特定技能「外食業」とは?受入れ停止下の採用戦略を解説

特定技能「外食業」とは?受入れ停止下の採用戦略を解説 特定技能
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特定技能「外食業」は、飲食店の調理・接客・店舗管理に外国人材を受け入れるための在留資格です。ただし2026年8月現在、この分野を他の特定産業分野と同じ感覚で扱うことはできません。新規の受入れそのものが止まっているからです。

とはいえ、人手不足が和らいだわけではありません。帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年7月)」(2026年8月17日公表)によれば、非正社員が不足していると答えた企業の割合は「飲食店」が57.7%と業種別で最も高く、全体平均の28.8%を大きく上回りました。採用需要は強いまま、制度側の扉だけが閉じている。これが外食業の現在地です。

そこで本記事では、飲食店・外食チェーンの人事および店舗運営責任者に向けて、制度の全体像を押さえたうえで、2026年4月13日から続く受入れ停止によって何が止まり、何が止まっていないのかを、出入国在留管理庁と農林水産省の公表資料に沿って整理します。停止措置と最新の審査状況を1枚に突き合わせた判断表も用意しましたので、自社がどのルートを取れるかの確認にお使いください。

この記事でわかること

  • 特定技能「外食業」で従事できる業務の範囲と、受け入れられない業態の線引き
  • 2026年4月13日の受入れ停止で、止まった申請と止まっていない申請の違い
  • 申請の種類別に「停止措置の扱い」と「処理中の受付日」を突き合わせた判断表
  • 特定技能1号・2号の取得要件と、2号評価試験の構成・合格ライン
  • 新規採用が使えない局面で、定着と2号移行に投資すべき理由
  1. 特定技能「外食業」とはどのような制度か?
    1. 従事できる業務の範囲はどこまでか
    2. 受け入れられる事業所と、対象外になる業態
    3. 雇用形態は直接雇用のフルタイムに限られる
  2. 2026年4月に何が起きたのか?新規受入れ停止の全体像
    1. 受入れ上限5万人への到達で、認定証明書の交付が止まった
    2. 停止は「在留資格変更許可申請」にも及んでいる
    3. 1号評価試験も国内外で停止している
  3. 停止下でも特定技能「外食業」で採用できるルートはあるか?
    1. ルート1:同一分野内の転職者を受け入れる
    2. ルート2:技能実習・特定活動からの移行
    3. ルート3:隣接分野での受入れに切り替える
    4. 申請の種類別に「停止の扱い」と「処理中の受付日」を突き合わせる
  4. 在留資格「特定技能1号(外食業)」はどう取得するのか?
    1. 技能測定試験と日本語試験の2つが必要
    2. 食品産業特定技能協議会への加入は在留申請の「前」に
    3. 支援計画と義務的支援の実施体制
  5. 特定技能2号への移行が、いま最も現実的な成長ルート
    1. 2号の3つの要件:実務経験・評価試験・日本語N3
    2. 2号評価試験の構成と合格ライン
    3. 2号移行を等級・処遇制度に組み込む
  6. 転職市場で「選ばれる店」になるために何をすべきか?
    1. 日本語教育を定着投資として位置づける
    2. 2027年の育成就労制度を見据えて準備する
    3. 生活・心理面の支援で離職を防ぐ
  7. まとめ:受入れ停止下の外食業で企業が取るべき打ち手
  8. 貴社の課題、一緒に解決しませんか?
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    3. サービスへのお問い合わせ

特定技能「外食業」とはどのような制度か?

特定技能「外食業」は、飲食店や給食施設で調理・接客・店舗管理に従事する外国人材を受け入れるための在留資格です。農林水産省が所管する特定産業分野のひとつで、1号は在留期間が通算5年まで、2号は更新回数に制限がありません。技能実習のように育成と技能移転を建前とするのではなく、労働力として正面から受け入れる制度にあたります。

この違いは要件の設計にも表れています。1号では家族帯同が認められないのに対し、2号は要件を満たせば家族を呼び寄せることもできますし、将来的には永住申請の道も開けます。外食業は2023年に2号の対象分野へ加えられていますから、長期戦力化のルートは制度としてすでに用意されていると考えてよいでしょう。

