JFT-Basic対策の要は「いろどり」|JLPTとの違いも解説

JFT-Basic対策の要は「いろどり」|JLPTとの違いも解説 特定技能
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JFT-Basicの対策教材は、実質的に『いろどり 生活の日本語』の一択です。国際交流基金が公式サイト「学習のヒント」で最初に挙げているのがこの教材であり、そもそも両者は「JF生活日本語Can-do」という同じ設計図から作られているからです。そして2026年8月、JFT-Basicの判定にA1とA2.1が加わりました。これにより、『いろどり』のレベル構成、JFT-Basicの判定区分、2027年4月に始まる育成就労制度の日本語要件が一本の線でつながります。本記事では外国人材の採用・受入れを担当する方に向けて、なぜJFT-Basic対策が『いろどり』に集約されるのかを整理し、JLPTとの違いと、自社の育成カリキュラムへの落とし込み方までを解説します。

この記事でわかること

  • JFT-Basicの出題範囲と『いろどり』が同じ「JF生活日本語Can-do」で設計されている理由
  • 『いろどり』4レベル×各18課の構成と、無料で使える範囲・使えない範囲
  • A1・A2.1判定の追加が『いろどり』のレベル構成とどう重なるか
  • 育成就労の3段階要件を『いろどり』に割り付ける年次ロードマップ
  • 無料教材を配るだけでは育成が回らない理由と、運用を成立させる条件

特定技能制度そのものの全体像は特定技能制度の全体像をまとめた完全ロードマップで解説しています。本記事は日本語試験と学習教材の観点に絞ります。

JFT-Basicの出題範囲は「いろどり」と同じ設計図でできている

出題の土台は文法リストではなく「JF生活日本語Can-do」

JFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト)の対策で最初に押さえるべきは、出題の土台です。国際交流基金は出題内容を「A1からA2のCan-doに基づいた、生活場面の問題」と説明しています(出典:同基金「JFT-Basic よくある質問」)。軸は文法項目のリストではなく、「実際の場面で何ができるか」を記述したCan-doです。

テスト構成もこの思想に沿っています。CBT方式・試験時間60分・出題数は約50問で、「文字と語彙」「会話と表現」「聴解」「読解」の4セクションから各約12問、総合得点は10点から250点。聴解では店や公共機関でのやりとりや指示・アナウンスの理解が、読解では街の看板や掲示からの情報検索が問われます。教室で完結する日本語ではなく、生活場面に紐づいた日本語が測られる設計です。だからこそ、市販の文法問題集を機械的に解いてもスコアは伸びにくい。対策の効率を左右するのは、出題の土台であるCan-doをそのまま学習目標にしている教材を使えるかどうかです。

『いろどり』はそのCan-doを341項目そのまま学習目標に採用している

そこで『いろどり 生活の日本語』です。国際交流基金は、「JF生活日本語Can-do」341個をコースブック『いろどり 生活の日本語』の学習目標として採用したと明示しています(出典:国際交流基金「JFT-Basic 学習のヒント」)。

同じCan-do群が、片方ではテストの出題設計に、もう片方では教材の学習目標に使われている——これが『いろどり』の決定的な優位です。他の教材なら「出題範囲とどの程度重なるか」を企業側で見極める必要がありますが、『いろどり』ならその検証が要りません。範囲がずれる余地が構造的に小さいからです。

Can-doの実物を見ると性格がよくわかります。「職場に、電話で休みや遅刻の連絡をすることができる」といった記述です(出典:国際交流基金「日本語教育ニュース」)。試験対策であると同時に、そのまま受入れ現場で必要になる行動の一覧になっている——ここが企業にとっての実利です。

公式が「学習のヒント」で案内している教材はこの3つ

国際交流基金は公式サイトの「学習のヒント」で、受験準備に使える教材を案内しています。掲載されているのは次の3つです。

教材 対象レベル 形態・特徴
いろどり 生活の日本語 A1/A2/A2-B1 PDF・音声を無料ダウンロード。Can-do形式で学習目標を明示
いろどり 日本語オンラインコース A1/A2 コースブックをもとにしたオンライン学習。スマホ・PC対応
JFにほんごeラーニング みなと 複数コース 同基金が運営するオンライン学習プラットフォーム

いずれも試験実施団体自身が開発・運営する教材である点が重要です。企業側は教材選定に時間を割く必要がなく、「どれを使わせるか」ではなく「どう学習を回すか」にはじめから資源を集中できます。

「いろどり」とはどんな教材なのか?

