日本語学習e-learning「IPPO」に、特定技能「建設」分野の新しい教材が加わりました。
1号は土木、建築、ライフライン・設備の3つの業務区分ごとにコースを用意し、10言語に切り替えられるスライド教材、日本語字幕と英語字幕の動画、章末の確認問題で構成しています。
2号は、職長として現場をまとめるために必要な内容をテキストにまとめました。
建設分野では、2028年度に建設技能者が36万人程度不足すると見込まれており、2024年度から2028年度までの5年間で受け入れる1号特定技能外国人の上限は7万6,000人とされています。さらに、2026年1月23日に閣議決定された建設分野の運用方針では、特定技能2号の日本語能力として「日本語教育の参照枠」のB1相当以上が定められました(出典:出入国在留管理庁「建設分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針」)。この記事では、建設の特定技能で外国人材が受ける試験と日本語の要件を整理したうえで、IPPOの新しい教材の中身と、企業での使い方を紹介します。
この記事でわかること
- 特定技能「建設」の3つの業務区分と、1号・2号で任せられる仕事の違い
- 建設分野特定技能1号・2号評価試験の問題数・試験時間・合格基準
- 2026年1月の運用方針で、特定技能2号に定められた日本語の要件
- IPPOに加わった建設分野の教材(10言語対応のスライド・字幕付き動画・章末確認問題・職長テキスト)
- 企業がIPPOで建設の外国人材の試験対策を進める5つの手順
特定技能「建設」で外国人材はどんな仕事を任せられるのか?
特定技能「建設」の仕事は、土木・建築・ライフライン・設備の3つの業務区分に分かれています。1号は指導者の指示・監督を受けながら作業に従事する立場で、2号は複数の建設技能者を指導しながら作業に従事し、工程を管理する立場です。受け入れる企業は、外国人材が合格した試験の区分と、現場で任せる工事の内容が合っているかを確認する必要があります。
業務区分は2022年に19区分から3区分へ
建設分野の業務区分は、もともと型枠施工・鉄筋施工・内装仕上げといった19の区分に分かれていました。2022年8月30日、地方を中心とする多能工の人手不足に応え、すべての建設業に係る業務で受け入れられるようにする目的で、現場の特性に応じた共通の技能という観点から「土木」「建築」「ライフライン・設備」の3区分に統合されています(出典:国土交通省「お知らせ【特定技能制度(建設分野)】」)。
区分が大きくまとまったことで、1つの区分のなかで扱う作業の幅は広くなりました。試験対策でも、特定の職種の作業だけでなく、その区分に含まれる工事全体の基礎知識を押さえる必要があります。
1号と2号では、現場での立場が違う
1号と2号の違いは、単に在留期間の長さだけではありません。1号は指示を受けて作業する側、2号は複数の技能者を指導して工程を管理する側と、現場で求められる役割そのものが変わります。
| 業務区分 | 1号の業務 | 2号の業務 |
|---|---|---|
| 土木 | 指導者の指示・監督を受けながら、土木施設の新設・改築・維持・修繕に係る作業等に従事 | 複数の建設技能者を指導しながら、土木施設の新設・改築・維持・修繕に係る作業等に従事し、工程を管理 |
| 建築 | 指導者の指示・監督を受けながら、建築物の新築・増築・改築・移転・修繕・模様替に係る作業等に従事 | 複数の建設技能者を指導しながら、建築物の新築・増築・改築・移転・修繕・模様替に係る作業等に従事し、工程を管理 |
| ライフライン・設備 | 指導者の指示・監督を受けながら、電気通信・ガス・水道・電気その他のライフライン・設備の整備・設置・変更・修理に係る作業等に従事 | 複数の建設技能者を指導しながら、ライフライン・設備の整備・設置・変更・修理の作業等に従事し、工程を管理 |
なお、作業準備・運搬・片付けのように、同じ業務に従事する日本人が通常行う関連業務に付随的に従事することは認められています。雇用形態は直接雇用に限られ、受け入れる企業には建設業法第3条の許可を受けていることなど、建設分野特有の条件が課されます。受入れの全体像は特定技能の採用から定着までの完全ロードマップで、建設現場での採用・定着の課題は建設業における外国人材採用の課題と定着への処方箋で解説しています。
建設分野特定技能1号評価試験はどんな試験か?