従事できる業務の範囲はどこまでか

外食業分野の業務区分はひとつだけで、その中身は飲食物調理・接客・店舗管理の3つです。仕込みから調理・盛り付けまでの調理業務、案内・注文・配膳・会計・片付けといった接客業務、そして衛生管理や在庫・発注などの店舗管理業務が、いずれも対象に含まれます。

気をつけたいのは、この3つを組み合わせて従事させることが前提になっている点です。日本人従業員が通常行っている業務の一部として、店舗清掃や食材の運搬といった関連業務を任せること自体は認められていますが、関連業務「だけ」に固定することはできません。「洗い場専任」「配膳専任」といった配置は、就労実態と在留資格が乖離していると判断されかねず、更新のタイミングで問題が表面化します。

テイクアウトやデリバリーへの対応も、店舗の飲食提供に付随するものであれば業務範囲に収まります。悩ましいのはホテル内のレストランで、業務の中身が飲食提供にとどまるなら外食業分野として整理するのが基本ですが、フロント業務や客室清掃まで担わせるとなると特定技能「宿泊」の領域に踏み込みます。両分野の線引きは実務上あいまいになりやすいため、配置を決める前に特定技能「宿泊」完全ガイド|試験構成と受入れ要件で宿泊分野の業務範囲もあわせて確認しておくと、判断を誤りません。

受け入れられる事業所と、対象外になる業態

受け入れの対象になるのは、レストラン・食堂・喫茶店・居酒屋などの飲食店、持ち帰り・配達飲食サービス業、そして給食施設です。社員食堂や病院・学校の給食部門も含まれると考えて差し支えありません。

これに対して、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)の対象となる営業を行う店舗では、特定技能外国人を就労させることができません。同じ居酒屋やバーであっても、接待を伴う営業として許可を受けているのであれば対象外になります。さらに、風営法の対象でない店舗であっても、接待そのものを行わせることは禁じられています。深夜営業でカウンター越しに客と会話を交わすような業態であれば、この線引きは採用に動く前に確認しておいたほうが安全でしょう。

雇用形態は直接雇用のフルタイムに限られる

外食業分野では受入企業と特定技能外国人の直接雇用が原則で、派遣という形は認められていません。加えて雇用はフルタイムに限られ、パート・アルバイトとしての採用も不可です。したがって、繁忙期だけ人員を厚くしたい、週3日のシフトで回したいといった使い方は、そもそも制度が想定していないことになります。

報酬面でも、同等の業務に従事する日本人従業員と同等額以上であることが求められます。外国人材だからという理由で時給や基本給を抑えれば、在留諸申請の段階で必ず問われることになりますから、賃金テーブル上の位置づけは採用前に整理しておくべきです。

2026年4月に何が起きたのか?新規受入れ停止の全体像

特定技能「外食業」は、2026年4月13日以降に受理された在留資格認定証明書交付申請および在留資格変更許可申請が、原則として不交付・不許可となっています。外食業分野の受入れ上限である5万人に到達する見込みとなったため、出入国在留管理庁と農林水産省が2026年3月27日に公表した措置です。あわせて外食業特定技能1号評価試験も、国内外ともに当面停止されています。

受入れ上限5万人への到達で、認定証明書の交付が止まった

外食業分野の特定技能1号の受入れ見込数、すなわち受入れ上限は5万人と定められています。出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数の公表等」によれば、2025年12月末時点の外食業分野の在留者数は44,925人。そして「特定技能『外食業分野』における受入れ上限の運用について」(2026年3月27日公表)では、同年2月末時点で約4万6千人(速報値)に達し、5月頃には上限を超える見込みであることが示されました。

これを受けて、2026年4月13日以降に受理された在留資格認定証明書交付申請は不交付とする措置がとられています。つまり、海外から新たに外食業の特定技能人材を呼び寄せるルートは、現時点で閉じているということです。

停止は「在留資格変更許可申請」にも及んでいる

この措置を「海外からの呼び寄せに限った話」と受け取っている企業が少なくないのですが、それは正確ではありません。公表資料では、2026年4月13日以降に受理された在留資格変更許可申請についても、原則として不許可とする方針が示されています。

