2027年4月の育成就労制度の施行にあわせて、監理支援機関にも「優良」の枠組みが設けられます。
優良な監理支援機関の評価事項には「技能及び日本語能力の修得に係る実績」が明記されています。ただし具体的な基準はまだ公表されておらず、施行直後は申請も受け付けられません。評価の土台になるのは施行後に積み上がる実績です。そのため、日本語学習の仕組みを施行前に整えておけるかどうかで、数年後の結果が分かれます。
この記事は、出入国在留管理庁の育成就労制度運用要領(令和8年8月版)と育成就労制度Q&Aをもとに、2026年9月時点の情報で書いています。対象は、監理支援機関の許可を申請中または取得済みの監理団体の担当者です。
この記事でわかること
- 優良な監理支援機関の法令上の位置づけと、評価される5つの事項
- 優良になると傘下の受入企業の人数枠と優良点数がどう変わるか(許可の有効期間5年とは別の話であること)
- 公表済みの「優良な育成就労実施者」の配点で、日本語がどれだけの比重を占めるか
- 必須の日本語講習と、その外側で監理支援機関が整えるべき仕組み
- 施行前の半年で監理支援機関が着手できる準備
優良な監理支援機関とは何か?
優良な監理支援機関とは、監査体制や日本語・技能の修得実績など5つの事項を総合的に評価され、「業務を遂行する能力につき高い水準を満たす」と認められた監理支援機関です。根拠は育成就労法施行規則第19条第2項第3号です。具体的な基準は未公表で、制度施行後の一定期間の実績をもとに評価されます。
評価される5つの事項
規則第19条第2項第3号は、次のイからホを総合的に評価すると定めています。
- イ:監理型育成就労の実施状況の監査その他の業務を行う体制及び実施状況
- ロ:監理型育成就労における技能及び日本語能力の修得に係る実績
- ハ:出入国又は労働に関する法令への違反、行方不明者の発生その他の問題の発生状況
- ニ:育成就労外国人からの相談対応その他の保護及び支援の体制並びに実施状況
- ホ:育成就労外国人と地域社会との共生に向けた取組の状況
技能実習制度の優良な監理団体の基準にも、技能の修得実績や相談体制の項目がありました。育成就労の条文では、修得実績の対象が「技能及び日本語能力」になっています。日本語が技能と並んで評価の柱として書き込まれた点が、大きな違いです。
施行直後は申請不可、基準も未公表
運用要領第5章第22節は「優良な監理支援機関の認定については、制度施行後の一定期間の業務の実施状況等に基づき評価を行いますので、施行日前申請及び制度施行直後の申請受付は行いません」としています。基準の詳細も「追って本運用要領にてお知らせします」とされ、Q&AのQ38でも「決まり次第追って運用要領の中で示す予定」とされています。
点数表や合格ラインを断定している解説記事も見かけますが、2026年9月時点で公表されているのは5つの評価事項だけです。確実に言えるのは、評価の材料が2027年4月以降の育成就労での実績になるということです。
実績は法人単位、合併でも引き継がれない
運用要領は、合併や分割の取扱いについて「優良性の認定は監理支援事業を行う法人に着目して判断される」としています。消滅法人や分割元の法人が得ていた認定は自動的には付与されず、「実績も引き継がれない」と明記されています。組合の統合で規模を確保しようと考えている場合も、実績は統合後の法人で一から積み上げることになります。
優良な監理支援機関になると何が変わるのか?
