月5日更新)。根拠は育成就労法施行規則の附則第3条で、期限の日付は定められていません。
登録日本語教員による講習の4つの要件
登録日本語教員による講習が認められるには、次の4つをすべて満たす必要があります。
- 講習の目標がA1相当(A2目標講習はA2相当)であること。分野別運用方針でより高い水準が定められている分野は、その水準
- 講習の時間が100時間以上であること
- 登録日本語教員1人に対して、同時に受講する生徒が20人以下であること
- 対面以外で行う場合は、オンラインで同時かつ双方向に行われること
人数の上限は「20人以下」で、1クラスの人数ではなく教員1人あたりの同時受講者数です。21人を同時に教えるなら、登録日本語教員が2人必要になります。
認定日本語教育機関の現在の数
原則とされる認定日本語教育機関のうち、「就労のための課程」を置く機関はまだごく少数です。出入国在留管理庁の「日本語教育機関の講習提供状況一覧表(令和8年6月時点)」に掲載されている就労課程を持つ認定校は3校です。一方、登録日本語教員は20,075名が登録されています(令和8年8月21日時点、文部科学省「登録日本語教員の登録等に関すること」)。施行当初は、多くの企業にとって登録日本語教員による講習が現実的な選択肢になります。
育成就労の100時間の日本語講習とは何か?
育成就労の日本語講習は、就労開始前の「A1相当講習」と、3年間の育成就労期間中の「A2目標講習」の2つで、それぞれ100時間以上です。A1相当講習は受講が必須で、A2目標講習は受け入れ企業に受講の機会を提供する義務があります。どちらも、対応する水準の日本語試験にすでに合格している人には不要です。
| A1相当講習 | A2目標講習 | |
|---|---|---|
| 時間数 | 100時間以上 | 100時間以上 |
| 時期 | 就労開始前(入国後講習の日本語科目として実施。入国前に行うことも可能) | 3年間の育成就労期間中(目標の日本語試験を受けるまで) |
| 義務の内容 | 受講させること | 受講できるよう必要な措置を講じること |
| 不要になる場合 | A1相当以上の試験(JFT-Basic、JLPT N5など)に合格している | A2相当以上の試験に合格している |
| 根拠 | 育成就労法施行規則 第13条第2項第7号ヘ | 同 第13条第2項第8号 |
出典:育成就労法施行規則(e-Gov法令検索)、出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」Q63〜Q69。分野によっては、より高い水準や長い時間が上乗せされています。
A1相当講習の時期と入国後講習の時間数
A1相当講習は、入国後講習の日本語科目として、就労を始める前に行います。入国後講習は日本語、生活一般の知識、法的保護に必要な情報、技能に関する知識の4科目で構成され、総時間数はA1相当試験の合否と入国前講習の有無で変わります。
| 入国後講習の総時間数 | 入国前講習なし | 入国前講習あり(過去6か月以内) |
|---|---|---|
| A1相当試験に未合格 | 320時間以上 | 160時間以上 |
| A1相当試験に合格済み | 220時間以上 | 110時間以上 |
出典:育成就労法施行規則 第13条第2項第7号、出入国在留管理庁「育成就労制度の関係省令等について(概略図)」。時間数は4科目の合計で、日本語だけの時間ではありません。
110時間から320時間という数字は入国後講習全体の時間で、このうち日本語のA1相当講習が100時間以上を占めます。A1相当試験に合格している人も入国後講習で日本語の科目は受けますが、その場合の日本語科目は認定日本語教育機関や登録日本語教員によるものでなくても構いません(育成就労制度Q&A Q68)。監理型の育成就労では、入国後講習の期間中に業務へ従事させることはできません。
A2目標講習と受講機会の提供義務
A2目標講習は、3年間の育成就労期間中に100時間以上を受講できるよう、受け入れ企業が必要な措置を講じる義務です。運用要領は、本人の希望に応じて講習費用を負担し、受講できる環境を整えることを求めています。受講の機会を意図的に与えなかった場合は、育成就労計画の認定取消しの対象になるおそれがあるとされています。
受講時間を労働時間として扱うことまでは義務づけられていません(育成就労制度Q&A Q69)。ただ、勤務後や休日に100時間を確保するのは本人にとって負担が大きく、シフトの組み方を含めて計画しておく必要があります。途中で転籍があった場合は時間が通算され、転籍元で30時間を終えていれば、転籍先は70時間以上を行えば足ります。
講習費用の負担者
A1相当講習とA2目標講習の費用は、受け入れ側が負担します。出入国在留管理庁は「育成就労実施者又は監理支援機関において、費用の負担を含め日本語能力向上のために必要な措置を取っていただくこととなります」と説明しています(育成就労制度Q&A Q66)。講習費を育成就労外国人に直接または間接に負担させることはできません。入国前講習の費用を本人が送出機関に「講習費」として支払う形も、間接的な負担にあたるとされています。
誰が教えた時間なら100時間に数えられるのか?