したがって、日本国内にいる留学生や家族滞在の在留資格を持つ人材を、新たに特定技能1号(外食業)へ切り替えて採用するという手も、いまは使えません。国内で探せば回避できる問題ではない。この前提から採用計画を立て直す必要があります。

1号評価試験も国内外で停止している

あわせて農林水産省は「外食業分野における外国人材の受入れについて」で、外食業特定技能1号評価試験を「当面の間、国内外ともに実施しません」としています。試験機関である一般社団法人外国人食品産業技能評価機構(OTAFF)でも、受験申込の受付が止まったままです。

もっとも、止まっているのは外食業の1号試験だけです。外食業の特定技能2号評価試験も、飲食料品製造業分野の1号・2号評価試験も、引き続き実施されています。この扱いの違いが、後述する打ち手を分けることになります。

再開時期については、政府は枠に一定の空きが生じれば検討するとしているものの、2026年8月時点で具体的な見通しは示されていません。「そのうち再開するだろう」と構えたまま採用計画を先送りするのは、経営判断としてかなり危うい選択だと言わざるを得ません。

停止下でも特定技能「外食業」で採用できるルートはあるか?

新規受入れが停止した2026年4月13日以降も、特定技能「外食業」で人材を確保できるルートは3つ残っています。外食業分野内での転職者の受入れ、技能実習(医療・福祉施設給食製造作業)および特定活動(特定技能1号移行準備)からの移行、そしてセントラルキッチン等での飲食料品製造業分野への切り替えです。いずれも出入国在留管理庁が、停止措置の例外として通常どおり審査すると明示しています。

ルート1:同一分野内の転職者を受け入れる

すでに外食業分野で特定技能1号として就労している人材が別の受入企業へ移る場合、その申請は全件が許可されており、停止措置の影響を受けません。

現時点でもっとも現実的なルートがこれです。とはいえ裏を返せば、外食業界全体で限られた人材を奪い合う構図に入ったということでもあります。新規流入が止まった市場で人を確保できるのは、他社から選ばれるだけの労働条件と職場環境を持つ企業だけです。後半で扱う定着への投資は、この意味では福利厚生の話ではなく、採用戦略そのものだと捉えてください。

ルート2:技能実習・特定活動からの移行

技能実習(医療・福祉施設給食製造作業)を修了した人材からの在留資格変更許可申請、および特定活動(特定技能1号移行準備)の許可を受けている人材が外食業分野の特定技能1号へ移行する申請も、通常どおり審査されます。

給食受託事業を手がけている企業や、医療・福祉施設の給食部門を運営している企業であれば、このルートはそのまま使えるはずです。なお技能実習からの移行を検討するのであれば、2027年施行予定の育成就労制度への切り替わりも織り込んで計画を組んでおくべきでしょう。制度の全体像は育成就労から特定技能への移行条件とは?新制度の全容と企業の定着戦略で整理しています。

ルート3:隣接分野での受入れに切り替える

セントラルキッチンや自社工場で食品の製造・加工を行っている外食企業であれば、その部門に限っては特定技能「飲食料品製造業」分野での受入れという選択肢が残ります。同分野は受入れ見込数に対してまだ枠に余裕があり、試験も継続して実施されているためです。

ただし前提として、業務の実態が「製造」でなければなりません。店舗での接客・調理を飲食料品製造業分野の在留資格で行わせることはできない以上、雇用契約書の業務内容と日々の作業割当が製造中心であることを示せる状態を整えたうえで、申請に進む必要があります。分野ごとの業務区分と2026年4月の改正内容は特定技能「飲食料品製造業」とは?2026年4月改正と試験対策で確認できます。

申請の種類別に「停止の扱い」と「処理中の受付日」を突き合わせる

自社がどのルートを取れるかを判断するには、2026年3月27日の停止措置(どの申請が止まったか)と、出入国在留管理庁が随時更新している「特定技能1号(外食業分野)の在留諸申請の審査状況」(どこまで処理が進んでいるか)の2つを、突き合わせて読む必要があります。両者を1枚に整理したのが次の表です。