4レベル×各18課、すべてCan-do単位で組まれている

『いろどり 生活の日本語』は、日本で生活し働く外国人に必要な基礎的コミュニケーション力を養う教材です。構成は次のとおりで、いずれのレベルも18課です。

レベル 参照枠 課数 想定される段階
入門 A1 18課 自己紹介・買い物・街を歩くなど
初級1 A2 18課 レストラン・交通・体調など
初級2 A2 18課 職場・旅行・地域のイベントなど
初中級 A2/B1 18課 A2を固め、B1へ橋渡しする段階

本冊のほか音声(MP3)、ことばリスト、文法ワークシート、解答が付属し、各レベルの末尾には学習者自身が到達度を確認できる「Can-doチェック」があります。

2026年8月の改定で「いろどり」の位置づけはどう変わったのか?

A1・A2.1が新たに判定できるようになった

2026年8月から、JFT-Basicは従来のA2判定に加えてA1とA2.1を判定できるようになりました。得点範囲は次のとおりです。

判定 総合得点 位置づけ
A2.2(A2) 200〜250点 2026年7月までの「A2」に相当
A2.1 175〜199点 A1に到達し、A2到達に向けて学習が進展している段階
A1 145〜174点 今回新設された下位の判定区分
判定なし 145点未満 A1に到達していない

改定の理由は公式に明示されています。特定技能1号に加え、2027年4月に運用が開始される育成就労制度で求められる日本語能力水準も判定できるようにするためです(出典:国際交流基金「2026年8月からJFT-BasicはA1、A2.1も判定できるようになります」)。

なお変更されたのは判定方法だけで、試験形式・出題構成・難易度に変更はありません。教材を乗り換える必要も、新しい対策を足す必要もないということです。変わったのは、これまで200点未満をひとまとめに「基準点未達」として扱っていた領域が、A1・A2.1の2段階に切り分けられたこと。育成の進捗を測る物差しが手に入った点で、企業実務には効きます。

判定区分と『いろどり』のレベル構成が一直線に並んだ

今回の改定でもっとも実務的な意味を持つのがこの点です。判定が3段階になったことで、『いろどり』のレベル構成と到達段階を対応づけて語れるようになりました。

学習の段階 主に取り組む『いろどり』 JFT-Basicの到達目安
第1段階 入門(A1・18課) A1判定(145〜174点)
第2段階 初級1(A2・18課) A2.1判定(175〜199点)
第3段階 初級2(A2・18課) A2.2判定(200〜250点)
発展段階 初中級(A2/B1・18課) JLPT N4〜N3等への橋渡し

ただしこの対応関係は学習設計上の目安であり、国際交流基金が各レベルと判定区分を1対1で公式に対応づけているわけではありません。「入門を終えれば必ずA1判定が出る」という保証はないため、社内で目標を掲げる際は実際のスコアで検証しながら進めてください。

すでに受験済みの人材については、企業側の対応が必要になることは基本的にありません。2026年7月までに受験し200点以上であれば、A2.2(A2)に達している証明として引き続き使用できます。ただしA1やA2.1の判定そのものが必要な場面では、2026年8月以降にあらためて受験する必要があります。

JFT-BasicとJLPTは何が違うのか?