監理支援機関が優良になると、傘下の受入企業(育成就労実施者)の受入れ人数枠と優良点数が変わります。地方に本店がある優良な受入企業は、優良な監理支援機関の監理支援を受けることで、基本人数枠の3倍まで受け入れられます。監理支援機関自身の許可の有効期間が延びる仕組みは、優良認定とは別に定められています。
地方の優良な受入企業は基本枠の3倍
育成就労実施者の人数枠は、常勤職員数に応じて段階的に定められています。運用要領の表をもとに、主な区分を並べると次のとおりです。
| 受入企業の常勤職員数 | 基本人数枠 | 受入企業が優良 | 受入企業が優良+指定区域+監理支援機関も優良 |
|---|---|---|---|
| 9人〜30人 | 9人 | 18人 | 27人 |
| 31人〜40人 | 12人 | 24人 | 36人 |
| 51人〜100人 | 18人 | 36人 | 54人 |
| 301人以上 | 常勤職員の20分の3 | 10分の3 | 20分の9 |
受入企業が優良であれば、監理支援機関が優良でなくても枠は2倍になります。3倍になるのは、受入企業と監理支援機関の双方が優良で、かつ受入企業の本店が指定区域にある場合だけです。インターネット上には「優良な受入企業と優良な監理支援機関の組み合わせで2倍」とする解説もありますが、運用要領の適用表では、監理支援機関の優良性が効いてくるのは指定区域の3倍枠です。
指定区域とは、東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県・愛知県・京都府・大阪府・兵庫県以外の39道県の全域と、この8都府県内の一部市町村です。判断基準は外国人の就労先ではなく、受入企業の本店所在地です(Q&A Q43)。地方の受入企業を多く抱える監理支援機関ほど、優良かどうかが顧客の受入れ規模に直結します。
受入企業の優良点数に6点
優良な育成就労実施者の配点表には、「優良な監理支援機関の監理支援を受けていること」という項目があり、6点が付きます(Ⅱ体制・待遇・実施状況の⑨)。複数の監理支援機関から監理支援を受けている場合は、すべてが優良でなければ加点されません。受入企業からすれば、監理支援機関を選ぶ理由がひとつ増えることになります。
許可の有効期間5年は別の要件
監理支援機関の許可の有効期間は、初回が3年です。更新時に、従前の有効期間中に改善命令(法第36条第1項)や業務停止命令(法第37条第2項)を受けていなければ、5年になります(政令第2条・規則第58条)。条件は命令を受けていないことで、優良認定とは連動していません。「優良になれば5年」という説明は正確ではないため、受入企業へ説明する際は注意してください。
本人意向転籍の受け皿は優良な受入企業のみ
本人の意向で転籍してくる育成就労外国人を受け入れられるのは、優良な育成就労実施者に限られます(規則第28条)。要件を満たすかどうかは、新たな計画の認定申請時と育成就労の開始時の両方で確認されます。人手不足の受入企業にとって転籍者は貴重な採用経路です。監理支援機関にとっては、傘下企業を優良に導けるかどうかが、そのまま提案力の差になります。
日本語の実績はどのように評価されるのか?
優良な監理支援機関の日本語に関する基準は未公表ですが、傘下の受入企業が目指す「優良な育成就労実施者」の配点はすでに公表されています。その配点表では、日本語の試験合格率が技能と並ぶ大きな比重を占めており、合格率が低ければマイナス点も付きます。監理支援機関の評価事項も「監理支援に係る」修得実績を対象としているため、傘下企業の合格率が監理支援機関の実績の土台になると考えるのが自然です。
優良な育成就労実施者の日本語の配点
優良な育成就労実施者の配点表は100点満点です。Ⅰ技能及び日本語能力の修得に係る実績が最大50点、Ⅱ体制・待遇・実施状況が最大40点、Ⅲ地域社会との共生が最大10点で、Ⅳ法令違反・問題の発生状況は減点のみの項目です。Ⅰのうち日本語に関する項目は次の5つです。
| 項目 | 評価の中身 | 配点 | 評価が始まる段階 |
|---|---|---|---|
| ④ 1年目のA1相当試験の合格率 | 1年経過までに受験する試験。1年経過後の再受験は含まない | 75%以上:7点/60〜75%:4点/50〜60%:0点/50%未満:−7点 | 受入れ1年以上 |
| ⑤ A2相当試験の合格率 | 目標となる日本語能力の試験。3年経過後の再受験は含まない | 80%以上:10点/70〜80%:6点/60〜70%:2点/50〜60%:0点/50%未満:−10点 | 受入れ3年以上 |
| ⑥ B1相当試験の合格率 | 目標を超える水準の試験 | 50%以上:5点/30〜50%:3点 | 受入れ3年以上 |
| ⑦ 2年目終了までのA2相当合格者の割合 | 前倒しでの到達 | 50%以上:4点/30〜50%:2点 | 受入れ2年以上 |
| ⑨ 必須講習以外の日本語学習支援 | A1相当講習・A2目標講習以外に、費用を負担して学習を支援 | 有:2点 | 受入れ1年以上 |