建設分野特定技能1号評価試験は、建設技能人材機構(JAC)が土木・建築・ライフライン・設備の区分ごとに実施するCBT方式の試験です。学科30問(60分)と実技20問(40分)で構成され、それぞれ合計点の65%以上で合格となります。問題は日本語で出題され、1号の在留資格を得るには、この試験とは別に日本語試験の合格も必要です。
1号と2号の評価試験の違い
1号・2号の評価試験は、どちらもプロメトリックのテストセンターでコンピューターを使って受験します。2号は1号よりも問題数が多く、出題形式がすべて4択式になり、合格基準も65%から75%に上がります。
| 項目 | 1号評価試験 | 2号評価試験 |
|---|---|---|
| 学科試験 | 30問・60分 | 40問・60分 |
| 実技試験 | 20問・40分 | 25問・40分 |
| 出題形式 | 真偽法(○×)と2〜4択式 | 4択式 |
| 合格基準 | 学科・実技それぞれ合計点の65%以上 | 学科・実技それぞれ合計点の75%以上 |
| 出題言語 | 日本語 | 日本語 |
技能の試験とは別に、日本語試験の合格が必要
1号の在留資格を得るには、技能の試験に加えて、国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)か日本語能力試験(JLPT)N4以上に合格する必要があります(出典:出入国在留管理庁「建設分野」)。2026年1月の運用方針では、1号の日本語能力水準は「日本語教育の参照枠」のA2.2相当以上と表現されています。
技能の面では、1号評価試験のかわりに技能検定3級に合格する方法もあります。建設分野の技能実習2号を良好に修了した人は技能試験が、職種を問わず技能実習2号を良好に修了した人は日本語試験が免除されます。JFT-Basicの出題範囲と対策はJFT-Basic対策とJLPTとの違いで詳しく紹介しています。
公式テキストは多言語のPDFで公開されている
JACは1号評価試験の学習用に、学科テキスト4冊・実技テキスト3冊と、学科・実技それぞれのサンプル問題を公開しています。翻訳版も英語・インドネシア語・ベトナム語・タガログ語・ウズベク語・クメール語・シンハラ語・タミル語・ネパール語・ベンガル語・モンゴル語・タイ語・中国語(簡体字)で用意されています(出典:JAC「特定技能1号評価試験のテキスト・参考資料など」)。
ただし、本番の試験は日本語で出題されます。母語のテキストで内容を理解しても、それが日本語の用語と結びついていなければ、問題文を読んだところで手が止まってしまいます。公式テキストを母語で読み込む学習と、同じ内容を日本語で問われて答える練習は、分けて考える必要があります。
特定技能2号に進むには何が必要か?
建設分野で特定技能2号に進むには、建設分野特定技能2号評価試験などの技能試験に合格し、班長としての実務経験を積む必要があります。2026年1月23日に閣議決定された建設分野の運用方針では、これらに加えて、2号の日本語能力水準として「日本語教育の参照枠」のB1相当以上が定められました。2号を目指す人材には、技能と現場経験に加えて、日本語の準備も早めに進めてもらう必要があります。
技能は2号評価試験か技能検定1級で証明する
2号の技能水準は、建設分野特定技能2号評価試験、技能検定1級、技能検定単一等級のいずれかで証明します(出典:出入国在留管理庁「建設分野」)。2号評価試験は2024年1月に始まった比較的新しい試験で(国土交通省のお知らせ)、学科40問・実技25問をいずれも75%以上正解する必要があります。
班長・職長としての実務経験が求められる
2号の要件になっているのは、建設現場で複数の建設技能者を指導しながら作業に従事し、工程を管理する「班長」としての実務経験です。JACは、2号の在留資格を得るには2号評価試験の合格に加えて、班長または職長として国土交通省の定める期間(0.5〜3年)の実務経験が必要だと案内しています(出典:JAC「建設分野特定技能評価試験」)。
JACが2号評価試験の学科対策として公開している教材には、学科テキストとあわせて「職長テキスト」が含まれています。2号では、作業の手順だけでなく、人に指示を出し、安全を確保し、工程を管理する職長の知識が問われると考えておくべきです。特定技能2号がもたらすキャリアの広がりは特定技能2号のキャリアパスと企業側のメリットで解説しています。
2号にもB1相当の日本語要件が定められた
これまで特定技能2号には日本語試験の要件がないと説明されることが多くありました。しかし、2026年1月23日に閣議決定された建設分野の運用方針では、2号の外国人に求める日本語能力水準として「日本語教育の参照枠」のB1相当以上の水準と認められるものが明記されています(出典:出入国在留管理庁「建設分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針」)。
| 区分 | 技能の要件 | 日本語能力水準(2026年1月の運用方針) |
|---|---|---|
| 1号 | 1号評価試験または技能検定3級など | 「日本語教育の参照枠」A2.2相当以上 |
| 2号 | 2号評価試験・技能検定1級・単一等級のいずれか+班長としての実務経験 | 「日本語教育の参照枠」B1相当以上 |
一方で、2026年9月24日時点で出入国在留管理庁に掲載されている建設分野の運用要領は改正前の版のままで、B1相当をどの試験のどの級で確認するのかは、建設分野についてはまだ示されていません。先に運用要領が改正されたビルクリーニング分野では、2号のB1相当をJLPT N3以上で確認するとされています(詳しくは特定技能「ビルクリーニング」の受入れ要件)。建設分野の扱いは今後の公表を確認する必要がありますが、2号を目指す人材の日本語は、N3程度を目安に早めに準備を始めておくのが安全です。
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2号の日本語要件への備えとあわせて、現場の定着体制は整っていますか?