申請の種類 停止措置の扱い 処理中の受付日(2026年8月10日掲載時点)
在留資格認定証明書交付申請(海外からの呼び寄せ) 2026年4月13日以降の受理分は不交付 2026年1月5日までの申請
在留資格変更許可申請(外食業分野内の転職) 例外。影響を受けない 全ての申請を許可
在留資格変更許可申請(技能実習から) 例外。通常どおり審査 2026年7月31日までの申請
在留資格変更許可申請(特定活動〈特定技能1号移行準備〉から) 例外。通常どおり審査 2026年7月31日までの申請
在留資格変更許可申請(留学・家族滞在などその他の在留資格から) 2026年4月13日以降の受理分は原則不許可 2026年4月12日までの受理分
在留期間更新許可申請 影響を受けない 通常どおり順次許可
出入国在留管理庁「特定技能『外食業分野』における受入れ上限の運用について」(2026年3月27日)および「特定技能1号(外食業分野)の在留諸申請の審査状況」(2026年8月10日掲載)をもとに作成

この表から読み取れることが2つあります。ひとつは、停止前に駆け込みで提出した認定証明書交付申請であっても、2026年8月の時点でまだ1月5日受付分までしか処理が進んでおらず、相当な遅延が生じているという事実です。入社予定日を前提に組んだ人員計画は、いったん見直したほうが現実に合います。

もうひとつは、技能実習・特定活動からの移行が7月31日受付分まで進んでいる、つまり例外ルートは滞りなく流れているという点です。使えるルートを持っている企業とそうでない企業の差が、そのまま採用スピードの差になっています。審査状況のページは随時更新されるため、申請を抱えている企業は定期的に確認してください。

在留資格「特定技能1号(外食業)」はどう取得するのか?

特定技能1号(外食業)の取得には、外食業特定技能1号評価試験と日本語試験(JFT-BasicのA2レベル以上、またはJLPT N4以上)の両方に合格する必要があります。受入企業の側は、在留諸申請を行う前に食品産業特定技能協議会へ加入し、義務的支援の実施体制を整えなければなりません。1号評価試験は2026年8月時点で停止していますが、要件そのものが変わったわけではありません。

技能測定試験と日本語試験の2つが必要

日本語要件は、国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)でA2レベル以上に合格するか、日本語能力試験(JLPT)N4以上に合格することで満たせます。どちらを選ぶかによって教材も対策の進め方も変わってきますから、社内で学習支援を行うのであれば、最初に方針を固めておくとよいでしょう。両試験の違いと教材の選び方はJFT-Basic対策の要は「いろどり」|JLPTとの違いで解説しています。

ただし、N4はあくまで「基本的な日本語を理解することができる」レベルです。ホールでの接客、アレルギー確認、クレーム対応といった外食の現場業務を、この水準で十分にこなせると期待するのは現実的ではありません。要件を満たすことと現場で戦力になることは別の話であり、後者は採用後の教育設計で埋めるほかないと考えておくべきです。

食品産業特定技能協議会への加入は在留申請の「前」に

外食業分野で特定技能外国人を受け入れる企業には、農林水産省が設置する食品産業特定技能協議会への加入が求められます。加入自体は当面無料ですが、初めて受け入れる場合、出入国在留管理庁への在留諸申請を行う前に入会を済ませておかなければなりません

この順序を取り違えると、申請そのものが前に進みません。受入れ再開の局面で速やかに動けるよう、自社が加入済みかどうかは今のうちに確認しておくことをおすすめします。

支援計画と義務的支援の実施体制

受入企業には、事前ガイダンス、出入国時の送迎、住居確保、生活オリエンテーション、公的手続の同行、日本語学習機会の提供、相談・苦情対応、日本人との交流促進、転職支援、定期面談といった義務的支援の実施が課されます。自社で担いきれない場合は登録支援機関へ委託することになりますが、委託費は支援範囲や地域によって差が大きいため、複数社から見積もりを取って比較するのが確実です。

もっとも、登録支援機関の要件は2027年に向けて厳格化される方向で議論が進んでいます。委託先の選定基準や、内製化に踏み切るかどうかの判断材料は登録支援機関の要件が2027年に厳格化|企業が確認すべき7つの変更点にまとめています。

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特定技能2号への移行が、いま最も現実的な成長ルート

外食業分野で特定技能2号へ移行するには、指導・監督と店舗管理の補助を含む2年以上の実務経験、外食業特定技能2号評価試験の合格、日本語能力試験N3以上の3つが必要です。2号になれば在留期間の更新回数に上限がなくなり、家族帯同も視野に入ります。新規の1号採用が止まっている2026年の外食業では、この移行が一人あたりの戦力を高める中心的な手段になります。