A1相当講習とA2目標講習の100時間に数えられるのは、認定日本語教育機関の「就労のための課程」の授業か、登録日本語教員が要件を満たして行う授業だけです。社内の日本語が得意な社員やボランティアによる指導、録画教材を視聴するeラーニングは、内容が良くても100時間には算入できません。オンライン授業は、同時かつ双方向であれば認められます。
制度の条文と運用要領をもとに、講師と授業の形式ごとに整理すると次のようになります。
| 教える人・授業の形式 | 100時間への算入 | 補足 |
|---|---|---|
| 認定日本語教育機関の「就労のための課程」 | できる(原則) | 受講証明書を受け取り保管する |
| 登録日本語教員の対面授業(同時20人以下) | できる(経過措置) | 当分の間。日本語学校に所属する教員でも可 |
| 登録日本語教員の同時双方向オンライン授業(同時20人以下) | できる(経過措置) | インターネット環境を整えて実施する |
| 登録日本語教員が21人以上を同時に教える授業 | できない | 教員1人につき同時20人以下が要件 |
| 資格のない日本語講師・社内講師・ボランティアの授業 | できない | 法定講習以外の学習支援としては有効 |
| 録画教材・アプリによる自習(オンデマンド) | できない | 予習・復習や試験対策としては有効 |
育成就労法施行規則 第13条・附則第3条、育成就労制度運用要領 第4章、文部科学省「日本語教育機関認定法 よくある質問集」をもとに当メディアが整理(2026年10月8日確認)。100時間の一部を録画教材に置き換えられるとする規定は確認できませんでした。
eラーニングだけでは満たせない理由
登録日本語教員による講習は、対面でなければ「オンラインで同時かつ双方向に行われるもの」であることが要件です。認定日本語教育機関の課程についても、文部科学省のよくある質問集は「あらかじめ録画した映像を視聴するいわゆるオンデマンド授業は認められません」としています。録画教材やアプリでの自習は、教材の質にかかわらず、法定の100時間には数えられないと読めます。
だからといって、eラーニングが不要になるわけではありません。100時間の授業だけでA2相当の試験に合格するのは簡単ではなく、授業の間の予習・復習や語彙の定着は自習で補うことになります。法定講習は資格のある教員の授業で満たし、日々の学習量はeラーニングで確保するという役割分担が現実的です。法定講習以外の日本語学習支援は、優良な育成就労実施者の評価でも加点の対象になります。配点の内訳は「優良な監理支援機関とは?評価事項・メリットと日本語の実績」で整理しています。
受講の記録と証明
講習を受けたことは、資料で証明できるようにしておく必要があります。A1相当講習は、受講が完了したことを示す資料(認定日本語教育機関の受講証明書など)を入国後講習実施記録とともに保管します。A2目標講習は、同様の資料を育成就労計画の履行状況に関する管理簿とともに保管します。育成就労計画の認定申請では、「目標とする日本語能力に係る講習履修状況等申告書」に、講習の実施者が認定日本語教育機関か登録日本語教員かを記載します。委託先を決めるときに、教員の登録証の写しと受講証明の様式を確認しておくと、後の手続きが滞りません。
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認定日本語教育機関に所属せずに育成就労のA1相当講習・A2目標講習を教える場合は、登録日本語教員の資格が必要です。資格のない人が教えた時間は、受講者の100時間に算入されません。日本語学校などに勤めている教師も、勤務先が「就労のための課程」の認定を受けていなければ、本人が登録日本語教員であることが条件になります。
登録日本語教員の資格取得ルート
登録日本語教員は、日本語教育機関認定法(2024年4月施行)にもとづく国家資格です。取得の道筋は、認定を受けた養成機関で課程を修了する「養成機関ルート」と、日本語教員試験の基礎試験・応用試験に合格する「試験ルート」の2つが基本で、どちらも実践研修の修了が必要です。現職の日本語教師には、試験や研修の一部が免除される経過措置のルートが設けられています(文部科学省「登録日本語教員の資格取得ルート」)。
令和7年度の日本語教員試験(2025年11月実施)の合格率は、試験の免除者を含む全体で67.5%、試験ルートでは35.9%でした(文部科学省「令和7年度日本語教員試験の結果について」)。令和8年度の試験は2026年11月8日に実施されます。
現職の日本語教師の経過措置との違い
日本語教育機関認定法には、一定の経験を持つ現職の日本語教師が、令和11年3月31日までは登録を受けていなくても認定日本語教育機関で教えられる経過措置があります。この経過措置は認定日本語教育機関の課程を担当する場合の話で、育成就労の「登録日本語教員による講習」とは別の仕組みです。認定日本語教育機関に属さずに育成就労の講習を教えるなら、登録を済ませておく必要があります。経過措置のルートで登録を目指す人は、自分のルートの期限を文部科学省の資料で確認してください。
資格がなくても関われる場面
登録日本語教員でなくても、育成就労外国人の日本語学習に関わる場面はあります。A1相当試験に合格している人が入国後講習で受ける日本語科目は、認定日本語教育機関や登録日本語教員によるものでなくても構いません。法定の100時間とは別に企業が行う日本語学習支援も、資格の有無を問いません。現場で使う用語や指示の表現を教える役割は、業務を知っている社内の人のほうが向いています。
育成就労で求められる日本語のレベルはどこまでか?