項目 JFT-Basic JLPT(日本語能力試験)
測定の目的 生活・就労で支障なく意思疎通できるか 日本語力を体系的・総合的に測る
出題の土台 JF生活日本語Can-do(場面でできること) 文字・語彙・文法・読解・聴解の言語知識と運用
公式の対策教材 『いろどり 生活の日本語』等を公式サイトで案内 公式問題集はあるが、市販教材が中心
判定区分 A1/A2.1/A2.2(A2)の3段階 N5〜N1の5段階
測定範囲 初級域に特化(A2まで) 初級から上級まで幅広くカバー
実施頻度・結果 原則毎月・当日に結果表示 国内は年2回(7月・12月)・数か月後

企業実務にもっとも効くのは「出題の土台」と「公式の対策教材」の2行です。JLPTは体系的に日本語力を測れる反面、どの教材で対策するかは学習者と企業の裁量に委ねられます。JFT-Basicは出題の土台がCan-doで明示され、それを学習目標に採用した公式教材が無料で公開されている。教育設計の初期コストという意味で、両者の差は小さくありません。

また、JLPTは国内で年2回のため不合格だと就労開始が半年単位で後ろ倒しになる一方、JFT-Basicの判定はA2までで、それ以上は測れません。特定技能2号や現場リーダーへの登用を見据えるなら、『いろどり』初級2のあとに初中級(A2/B1)へ進み、そこからJLPTのN3・N2へ接続する流れが自然です(JLPT試験回数の増加が日本語学校・支援機関の現場に与える影響)。

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育成就労の3段階要件に「いろどり」をどう当てはめるか?

要件は就労開始前・1年以内・3年後の3段階

2027年4月に運用が始まる育成就労制度では、受入れ期間を通じて段階的な日本語要件が設定されています。出入国在留管理庁の育成就労制度Q&Aによると、要件は次の3段階です。

タイミング 求められる水準
就労開始前 A1相当以上の試験に合格、または認定日本語教育機関の「就労」課程でA1相当の講習を100時間以上受講
就労開始後1年以内 参照枠A1相当の日本語能力を修得し、試験を受けること
育成就労終了時(特定技能1号への移行時) 3年間を通じて参照枠A2相当を修得し、試験に合格すること

分野によってはこれより高い水準が求められ、どの試験が認められるかも業務区分ごとの分野別運用方針で定められます。自社の分野でJFT-Basicが認定試験に含まれるかは必ず確認してください(育成就労から特定技能への移行条件と企業の定着戦略)。

年次ロードマップに落とし込む

制度要件と『いろどり』のレベル構成を突き合わせると、3年間のカリキュラムは具体的に描けます。ひとつの型として、次のような割り付けが考えられます。

時期 学習範囲の目安 到達目標 確認方法
来日前 いろどり 入門(母語版の解説を併用) A1相当の試験合格または100時間講習 JFT-Basic受験または講習修了
1年目 入門の復習+初級1の前半 A1判定を固める JFT-Basic受験(制度上も1年以内に受験)
2年目 初級1の完了+初級2の着手 A2.1判定(175点以上) JFT-Basic受験
3年目 初級2の完了 A2.2判定(200点以上)=移行要件 JFT-Basic受験

この設計の利点は、同じテストで測り続けられることです。A1で止まっているのかA2.1まで来ているのかが数値で見えます。裏を返せば、育成が進んでいないことも同じ精度で可視化されます。2年目でA1のまま止まっていれば3年後のA2到達は極めて厳しく、移行要件を満たせずに採用と育成の投資が回収できません。早期に気づけるかどうかが分かれ目です。

なお特定技能1号の受入れ機関には、義務的支援の一つとして日本語学習の機会の提供が求められています。無料かつ公式の教材があることは、予算措置を待たずに着手でき妥当性も説明がつく点で有利です。ただし「URLを案内した」ことと「学習の機会を実質的に提供した」ことは別です。支援記録に残るのは案内した事実でも、移行要件を満たすのは実際の到達度です。

「いろどり」を配るだけでは、なぜ育成が回らないのか?