2号の3つの要件:実務経験・評価試験・日本語N3

要件の内訳を、あらためて整理しておきます。

  • 実務経験:複数のアルバイト従業員や特定技能外国人等を指導・監督しながら接客を含む作業に従事し、店舗管理を補助する者としての実務経験が2年以上
  • 技能:外食業特定技能2号評価試験に合格すること
  • 日本語:日本語能力試験N3以上に合格していること(農林水産省が要件として明記)

このうち見落とされがちなのが、実務経験の中身です。単に2年間店舗で働いていればよいわけではなく、「指導・監督」と「店舗管理の補助」を経験していることが求められます。裏を返せば、特定技能1号の人材をいつまでも一般スタッフとして扱っていると、2年が経過しても受験資格に届きません。移行を前提に据えるのであれば、シフト作成の補助、新人指導、発注業務の一部といった役割を、早い段階から計画的に持たせておく必要があります。

2号評価試験の構成と合格ライン

外食業分野特定技能2号評価試験は学科試験と実技試験の2科目からなり、試験時間は70分、CBT方式の3択形式で実施されます。出題は日本語(ルビなし)、合格基準は250点満点中163点以上(正答率65%以上)、受験料は14,000円(税込)です。

この「ルビなし」という条件は、想像以上に重い意味を持ちます。会話にはまったく不自由がないのに、漢字の読みでつまずいて不合格になる例は現場で珍しくありません。日常会話の日本語力と試験に必要な読解力は別物であり、後者は計画的な学習を積む以外に伸ばしようがないからです。N3以上という日本語要件とあわせて逆算すると、移行の2年前には準備を始めておきたいところでしょう。

2号移行を等級・処遇制度に組み込む

2号への移行は、本人にとって在留期間の上限が外れ、家族帯同も視野に入る大きな転機です。それだけに、この価値を人事制度と接続できていない企業は、時間をかけて育てた人材を「2号を取らせてくれる会社」に引き抜かれることになります。

店長・副店長へのキャリアパスを明文化する、N3合格や2号試験合格に資格手当を設ける、学習時間を勤務シフトのなかに確保する。この3つを制度として持っているかどうかが、5年目以降に何人残るかを左右します。2号移行を支える日本語教育とキャリア支援の具体策については、特定技能2号への移行を成功させる、企業が取り組むべき日本語教育とキャリア支援および【特定技能2号】永住の道も?特定技能外国人のキャリアパスと企業側のメリットで詳しく扱っています。

転職市場で「選ばれる店」になるために何をすべきか?

特定技能「外食業」の新規受入れが停止している状況では、既存人材の定着率がそのまま採用力に直結します。1人辞められたとき、その穴を埋める手段が事実上「同じ分野からの転職者」しか残っていないためです。具体的な打ち手は、日本語教育への投資、2027年施行予定の育成就労制度への備え、生活・心理面の支援という3つに整理できます。

日本語教育を定着投資として位置づける

外食の現場では、日本語力の不足がそのまま離職要因になります。注文を聞き取れない、クレーム対応で萎縮してしまう、アレルギーや衛生に関する指示を正確に理解できない。こうした状態が続けば、本人は「自分はここでは通用しない」と感じ、周囲のスタッフには負荷が偏っていきます。

反対に、入社後もN3・N2へと段階的に日本語力が伸びる環境が用意されている店舗では、任せられる業務が広がり、それが時給や役職に反映され、本人の定着意欲がさらに高まるという循環が生まれます。日本語教育を「福利厚生」ではなく戦力化と定着への投資として予算に組み込めているかどうかが、この局面では大きく効いてきます。

ただし外食業はシフト制で全員が同時に集まれないため、集合研修型の教育は運用しづらいのが実情でしょう。各自がスキマ時間に学習でき、管理者側で進捗を確認できるeラーニング形式のほうが、現場には無理なく馴染みます。