3年目以降、日本語なしではⅠの6割に届かない
優良と認められるには、合計点が7割以上であることに加えて、Ⅳを除く各項目で6割以上を取る必要があります。受入れ3年以上の段階では、Ⅰの満点50点に対して6割は30点です。
Ⅰのうち技能に関する項目(技能試験の合格率・再受験率・技能検定への協力)は、満点でも合計22点にしかなりません。残る28点が日本語です。技能試験の合格率が満点でも、日本語で8点以上を取らなければⅠの6割に届かず、優良になれません。日本語はもはや加点のための項目ではなく、優良を成り立たせる前提です。
受入れ実績に応じた段階制にも注意が必要です。受入れ1年未満の段階では日本語の項目は評価されず、1年以上で④と⑨、2年以上で⑦、3年以上で⑤と⑥が加わります。日本語の比重は年を追うごとに増えていきます。
日本語の合格率は施行後ゼロからのスタート
配点表を細かく見ると、技能試験の合格率(①③)や母国語相談員の確保には「技能実習生に係る実績を含めることができる」という注記があります。一方、日本語の④⑤⑥⑦にはこの注記がありません。技能実習の時代に日本語教育へ力を入れてきた監理団体でも、日本語の合格率は2027年4月以降に受け入れた育成就労外国人の実績から数えることになると読むのが自然です。
さらに④⑤は、1年経過後・3年経過後の再受験を実績に含めません。期限内の受験で合格させる必要があり、「落ちたらもう一度受ければよい」という運用では点数になりません。受験させる前に合格の見込みを把握しておく仕組みが要ります。
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日本語の合格率だけでなく、失踪や離職を防ぐ受入体制も優良の評価対象です。
無料チェックリストを確認する →施行前に整えておくべき日本語学習の仕組みとは?
必要なのは、制度で義務づけられた日本語講習を確実に受けさせる体制と、講習の外側で学習を継続させ、合格の見込みを測り、記録を残す体制の二層です。講習だけで試験の合格率が決まるわけではありません。監理支援機関は複数の受入企業を横断して、この二層がどの企業でも回っているかを確認する立場にあります。
制度で決まっている講習
A1相当の試験に合格していない場合、入国後講習(入国前講習でも可)でA1相当講習を100時間以上受講させる必要があります。さらに育成就労の3年間のうちに、A2相当を目標とする講習(A2目標講習)を100時間以上受講する機会を提供しなければなりません。いずれも文部科学大臣の認定を受けた認定日本語教育機関の「就労のための課程」が基本です。
当分の間の経過措置として、登録日本語教員による講習も認められます。その場合は、目標水準・100時間以上・教員1人あたり受講者20人以下という要件を満たす必要があり、オンラインで行うなら同時かつ双方向でなければなりません。講習の受講証明書は、実施記録や管理簿とともに保管します。認定日本語教育機関や登録日本語教員の確保については育成就労制度で求められる登録日本語教員とeラーニングの役割で整理しています。
講習の外側で決まる合格率
A2目標講習の100時間は、3年間に分散させれば1年あたり30数時間です。講習のない期間に学習が止まれば、1年目のA1相当試験にも2年目・3年目のA2相当試験にも間に合いません。配点表の⑨が、必須講習以外の日本語学習支援に独立した点数を付けているのはそのためです。
講習の外側で整えるべきものは三つあります。毎日の自習を続けさせる教材と仕組み、受験前に合格の見込みを測る模擬試験、そして学習の進み具合を受入企業と監理支援機関が共有できる記録です。試験の選び方はJFT-BasicとJLPTの違いで比較しています。日本語学習状況を見える化する方法は外国人材の日本語学習状況の見える化で解説しています。
受入れ時期ごとに測るもの
配点表の段階制と日本語要件を重ねると、監理支援機関が時期ごとに確認すべきことは次のように整理できます。
| 時期 | 制度上の節目 | 監理支援機関が確認すること |
|---|---|---|
| 入国前〜就労開始 | A1相当の試験合格、またはA1相当講習100時間以上 | 入国前の自習状況、講習の受講証明、入国後講習の計画 |
| 就労開始〜1年 | A1相当試験の受験(優良配点④)。本人意向転籍にはA2.1相当以上(分野ごとに設定) | 模擬試験での合格見込み、受験時期、講習以外の学習時間 |
| 2年目終了まで | A2相当に前倒しで合格した者の割合(優良配点⑦) | A2目標講習の受講状況、受入企業ごとの到達度の差 |
| 3年目終了まで | A2相当(A2.2)の試験合格。特定技能1号への移行水準(優良配点⑤⑥) | 未合格者への重点対策、B1相当に挑戦できる人材の把握 |
介護のように、分野独自の日本語水準や日本語学習プランを求める分野もあります。分野別運用方針は必ず確認してください。日本語要件の全体像は育成就労制度の施行前申請ガイドでもまとめています。
IPPOで日本語学習の仕組みをどう作るか?