不足しているのは教材ではなく運用

ここまで見てきたとおり、JFT-Basic対策の教材面はすでに解決済みです。出題の土台と同じCan-doで設計された教材が、4レベル×各18課、音声つき・多言語対応で無料公開されている。教材調達は企業のボトルネックではありません。

残る課題は運用です。入門から初級2まで通せば54課、受入れ10名なら延べ540課分の学習を3年間追跡することになります。誰がどこまで進んだか、どの技能でつまずいているか、進んでいない人材にいつ声をかけるか——これらを人事担当者が手作業で回すのは現実的ではありません。教材が無料であることと、育成が無料で回ることは別の話です(外国人材の日本語学習管理を成功させる仕組みの作り方)。

スコアの読み方と、受入れ前の実務ポイント

あわせて押さえたいのが、200点は「ゴール」ではなく「入口」だという点です。A2は共通参照枠の「基礎段階の言語使用者」にあたる水準で、選択式のCBTでは曖昧な指示を汲み取る力や、トラブル時に状況を順序立てて説明する力までは測れません(特定技能ドライバーのN4緩和に潜む採用後の落とし穴)。

  • 再受験は45日以上あける:199点以下なら再受験できますが、前回の受験日から45日間あける必要があります
  • 200点以上の取得者は再受験できません:スコアの上積みを目的とした再受験は不可です
  • 結果に有効期限はありません:ただし予約サイト上のデータ保存期間は5年間のため、通知書は自社でも保管を
  • 受験料は国によって異なります:日本国内は10,000円。海外受験は現地通貨建てのため事前確認が必要です

技能側とあわせた対策設計は特定技能の技能評価試験・日本語能力試験の完全対策ガイドで整理しています。

分野別の事情もあわせて確認しておきたいところです。たとえば受入れ人数が最大の飲食料品製造業分野では、2026年度以降の技能測定試験が改訂版の学習テキストから出題される一方、母語の翻訳版テキストは旧版のまま残っており、本人任せの学習では出題範囲をカバーしきれません(特定技能「飲食料品製造業」の対象業務と2026年4月改正)。

IPPOのJFT-Basic対策教材は『いろどり』に対応

こうした運用の課題に応えるため、法人向け日本語学習e-learningアプリ「IPPO」にJFT-Basic対策教材を追加しました。『いろどり 生活の日本語』の全課に対応させた構成です。

『いろどり』の各課で設定されているCan-doに、問題と学習コンテンツを1対1で紐づけています。IPPOの場合は、該当レッスンの確認テストに合格しないと次のレッスンに進めない構造になっています。

IPPOはこれまで、JLPT対策(N5〜N1全レベル)、基礎日本語文法、ビジネス・敬語、生活の日本語、特定技能評価試験対策・受け入れ支援を同一プラットフォームで提供してきました。今回の追加により、育成就労で求められるA1相当から移行に必要なA2相当、さらにJLPT N3・N2までをひとつの環境で継続学習できます。AIが4技能を分析して弱点を自動検出し、問題配信・採点・進捗管理も自動処理されるため、前章の「延べ540課分の追跡」を担当者の工数を増やさずに成立させられます。

まとめ|JFT-Basic対策は「教材選び」ではなく「運用設計」

  • JFT-Basicの出題はJF生活日本語Can-doに基づく。『いろどり』はそのCan-do 341項目を学習目標に採用しており、出題範囲と教材が同じ設計図でつながっている
  • 『いろどり』は入門(A1)・初級1(A2)・初級2(A2)・初中級(A2/B1)の4レベル各18課。PDFも音声も無料で、20言語に翻訳されている
  • 2026年8月からA1(145〜174点)とA2.1(175〜199点)の判定が追加。試験形式・難易度に変更はなく、変わったのは判定方法のみ
  • 判定が3段階になり、『いろどり』のレベル進行と育成就労の3段階要件を同じ物差しで管理できるようになった
  • 教材は無料でも運用は無料ではない。54課×人数×3年の学習を追跡する仕組みがなければ、A2到達には届かない

2027年4月の制度スタートまで、準備できる時間は限られています。どの試験を採用要件にするかだけでなく、公式教材をどう配り、誰がどこまで進んだかをどう追うのか——そこまで設計しておくことが、制度移行を乗り切る条件になります。

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