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試験対策だけでなく、長く働ける職場づくりも2号への近道です。
無料チェックリストを確認する →建設の外国人材の試験対策で、つまずきやすいのはどこか?
建設の外国人材の試験対策でつまずきやすいのは、技能そのものよりも、現場の知識と日本語の問題文を結びつける部分です。評価試験は日本語で出題されるため、母語で内容を理解していても、日本語の用語で問われると答えられないことがあります。2号ではさらに、班長・職長として人に指示を出し、工程を管理する立場の知識が問われます。
現場で覚えた言葉と、試験で使われる用語が一致しない
現場の外国人材は、作業の多くを先輩の動きを見て、話し言葉で覚えていきます。現場で使われる略称や言い回しは、テキストや試験で使われる正式な用語と一致しないことがあります。作業はできるのに試験の問題文が読めない、というずれを防ぐには、正式な用語を意識して覚える時間が必要です。
工程・職種・安全といった「日本の現場の考え方」が前提になる
日本の建設工事は、多くの職種の専門工事業者がそれぞれの工程を担当し、順番に仕事を引き継いでいくことで成り立っています。自分の作業は工事全体の一部であり、前後の工程とのつながりを理解していなければ、段取りや安全に関する問題に答えることはできません。こうした前提は母国の現場と異なる場合があるため、用語とあわせて「なぜそうするのか」を理解しておくことが大切です。
受け入れ企業からは、学習の進み具合が見えにくい
建設の外国人材は日中を現場で過ごすため、試験の学習は夜や休日の自習が中心になります。受け入れ企業の担当者からは、誰がどこまで学習を進めているのかが見えにくく、受験直前になって準備が足りないことに気づくこともあります。現場ごとに配属がばらばらな場合は、なおさらです。
IPPOに加わった建設分野の教材とは?
IPPOに加わった建設分野の教材は、特定技能1号の土木・建築・ライフライン・設備の3区分に対応したコースと、2号で求められる職長の知識をまとめたテキストです。1号のコースは、10言語に切り替えられるスライド教材、日本語字幕と英語字幕の動画、章末の確認問題で構成しています。JLPT対策や生活オリエンテーションの教材と同じIDのなかで学習できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 特定技能「建設」1号・2号 |
| 1号のコース | 土木/建築/ライフライン・設備(業務区分ごとに3コース) |
| 1号のスライド教材 | イラスト・要点・重要用語の解説つき。日本語表示の漢字にはふりがな |
| 対応言語 | 日本語・英語・中国語・ベトナム語・ネパール語・インドネシア語・ミャンマー語・シンハラ語・クメール語・ベンガル語の10言語 |
| 動画 | 日本語字幕版と英語字幕版 |
| 確認問題 | 各章の最後に確認問題 |
| 2号の教材 | 職長として必要な内容をまとめたテキスト |
| 提供開始 | 2026年9月 |
スライドは1枚ずつ、母語と日本語を切り替えられる
1号のスライド教材は、画面上部のボタンで表示言語を切り替えられます。日本語で読んで意味がつかめなかったスライドだけを母語に切り替え、理解できたら日本語表示に戻る、という使い方ができるため、母語での理解と日本語の用語を同じ画面の上で結びつけられます。
たとえば「日本の現場で大切にしていること」の単元では、建設工事が多くの工程の連続であること、職種ごとに専門の業者がいること、自分の工程は全体の一部であることを、イラストと3つの要点で説明しています。「工程」のような重要用語には、「工事を完成させるまでの、順番の決まった作業の区切りのこと」といったやさしい日本語の解説を付けました。前の章で整理した「日本の現場の考え方」を、試験で使われる言葉で学べる構成です。
動画と章末の確認問題で、理解できたかを確かめる
動画は日本語字幕版と英語字幕版の2種類を用意しました。日本語の聞き取りに慣れてきた人は日本語字幕で、まだ難しい人は英語字幕で内容を確認する、というように、学習者の日本語力に合わせて選べます。
各章の最後には確認問題を置いています。本番の評価試験は日本語で出題されるため、スライドと動画で理解した内容を、日本語の問題として解けるかどうかをその場で確かめられるようにしました。学習の進み具合はIPPOの管理画面で確認できるため、受け入れ企業の担当者も、誰がどこまで進んでいるかを把握できます。