育成就労では、就労開始前にA1相当、3年間の修了時にA2相当の日本語能力が求められます。就労開始前はA1相当以上の試験に合格するかA1相当講習を受講し、開始から1年以内にA1相当以上の試験を受け、修了して特定技能1号へ移行する際にはA2.2相当以上(JLPT N4など)の試験合格が必要です。本人の意向で転籍する場合は、分野ごとに定められた水準(A2.1相当以上)の試験合格が条件になります。
分野によっては、より高い水準が定められています。たとえば介護分野では、入国後講習の日本語科目が240時間以上とされています。鉄道分野の運輸係員は、修了時にB1相当以上が求められます。運輸係員はさらに、A2目標講習100時間に50時間を上乗せした計150時間の講習が必要です(鉄道分野の育成就労の改正点と運輸係員の日本語150時間)。宿泊分野は全国共通の基本形どおりで、就労開始までにA1相当、終了までにA2.2相当が求められます(育成就労「宿泊」分野の日本語と試験の要件)。受け入れを予定している分野の基準は、出入国在留管理庁の「育成就労制度の概要(令和8年7月改訂)」と分野別の運用方針で確認してください。特定技能への移行の条件は「育成就労から特定技能への移行条件」で解説しています。
2027年4月の施行までに企業は何を決めておくべきか?
2027年4月1日の施行までに企業が決めておくべきことは、A1相当講習とA2目標講習をどこに任せるか、費用と時間をどう確保するか、受講の記録をどう残すかの3つです。就労課程を持つ認定日本語教育機関はまだ少なく、登録日本語教員による講習も教員1人につき同時20人までという上限があるため、受け入れ人数が決まった段階で早めに委託先を押さえる必要があります。
委託先の探し方
委託先を探すときは、出入国在留管理庁が公表している「日本語教育機関の講習提供状況一覧表」が出発点になります。機関ごとに、A1相当講習・A2目標講習の提供の可否、対面かオンラインか、受け入れ可能な人数、連絡先が載っています。監理型で受け入れる場合、入国後講習は監理支援機関が実施するため、監理支援機関がどの機関や教員に日本語講習を任せる予定かを確認してください。日本語教育を社内でどう管理するかは「日本語学習管理の仕組み」にまとめています。
費用と受講時間の確保
1人あたり最大200時間(A1相当講習100時間とA2目標講習100時間)の講習費用を、受け入れ側の負担として予算に入れておきます。入国前にA1相当試験に合格していればA1相当講習は不要になり、入国後講習の総時間も短くなります。送出機関と連携して入国前の学習と受験を進めることが、費用と就労開始までの期間の両方を抑えることにつながります。A2目標講習は3年間のどこで100時間を確保するかを、育成就労計画の段階で決めておきます。
記録の残し方と施行前の手続き
受講証明書、教員の登録を示す書類、受講日と時間の記録を、育成就労外国人ごとに保管する運用を決めておきます。育成就労計画の認定申請や監理支援機関の許可申請は、施行日前から受け付けられています。手続きの全体像は「育成就労制度2027年施行に向けた申請準備ガイド」で、定着まで含めた受け入れ体制は「外国人材の定着支援完全ガイド」で確認できます。
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IPPO TALKは、プロの日本語教師によるオンラインレッスンと、eラーニングアプリ「IPPO」を組み合わせた法人向けの日本語教育サービスです。アプリ「IPPO」での自習は法定の100時間には算入されないため、授業の予習・復習と、A1・A2相当の試験対策に使う位置づけになります。
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