IPPOは、必須の日本語講習を置き換えるものではありません。講習の前後を埋める自習、試験前の合格見込みの把握、受入企業ごとの学習記録という、講習の外側の層を担う日本語学習e-learningです。監理支援機関は、傘下の受入企業すべての学習状況を1つの画面で確認できます。
講習の前後を埋める自習と試験対策
IPPOには、JLPT N5〜N1とJFT-Basicに対応した講義・演習・模擬試験が揃っています。入国前の自主学習、A1相当試験の対策、講習後の継続学習に使えます。スライドは日本語を含む最大13言語に対応し(教材により異なります)、ふりがな付きで表示できるため、来日直後の学習者でも母語で理解しながら進められます。宿泊・介護・建設・外食など分野別の専門用語教材もあり、現場で使う言葉を試験対策と並行して学べます。
合格見込みの見える化
IPPOでは、目標レベルの合格可能性がセクション別に%で表示されます。再受験が実績に含まれない優良配点では、受験時期の判断が合格率を左右します。見込みが低い学習者を受験前に把握できれば、講習の追加や重点指導に回す判断ができます。
受入企業ごとの一元管理と記録
管理画面では、受入企業ごとにグループを分けて学習者の進捗を一覧できます。学習が止まっている人は自動で検知されます。権限はマスターとサブに分けられるので、受入企業の担当者には自社の学習者だけを見せられます。
最終ログイン日・ログイン回数・期間別の学習時間などはExcelで出力できます。監査時の確認資料や、受入企業への報告にそのまま使えます。優良の評価で求められる疎明資料の中身は、監理支援機関の基準がまだ公表されていないため確定していません。それでも、学習の事実を日付つきで残しておくことは、どのような基準になっても無駄になりません。
講習や対話練習はIPPO TALKで
講師によるライブのレッスンが必要な場合は、姉妹サービスのIPPO TALKで対応します。個別レッスンだけでなく、少人数や集団での研修にも対応しています。自習(IPPO)とライブのレッスン(IPPO TALK)を組み合わせれば、講習の内外を同じ記録の上で管理できます。IPPOの全体像はIPPOとは?機能と導入の流れをご覧ください。
監理支援機関はいま何から準備すべきか?
施行前に着手すべきことは、日本語講習の提供先の確保、講習の外側で学習を続けさせる仕組みの選定、そして受入企業ごとの記録の形式を決めることの三つです。優良な監理支援機関の基準は未公表ですが、日本語の修得実績が評価事項に入っていることは確定しています。実績は施行日から積み上がり始め、後から遡って作ることはできません。
講習の提供先を施行前に確保
認定日本語教育機関の「就労のための課程」、または経過措置での登録日本語教員の確保は、受入れ人数が増えるほど取り合いになります。入国前講習で行うのか、入国後講習で行うのか。オンラインの同時双方向で行うのか。受入企業の分野と地域を踏まえて、施行前に提携先を決めておいてください。
記録の形式を傘下企業で統一
受入企業ごとに記録の形式がばらばらでは、監理支援機関として実績を集計できません。講習の受講証明、自習の学習時間、模擬試験の結果、本試験の受験日と合否を、同じ形式で記録するルールを先に決めてください。支援計画における日本語学習支援の設計は、特定技能の支援計画書と日本語学習支援の設計も参考になります。
受入企業への提案材料に
受入企業にとって優良になることのメリットは、人数枠の拡大と本人意向転籍の受け皿になれることです。そして日本語の合格率を上げなければ、優良にはなれません。「日本語の合格率をどう上げるか」に答えを持つ監理支援機関は、受入企業の優良化を支援できる存在として選ばれます。制度の要件を守るだけの監理支援機関との差は、施行後に日本語の実績として数字に表れます。
まとめ
優良な監理支援機関の基準は未公表で、施行直後は申請もできません。一方で、評価事項に「技能及び日本語能力の修得に係る実績」が入っていることと、傘下の受入企業の優良配点で日本語が欠かせない比重を占めていることは、すでに公表されています。施行までの半年で、講習の提供先、講習の外側の学習の仕組み、記録の形式の三つを整えておくことが、数年後の優良につながる現実的な準備です。
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