2027年の育成就労制度を見据えて準備する

中期の視点に立てば、次のテーマは育成就労制度への対応です。農林水産省は2026年7月10日に「特定の分野に係る育成就労制度運用要領(外食業分野の基準について)」を、8月3日には「育成就労制度オンライン説明会における質問について」を掲載しており、外食業分野についても基準の整備が着実に進んでいます。

これまで技能実習に外食業の職種がなかったため、外食業には「育成して特定技能へつなげる」入口が存在しませんでした。育成就労制度が施行されれば、この構図が変わる可能性があります。詳細が固まってから動き出すのではなく、いまのうちに社内の教育体制と支援体制を整えておくこと。それが施行後の初動速度を決めることになるはずです。

生活・心理面の支援で離職を防ぐ

離職の理由は日本語力だけではありません。住居、行政手続き、送金、医療機関の受診といった生活面の不安、そして職場に相談できる相手がいないという孤立感が引き金になるケースは、実際のところ非常に多くあります。

だからこそ、定期面談を形式的な義務として消化するのではなく、生活面の課題を早期に拾い上げる仕組みとして機能させたいところです。あわせて母語で相談できる窓口を確保しておけば、投資額に対する効果はかなり大きくなります。具体的な打ち手は外国人材の定着支援とは?離職を防ぐ施策7選【2026年版】に整理しています。

まとめ:受入れ停止下の外食業で企業が取るべき打ち手

特定技能「外食業」は、人手不足がもっとも深刻な業種でありながら、制度側の受入れ枠のほうが先に尽きた分野です。2026年4月13日以降、海外からの呼び寄せと他資格からの切り替えは止まっていますが、分野内転職・技能実習からの移行・飲食料品製造業への切り替えという3つのルートは開いたままです。本記事の要点を整理しておきます。

  • 止まっているのは「新規」である:2026年4月13日以降に受理された在留資格認定証明書交付申請は不交付、在留資格変更許可申請も原則不許可。海外からの呼び寄せも、留学生からの切り替えも、いまは使えない
  • 止まっていないルートは3つある:同一分野内の転職、技能実習(医療・福祉施設給食製造作業)および特定活動(特定技能1号移行準備)からの移行、そしてセントラルキッチン等での飲食料品製造業分野での受入れ
  • 試験は分野によって扱いが違う:外食業1号評価試験は国内外で停止中だが、外食業2号評価試験と飲食料品製造業の試験は継続している
  • 提出済み申請は受付日で確認する:認定証明書交付申請は2026年8月10日掲載時点で1月5日受付分までしか進んでおらず、入社予定日の見直しが必要になる
  • いま伸ばせるのは一人あたりの戦力:2号移行には実務経験2年(指導・監督と店舗管理の補助)、2号評価試験合格、N3以上が必要。逆算すれば、準備は今日から始めるほかない
  • 定着率がそのまま採用力になる:新規流入が止まった市場で人を確保できるのは、他社から選ばれる労働条件・教育環境を持つ店舗だけ

制度の枠が閉じたこと自体は、企業側でどうにかできる問題ではありません。しかし、その枠のなかにいる人材を戦力化し、辞めさせないための投資であれば、今日から着手できます。特定技能制度の全体像から採用・定着・キャリア形成までを体系的に確認したい方は、【最新版】特定技能のすべてを網羅する完全ロードマップ|採用から定着・キャリア形成までもあわせてご覧ください。

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執筆:小峰 頌太(Global Astra株式会社)/外国人材の日本語教育・定着支援に従事

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私たちGLOBAL ASTRAの目標は、外国籍従業員の生産性を向上させ、より充実した時間を日本社会で過ごせるようにすることです。日本の労働力だけでは足りない日本社会が、今後経済を成長させるために多文化共生を進めていきます。

■ IPPO for Enterprise(法人向けeラーニング)
外国人社員の日本語・ビジネスマナー・生活知識をスマホ一台で学習できるプラットフォーム。多言語以上対応、月額290円〜。国内複数大学への導入実績。

■ IPPO for 日本語学校(教育機関向け)
日本語学校・専門学校・大学向けのAI搭載e-ラーニング。JLPT対策から特定技能試験まで1,000以上の教材を提供。月額180円〜、複数の日本語学校への正式採用。

■ IPPO TALK(個別レッスン × AI)
プロ日本語教師によるマンツーマン指導とAI教材を組み合わせた法人向けサービス。

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