2号を目指す人材には、職長のテキストを用意
2号向けには、職長として現場をまとめるために必要な内容をテキストにまとめました。前の章で触れたとおり、JACの2号学科対策の教材には職長テキストが含まれています。班長・職長として働きながら2号を目指す人材が、現場の業務と並行して知識を整理できるようにしています。
2号にB1相当の日本語要件が定められたことを考えると、2号の準備は技能だけでは足りません。IPPOでは、職長のテキストと並行して、同じIDのままJLPTのN3対策に取り組めます。
JACの公式テキストと組み合わせて使う
IPPOの建設分野の教材は、JACの公式テキストに置き換わるものではありません。出題範囲の基準はあくまで公式テキストとサンプル問題です。IPPOは、公式テキストで学んだ内容を、母語と日本語を行き来しながら理解し、確認問題で日本語の問題に慣れ、その進み具合を企業が把握するための教材として使うことを想定しています。IPPO全体の機能はIPPOとは?法人向け日本語学習e-learningの機能・料金で紹介しています。
企業はIPPOで建設の外国人材の試験対策をどう進めればよいか?
企業がIPPOで建設の外国人材の試験対策を進めるときは、まず外国人材ごとに目指す号と業務区分を確認し、それに合ったコースを割り当てます。そのうえで、母語で内容を理解する段階から、日本語で確認問題を解く段階へと進めてもらい、管理画面で進み具合を確認します。2号を目指す人材には、職長のテキストと並行して日本語の学習も早めに始めてもらいます。
手順1 対象者の目指す号と業務区分を確認する
最初に、受け入れている外国人材、または受け入れる予定の人材が、1号評価試験を受けるのか、2号を目指すのかを整理します。あわせて、現場で任せる工事が土木・建築・ライフライン・設備のどの区分に当たるのかを確認します。区分を取り違えると、合格しても現場の業務と合わなくなるためです。
手順2 業務区分に合ったコースを割り当てる
1号の受験者には、確認した業務区分のコースを割り当てます。IDを配ったら、スライドの表示言語を本人の母語に設定し、最初の単元を一緒に開いてみると、学習の始め方がわかりやすくなります。
手順3 母語で理解し、日本語で確かめる
学習の流れは、スライドを日本語で読み、わからないところだけ母語に切り替え、動画で内容を確認し、章末の確認問題を日本語で解く、という順番がおすすめです。最初から最後まで母語だけで進めると、本番の日本語の問題文に対応できないためです。
手順4 2号候補には、職長のテキストと日本語学習を並行させる
班長・職長として経験を積んでいる人材には、職長のテキストを割り当てます。あわせて、2号でB1相当の日本語が求められることを本人に伝え、JLPTのN3対策を並行して進めてもらいます。実務経験の期間を満たしてから日本語の準備を始めると、2号への移行が遅れる可能性があります。
手順5 管理画面で進み具合を確認し、受験につなげる
管理画面では、学習者ごとの進み具合を確認できます。止まっている人材には早めに声をかけ、確認問題で安定して正解できるようになった段階で、JACの評価試験の受験申込を進めます。2027年に始まる育成就労制度では、建設分野の受入れ見込数が2027年度から2年間で12万3,500人とされており、育成就労から特定技能への移行も見据えた教育の仕組みづくりが求められます(移行の条件は育成就労から特定技能への移行条件で解説しています)。
まとめ:建設の特定技能は、業務区分に合った教材と日本語の準備を早めに
特定技能「建設」の試験対策では、業務区分に合った知識を、本番と同じ日本語で問われても答えられる状態にしておくことが欠かせません。2026年1月の運用方針で2号にB1相当の日本語要件が定められたことで、2号を目指す人材の日本語の準備も、これまで以上に早く始める必要が出てきました。
- 建設分野の業務区分は、土木・建築・ライフライン・設備の3つ
- 1号評価試験は学科30問・実技20問で、合格基準は65%以上。日本語試験の合格も必要
- 2号は2号評価試験などの合格と、班長としての実務経験が必要。日本語はB1相当以上が定められた
- IPPOに、1号の3区分に対応したコース(10言語・字幕付き動画・章末確認問題)と、2号向けの職長テキストが加わった
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